ニュース
AIoTクラウドのアルコールチェック管理サービス「スリーゼロ」 さまざまなアルコール検知器と接続可能なクラウドサービスで企業のDX化を推進
2025年4月21日 06:00
シャープの子会社であるAIoTクラウドが、アルコールチェック管理サービス「スリーゼロ」を市場投入してから約3年が経過した。AIoTクラウドの松本融社長は、「発売以来、建設業界を中心に順調に導入が進んでいる」とする一方、「酒気帯び運転の確認を実施している企業は4割にとどまり、まったくできていない企業は11%を占める。今は、業が飲酒運転撲滅に取り組むことが必須の時代であり、業界全体で意識を高めていく必要がある」と警鐘を鳴らす。
2021年6月に千葉県八街市で、飲酒運転のトラックが下校中の小学生の列に突入し、死傷者が出た痛ましい事件は、まだ記憶に新しい。それを契機に、自動車を5台以上使用するなど、一定規模の営業車や社用車を保有する企業には、アルコール検知器による運転前後のチェックと、記録を1年間保管することが義務づけられている。
これは、2022年4月の道路交通法施行規則の改正によって定められたもので、業務車両を対象にした乗車前後のアルコールチェックが、バスやタクシー、運送業などで使用する緑ナンバー車両だけでなく、営業車や社有車などの白ナンバー車両にも拡大。2023年12月からは、アルコール検知器による確認が義務化されている。この対象となる企業は39万事業所、868万人に達する。
AIoTクラウドの松本社長は、「アフターコロナとなり、外出が増えたり営業活動が活発化したりといったことも影響し、飲酒運転による死亡者数は前年比11%増となり、増加に転じている」といった状況を指摘する。
山形県では飲酒運転の検挙数が過去10年で最大となり、サービス業や建設業といった職業での検挙率が高いという結果が出ているほか、山口県では免許取消理由として飲酒運転が50%を超え、交通事故による死亡者数は1.5倍に増加している。さらに沖縄県では、飲酒運転による事故の構成比が全国平均の約3.2倍になっているというデータもある。
加えて、AIoTクラウドが企業の安全運転管理者を対象として2024年11月に実施した調査によると、酒気帯び運転の確認を実施している企業は43.0%となり、一部実施できている企業は35.2%、まったくできていないとの回答は10.9%となった。また、記録の保管がまったくできていない企業が14.6%、アルコール検知器の導入がまだできていない企業が9.7%と、それぞれ1割前後あることも分かった。さらに、アルコール検知器にはセンサーが正しく動作させるために有効保持期間があり、1年~3年ごとに交換する必要があるが、これが実施できていない企業が16.2%を占めている。
しかも、これらの結果は2024年6月の調査に比べて悪化しているという状況なのだ。
「6月調査時点では、どこまでやるべきかということがまだ浸透していなかった。それが理解され始めたことで、より実態を反映した結果が浮き彫りになったため、数値が悪化している」と分析。「いずれにしろ、2024年12月から施行された道交法改正が、浸透、定着しているとは言えない状況であるのは明らかだ」と危機感を募らせる。
また、アルコールチェックに関して安全運転管理者が感じている課題としては、「アルコール検知器を配布していても、本当にアルコールチェックを実施しているかが確認できない」「直行直帰や深夜早朝の点呼などの確認が大変」「記録簿の管理、確認作業により、管理者の業務負担が増えた」「紙やExcelでの管理が大変」などといった声があがっている。
「法律で定められたことが順守されていない背景には、2024年問題をはじめとした現場の人員不足が影響していると予測される。多忙な中に、新たに実施すべきことが追加されたため、現場はすぐに対応できないという状況もある」と分析する。
しかし、これらの課題を解決することになるDX化への取り組みについては、企業側の慎重な姿勢が見られる。「取り組む動きもあるが抵抗感が強い」との回答は24.6%と約4分の1を占め、「まだ意識していない/必要がない」が21.5%、「全社的に抵抗感が強い」が6.0%となっている。
同調査では、アルコールチェックの運用方法についても回答を得ており、紙での運用が36.8%、Excelなどの電子ファイルでの運用が27.6%と約6割を占めた。クラウド利用は約3割だが、運転者の人数が多い企業ほど、クラウド管理をしている傾向が高いという。
「アルコールチェックにクラウドを活用することで、業務効率化と法令順守が同時に実現できる。その点が浸透していない。クラウド化やDX化のメリットをもっと訴求していく必要がある」と、これをSaaSベンダーとしての課題に位置づけた。
スリーゼロは、導入済みのアルコール検知器を使用して運転者の酒気帯びの有無をチェックし、スマホアプリを経由して、顔認証とともに検査結果をクラウドに送信することで、運転者の状況を把握。これらの情報を保管できるクラウドサービスであり、同社ではアルコールチェックの実施を適切に行なうための効率化と、企業および安全運転管理者の負担軽減を実現できるとしている。
富士キメラ総研によると、2025年のアルコールチェック管理サービス市場は89億円が見込まれ、2028年までに年平均成長率9.1%増で推移。113億円の市場に達すると推測している。
現在この分野にはAIoTクラウドのほか、パイ・アール、鈴与シンワート、アイリスオーヤマ、インフォセンスなどが参入している。
先行するメーカーは、アルコール検知器とクラウドサービスをセットで販売するハードウェア主導モデルだが、AIoTクラウドが提供する「スリーゼロ」は、クラウドサービスだけを提供。さまざまなアルコール検知器と接続ができる点が特徴だ。
「現在、130機種以上のアルコール検知器に対応しており、市場全体の約9割のアルコール検知器をカバーしている。すでにアルコール検知器を導入している企業も簡単にクラウド化ができる。また、直行直帰や深夜早朝の点呼も、クラウド管理により容易に行なえる。アルコールチェック点呼代行サービスと組み合わせた運用により業務負担を大幅に削減できる」と語る。
さらに、アルコールチェック時に、AIによる顔認証機能によって本人確認を行なうことができ、なりすまし防止への対策が可能になる点も特徴だ。
また、2022年3月にサービスを提供して以来、これまでに7回の機能強化がされており、2025年2月の機能強化では、月報作成機能の追加や、OCR読み取り機能の強化などが行なわれている。
「ユーザーからの声を反映して機能を強化している。2月の機能強化も同様であり、特にOCR読み取り機能では、オドメーター(走行距離計)への対応を図った。スマホで撮影したオドメーターの数値を自動的に読み取り、運転者の入力ミス防止や手間を軽減する。さまざまなオドメーターに対応できるようにしている」という。
運転者は、スリーゼロのアプリを立ち上げて、運転日誌の画面から必要事項にチェック。運転開始前と運転終了後にスマホのカメラボタンを押して、オドメーターを撮影すると数字を読み取り、運転日誌に記録。走行距離のデータとしても蓄積し、分析するといった活用も可能だ。
オドメーターはメーカーや車種によってさまざまだが、各種検証を行ない、多くのオドメーターに対応できるようにしているという。
さらに、スマホのプッシュ通知に新たに対応し、運転者にメッセージを通知。全運転者対象とした「一斉通知」および、条件に合致した運転者のみに通知する「個別通知」の2種類に対応。アルコールチェックの実施を促すメッセージを運転者へ直接通知することで、実施漏れの防止に貢献できるという。「運転開始時間前に、アルコールチェックを促すメールを送信しても、気づかないというケースがあるため、スマホのプッシュ機能で、確実に通知が届くようにした」という。
今後のスリーゼロの進化について、AIoTクラウドの松本社長は、「アルコールチェックへの対応や、それに伴う業務の効率化だけでなく、安全運転管理者の業務全体をカバーする形に進化させていきたい。また、他社のさまざまなサービスとも連携させていく。特に、ハードウェアや業務系SaaSではパートナー連携を進める。一方で、業種ごとの細かな要望への対応は、スリーゼロそのものが進化していくことになる」とした。
すでにテレマティクス分野では、パイオニアのビークルアシスト、三井住友海上のF-ドラなどと連携しているほか、点呼業務の外部委託サービスとの連携ではパーソルビジネスプロセスデザイン、バディネットなどとのパートナーシップを展開している。また、チャットサービスではLINE WORKSなど、勤怠管理ではKING OF TIMEと連携している。
将来的には、パートナーとの連携によって、アルコールチェックをしないとクルマのエンジンがかからない「アルコールインターロック」と呼ばれる仕組みへと発展させることも視野に入れているという。さらに、今後は、生成AIの組み合わせによる機能強化も進めていく考えだ。
スリーゼロは、現在、約20社のパートナーを通じて販売。全国系ディストリビュータを通じた展開も開始している。導入実績は1000社以上となり、中小企業のほか、清水建設や大林組、大塚商会など、大手中堅企業での導入も増加。特に直行直帰が多い、建設業界での導入が進んでいるという。2025年度からは、中小企業が多い地方を対象にした全国展開を強化していく姿勢を示す。
さらに、カスタマーサクセスチームを設置し、サービスの契約維持や、シンブルプランからレギュラープラン、プレミアムプランへのアップセルに向けた活動を推進していくという。
松本社長は、「アルコールチェック管理の運用が不十分な企業が多いのが実態であり、飲酒運転の撲滅には、さらなる啓蒙活動を進めるとともに、クラウドサービスの活用による管理業務負担の作業負荷の軽減、安全性の確保も重要になる。プレミアムプランであれば、すべての法令に対応が可能になる。AIoTクラウドは、誰にでも使いやすいDXサービスとして、スリーゼロを進化させ、飲酒事故のない社会の実現に貢献したい」との方針を示した。













