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スバルやトヨタなど、多くの自動車メーカーが採用する「ハーマン・カードン」「JBL」のサウンドシステムを聞いてみた

ハーマン・カードンの視聴用車両スバル「レガシィ アウトバック」

1953年に生まれたブランド「ハーマン・カードン」

 オーディオ機器ブランドの「ハーマン・カードン」は、1953年にビジネスマンのシドニー・ハーマン(Sidney Harman)氏と、エンジニアのバーナード・カードン(Bernard Kardon)氏が、ハイファイオーディオ製造会社としてニューヨークで設立したのがスタート。

 FMチューナーや超広帯域真空管アンプ「Citation II」をはじめ、ハイファイ・レシーバー、ステレオ・レシーバーなどを手掛けたほか、1980年には世界初の高電流機能アンプ「Citation XX」を発売すると、音楽業界で高い評価を受けた。また、1999年に発表した「Sound Sticks」はデザイン性の高さから、ニューヨーク近代美術館「The Museum of Modern Art (MoMA)」に永久コレクションとして納められている。

ハーマン・カードン創設者の1人であるシドニー・ハーマン氏
1999年に発表した「Sound Sticks」はデザイン性が高く評価されている。当初はiMac用のウーファーとして作られたが、その後、単体として商品化された

 現在は、車載用、家庭用、映画館やコンサートホールといった商業施設用と、幅広くオーディオ機器事業を手掛けるハーマン・インターナショナルに属し、車載用機器はフォルクスワーゲン、BMW、MINI、メルセデス・ベンツ、ボルボ、スバル、アルファ ロメオ、マセラティ、ルノー、クライスラーなど、多くの自動車メーカーに採用されている。

 同時に各自動車メーカーのその車種に合ったデザインとサウンドに仕上げるため、開発時点から参画してデザインをしっかりと把握したうえで形にするので、2つと同じ形状のものはない。

ハーマン・インターナショナルの3つの中心事業
ハーマン・カードンはすでに多くの自動車メーカーに採用されているが、2つと同じものはない

 また、ハーマン・インターナショナルは「ハーマン・カードン」のほかにも、「JBL」「Mark Levinson」「AKG」「Crown」「Lexicon」「REVEL」「ARCAM」「Martin」「BSS」「dbx」「Soundcraft」「Infinity」「AMX」と数多くのブランドを扱い、スピーカー、ミキサー、ターンテーブル、ヘッドフォン、イヤホンなど、幅広くオーディオ機器を展開している。

多くのブランドとオーディオ機器を取り扱っているハーマン・インターナショナル

 日本では2007年にスバルが北米仕様の「レガシィ(4代目)」から搭載を開始。国内でも「レガシィ(5代目と7代目)」にメーカーオプションとしてハーマン・カードンサウンドシステムが搭載された。以降も共同開発を進めていて、現在は「レヴォーグ レイバック」に標準装備されているほか、「レガシィ アウトバック」のメーカー装着オプションとなっている。

 実際にハーマン・カードンサウンドシステムがインストールされたスバルの「レガシィ アウトバック」で視聴してみると、しっかりとした重低音を鳴らしながらも、ボーカルの透き通った声を見事に再現していたほか、ノイズが少なく音にメリハリがあり、前席だけでなく後席でも同様にハイクオリティな音楽を楽しめることが確認できた。

視聴用車両のスバル「レガシィ アウトバック」
視聴用車両に搭載されているシステムの内容。市販車よりもスピーカーがたくさん追加されている

 また、ハーマン・カードンのシステムは、非可逆圧縮によって圧縮された音源の音をより高音質にして再生する「Clari-Fi」と、独自に開発した消費電力の低減と音質向上に貢献する「Green Edge」も採用しているという。

 なお、視聴用車両はイベント用にワンオフで制作しているとのことで、市販車のメーカー装着オプションのほかに、ダッシュボード中央に80mmのスピーカーとAピラーに25mmのツイーターが追加で装着されていた。

Aピラーにはツイーターが埋め込まれているが、これは特別にワンオフで制作したもの。ぜひ市販してほしいアイテムだ
前席ドアのスピーカー
ラゲッジスペースのウーファー

 また、ハーマン・カードンのハイクオリティなサウンドは、Bluetoothで接続できるポータブルスピーカーや、コンパクトなワイヤレスサブウーファー、横長スピーカーのサウンドバーなど、クルマだけでなく自宅で視聴できるアイテムも多数そろえている。

ニューヨーク近代美術館に収められた「Sound Sticks」のコンセプトを引き継ぐBluetoothスピーカーシステム「Sound Sticks 4」価格4万9500円
アイコニックな透明のドームとさまざまなテーマのライティングが楽しめるBluetoothスピーカー「Aura Studio 4」価格3万9600円
持ち運びが便利な小型ポータブルBluetoothスピーカー「LUNA」価格2万2000円
8時間の再生時間を誇るポータブルBluetoothスピーカー「Go+ Play 3」価格5万5000円
左右のツイーターとボーカル専用のセンタースピーカーを備えた3チャンネルポータブルステレオBluetoothスピーカー「Onyx Studio 9」価格2万9700円
パワフルな重低音を放つ、コンパクトなワイヤレスサブウーファー「Enchant Sub」価格5万5000円

ボルボ「EX30」にも採用された新たなオーディオ機器「サウンドバー」

 インテリアにも溶け込み美しいサウンドを届けてくれるサウンドバー「Enchant 1100」は、薄型テレビの音を改善するだけのシステムではなく、ホームエンターテインメントを没入感の高いシネマ体験へと昇華させる新たなリビングオーディオ機器。

 左右の2つを含めて全11個のスピーカーを搭載していて、テレビの前に置くだけで、まるで映画館のような3Dサラウンドサウンド体験と高品位な音楽ストリーミングを実現するという。

サウンドバー「Enchant 1100」価格12万9800円。スピーカーが全9個の「Enchant 900」は価格7万7000円

 5.1.2chで「Dolby Atmos」「DTS:X」に対応していて、ハーマン独自の「MultiBeam」技術によって、広がりのあるイマーシブ空間を実現するほか、壁の形状や素材に合わせサウンドを自動で補正するキャリブレーション機能で、どんな空間でも映画館のような上質な3Dサラウンドサウンドを体験できるアイテム。

両端にもスピーカーを備えていて、音を反響させることで奥行きが出るという

 このサウンドバーは、サステナブルな取り組みを積極的に導入しているボルボのバッテリEVモデル「EX30」にも採用されていて、フロントウインドウの真下に5つのスピーカーを内蔵した「サウンドバー」が配されている。これによりフロントドアへの配線が不要となり(使用材料の削減)、従来スピーカーのあったスペースは収納に活用されている。

サウンドバーを搭載しているボルボのバッテリEV「EX30」
5つのスピーカーを内蔵したサウンドバーとリアドアなど全9個のスピーカーにより、ドライバーを包み込む音場を実現。「Dynamic」「Soft」「Voice」のサウンドモードに加え、自分好みにカスタマイズも可能

1969年に誕生したスピーカーブランド「JBL」

 1969年にハーマン・インターナショナル傘下に入ったスピーカーブランド「JBL」は、高性能で美しい家庭用スピーカーの製造を目指したジェームス・バロー・ランシング氏が1946年に設立。その頭文字から「JBL」となっている。

 国内では1998年からトヨタ自動車と協業し、車両ごとに数百時間もの作業と精密な調整を行ない「JBLサウンドシステム」を開発。現在は「アルファード」「ヴェルファイア」「bZ4X」「カムリ」「GRカローラ」「GRスープラ」「GRヤリス」「ハリアー」「ランドクルーザー」「MIRAI」などに採用されている。

JBLサウンドシステムを搭載している「ランドクルーザー250」。「ZX」グレードは標準装備、「VX」グレードはディーゼルモデルのみオプション設定
ランクル250に使用しているスピーカー。車種ごとに最適なスピーカーを割り出して組み合わせている
ランクル250に搭載しているスピーカーの種類と配置場所

 実際に「JBLサウンドシステム」が搭載されたランクル250で視聴してみると、さすが個々に車両に合わせたスピーカーを厳選しているだけあって、目の前にボーカルがいるかのような迫力の歌声とサウンドを再現。力強い低音域、表情豊かな中音域、伸びやかな高音域とすべての音域でハイクオリティを実現している。

Aピラーのツイーター
後席ドアにもツイーターを搭載
バックドアの厚みを活かしてスピーカーとサブウーファーを配置

スピーカーだけでなく「イヤホン」や「ヘッドフォン」にも長けている「JBL」

 もちろんJBLのサウンドも、外出先や自宅でも楽しめる。特にフラグシップのワイヤレスイヤホン「TOUR PRO 3(ツアープロ3)」は、JBLの2023年の売上を倍増させたという前モデル「TOUR PRO 2」から、音質、ノイズキャンセリング性能、新空間サウンド、マイク性能、利便性、拡張性などが進化したほか、JBL初のバランスドアーマチュアドライバーと10mm径ダイナミックドライバーのデュアルドライバー搭載で、深みのある低音とバランスの取れた中音域、洗練された高音域の再現可能としている。

ワイヤレスイヤホン「TOUR PRO 3」の価格は4万2900円。カラーはブラックとラテの2色を用意

 ノイズキャンセリングは、新たなリアルタイム補正機能付きハイブリッドノイズキャンセリング2.0を搭載。周囲の環境に合わせてリアルタイムに補正するフィルター計算をさらに強化し、着用している人に合わせてリアルタイムで適応するように進化した。また、6つの通話用マイクを搭載し、通話者の声と環境ノイズを正確に集音し解析することでクリアな通話品質を確保。さまざまな種類のノイズをトレーニングしたAIノイズ低減アルゴリズムを初めて採用している。

スマート充電ケースは前モデルより約29%スクリーンサイズを拡大。さらに新しく「待ち受け画面のバッテリ状態表示」「アルバム名と楽曲名の表示(日本語含む)」「電話入電時連絡先表示」「マルチポイントコントロール」「AURACAST接続」「コーデック表示」が可能になったほか、専用アプリ「JBL Headphones」のメニューもより豊富になって格段に使いやすくなっている

 実際に「TOUR PRO 3」を使用してみると、ノイズがとても少なくクリアなサウンドが印象的だし、イヤホンとは思えないほど迫力の低音が出ていてビックリ。通話の声もスッキリ聞こえるし、ケースの画面に今流れている曲名やジャケットが表示されるのもうれしい機能。また、イヤホンは5.6gと軽いし、イヤホンだけでも7~8時間充電が持つ。ケースのバッテリも含めたら28~44時間も連続で使用可能。また急速充電にも対応していて、10分の充電で3時間再生できるのもありがたい。

 そのほかにもJBLは、スポーツ時に適したモデルや、防水・防塵性の高いモデルなど、幅広い種類のイヤホンを展開しているほか、ポータブルスピーカーや家庭用ホームシアター機器も取りそろえている。

イヤホン本体はIP68の防塵性と防水性を備え、深さ1m以上の耐水性も備えたワイヤレスイヤホン「ENDURANCE RACE 2」価格1万1000円。
独自のショートスティック型デザインを採用し、アクティブノイズキャンセリングを搭載するワイヤレスイヤホン「WAVE BEAM 2」価格8030円
1.45インチタッチスクリーンディスプレイを搭載したスマート充電ケースを採用するワイヤレスイヤホン「LIVE BUDS 3」価格2万6950円
特許取得の耳から抜け落ちにくい独自ツイストロック構造と、金属製ワイヤーを排除したソフトなイヤーフックにより、激しい運動にも耐えるワイヤレスイヤホン「ENDURANCE PEAK 3」価格1万5400円
パワフルなプロサウンドと便利なショルダーストラップを備えた防水ポータブルスピーカー「Xtreme 4」価格5万6100円
映画館の音をリビングに届ける新世代AVアンプ「MA」シリーズの上位モデル9.2chの「MA9100HP」は、音源のジャケットも表示できる視認性の高い液晶ディスプレイに加え、8K映像に対応する最新のHDMIも搭載。全チャンネルにハイパワーを供給する高効率かつ低ノイズなクラスDアンプも搭載する。価格25万3000円
AVアンプ「MA」シリーズともマッチするスピーカーシステム「Stage2」シリーズに新色ラテが追加された。スピーカーやスタンドなど価格は3万4100円~8万2500円
子供の耳を大音量から守るため最大音量を85dBに抑えたヘッドフォン。アプリを使えば保護者による使用時間や音量などのモニタリング管理もできる「JUNIOR 470NC」価格1万1000円

サムスン電子傘下になり自動車用ディスプレイの開発がスタート

 国内ではスマートフォンの「Galaxy」で知られる韓国企業のサムスン電子が、2016年にハーマン・インターナショナルを買収したことで、「ハーマン・カードン」および「JBL」はサムスン電子の傘下となっている。

 それによりハーマン・インターナショナルは、オートモーティブ事業部で新たに「自動車用ディスプレイ」の開発がスタート。大きな特徴はサムスンが量子ドット(Quantum Dot)と呼ばれる半導体ナノ結晶を組み込んで開発した「QLED」という液晶技術を使用していること。すでにサンプルも完成の領域に達しており、多くの実車に装着されるのが楽しみだ。

開発中のディスプレイ。Neo QLEDを採用している
Neo QLEDはすでに家庭用テレビなどに広く普及していて、今後は自動車業界にも参入する