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スバルやトヨタなど、多くの自動車メーカーが採用する「ハーマン・カードン」「JBL」のサウンドシステムを聞いてみた
2025年3月25日 12:21
1953年に生まれたブランド「ハーマン・カードン」
オーディオ機器ブランドの「ハーマン・カードン」は、1953年にビジネスマンのシドニー・ハーマン(Sidney Harman)氏と、エンジニアのバーナード・カードン(Bernard Kardon)氏が、ハイファイオーディオ製造会社としてニューヨークで設立したのがスタート。
FMチューナーや超広帯域真空管アンプ「Citation II」をはじめ、ハイファイ・レシーバー、ステレオ・レシーバーなどを手掛けたほか、1980年には世界初の高電流機能アンプ「Citation XX」を発売すると、音楽業界で高い評価を受けた。また、1999年に発表した「Sound Sticks」はデザイン性の高さから、ニューヨーク近代美術館「The Museum of Modern Art (MoMA)」に永久コレクションとして納められている。
現在は、車載用、家庭用、映画館やコンサートホールといった商業施設用と、幅広くオーディオ機器事業を手掛けるハーマン・インターナショナルに属し、車載用機器はフォルクスワーゲン、BMW、MINI、メルセデス・ベンツ、ボルボ、スバル、アルファ ロメオ、マセラティ、ルノー、クライスラーなど、多くの自動車メーカーに採用されている。
同時に各自動車メーカーのその車種に合ったデザインとサウンドに仕上げるため、開発時点から参画してデザインをしっかりと把握したうえで形にするので、2つと同じ形状のものはない。
また、ハーマン・インターナショナルは「ハーマン・カードン」のほかにも、「JBL」「Mark Levinson」「AKG」「Crown」「Lexicon」「REVEL」「ARCAM」「Martin」「BSS」「dbx」「Soundcraft」「Infinity」「AMX」と数多くのブランドを扱い、スピーカー、ミキサー、ターンテーブル、ヘッドフォン、イヤホンなど、幅広くオーディオ機器を展開している。
日本では2007年にスバルが北米仕様の「レガシィ(4代目)」から搭載を開始。国内でも「レガシィ(5代目と7代目)」にメーカーオプションとしてハーマン・カードンサウンドシステムが搭載された。以降も共同開発を進めていて、現在は「レヴォーグ レイバック」に標準装備されているほか、「レガシィ アウトバック」のメーカー装着オプションとなっている。
実際にハーマン・カードンサウンドシステムがインストールされたスバルの「レガシィ アウトバック」で視聴してみると、しっかりとした重低音を鳴らしながらも、ボーカルの透き通った声を見事に再現していたほか、ノイズが少なく音にメリハリがあり、前席だけでなく後席でも同様にハイクオリティな音楽を楽しめることが確認できた。
また、ハーマン・カードンのシステムは、非可逆圧縮によって圧縮された音源の音をより高音質にして再生する「Clari-Fi」と、独自に開発した消費電力の低減と音質向上に貢献する「Green Edge」も採用しているという。
なお、視聴用車両はイベント用にワンオフで制作しているとのことで、市販車のメーカー装着オプションのほかに、ダッシュボード中央に80mmのスピーカーとAピラーに25mmのツイーターが追加で装着されていた。
また、ハーマン・カードンのハイクオリティなサウンドは、Bluetoothで接続できるポータブルスピーカーや、コンパクトなワイヤレスサブウーファー、横長スピーカーのサウンドバーなど、クルマだけでなく自宅で視聴できるアイテムも多数そろえている。
ボルボ「EX30」にも採用された新たなオーディオ機器「サウンドバー」
インテリアにも溶け込み美しいサウンドを届けてくれるサウンドバー「Enchant 1100」は、薄型テレビの音を改善するだけのシステムではなく、ホームエンターテインメントを没入感の高いシネマ体験へと昇華させる新たなリビングオーディオ機器。
左右の2つを含めて全11個のスピーカーを搭載していて、テレビの前に置くだけで、まるで映画館のような3Dサラウンドサウンド体験と高品位な音楽ストリーミングを実現するという。
5.1.2chで「Dolby Atmos」「DTS:X」に対応していて、ハーマン独自の「MultiBeam」技術によって、広がりのあるイマーシブ空間を実現するほか、壁の形状や素材に合わせサウンドを自動で補正するキャリブレーション機能で、どんな空間でも映画館のような上質な3Dサラウンドサウンドを体験できるアイテム。
このサウンドバーは、サステナブルな取り組みを積極的に導入しているボルボのバッテリEVモデル「EX30」にも採用されていて、フロントウインドウの真下に5つのスピーカーを内蔵した「サウンドバー」が配されている。これによりフロントドアへの配線が不要となり(使用材料の削減)、従来スピーカーのあったスペースは収納に活用されている。
1969年に誕生したスピーカーブランド「JBL」
1969年にハーマン・インターナショナル傘下に入ったスピーカーブランド「JBL」は、高性能で美しい家庭用スピーカーの製造を目指したジェームス・バロー・ランシング氏が1946年に設立。その頭文字から「JBL」となっている。
国内では1998年からトヨタ自動車と協業し、車両ごとに数百時間もの作業と精密な調整を行ない「JBLサウンドシステム」を開発。現在は「アルファード」「ヴェルファイア」「bZ4X」「カムリ」「GRカローラ」「GRスープラ」「GRヤリス」「ハリアー」「ランドクルーザー」「MIRAI」などに採用されている。
実際に「JBLサウンドシステム」が搭載されたランクル250で視聴してみると、さすが個々に車両に合わせたスピーカーを厳選しているだけあって、目の前にボーカルがいるかのような迫力の歌声とサウンドを再現。力強い低音域、表情豊かな中音域、伸びやかな高音域とすべての音域でハイクオリティを実現している。
スピーカーだけでなく「イヤホン」や「ヘッドフォン」にも長けている「JBL」
もちろんJBLのサウンドも、外出先や自宅でも楽しめる。特にフラグシップのワイヤレスイヤホン「TOUR PRO 3(ツアープロ3)」は、JBLの2023年の売上を倍増させたという前モデル「TOUR PRO 2」から、音質、ノイズキャンセリング性能、新空間サウンド、マイク性能、利便性、拡張性などが進化したほか、JBL初のバランスドアーマチュアドライバーと10mm径ダイナミックドライバーのデュアルドライバー搭載で、深みのある低音とバランスの取れた中音域、洗練された高音域の再現可能としている。
ノイズキャンセリングは、新たなリアルタイム補正機能付きハイブリッドノイズキャンセリング2.0を搭載。周囲の環境に合わせてリアルタイムに補正するフィルター計算をさらに強化し、着用している人に合わせてリアルタイムで適応するように進化した。また、6つの通話用マイクを搭載し、通話者の声と環境ノイズを正確に集音し解析することでクリアな通話品質を確保。さまざまな種類のノイズをトレーニングしたAIノイズ低減アルゴリズムを初めて採用している。
実際に「TOUR PRO 3」を使用してみると、ノイズがとても少なくクリアなサウンドが印象的だし、イヤホンとは思えないほど迫力の低音が出ていてビックリ。通話の声もスッキリ聞こえるし、ケースの画面に今流れている曲名やジャケットが表示されるのもうれしい機能。また、イヤホンは5.6gと軽いし、イヤホンだけでも7~8時間充電が持つ。ケースのバッテリも含めたら28~44時間も連続で使用可能。また急速充電にも対応していて、10分の充電で3時間再生できるのもありがたい。
そのほかにもJBLは、スポーツ時に適したモデルや、防水・防塵性の高いモデルなど、幅広い種類のイヤホンを展開しているほか、ポータブルスピーカーや家庭用ホームシアター機器も取りそろえている。
サムスン電子傘下になり自動車用ディスプレイの開発がスタート
国内ではスマートフォンの「Galaxy」で知られる韓国企業のサムスン電子が、2016年にハーマン・インターナショナルを買収したことで、「ハーマン・カードン」および「JBL」はサムスン電子の傘下となっている。
それによりハーマン・インターナショナルは、オートモーティブ事業部で新たに「自動車用ディスプレイ」の開発がスタート。大きな特徴はサムスンが量子ドット(Quantum Dot)と呼ばれる半導体ナノ結晶を組み込んで開発した「QLED」という液晶技術を使用していること。すでにサンプルも完成の領域に達しており、多くの実車に装着されるのが楽しみだ。