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ミシュランの最先端ファクトリー「タイ ラムチャバン工場」を見学してみた
2025年5月4日 09:00
ミシュラン サステナブルメディアデー2024の2日目は、ラムチャバン工場(LMC)を実際に見学できた。
LMCの創業は1990年といまから35年前。その生産規模はすでに創業当初から600万本/年を実現しており、2023年のデータでは22の市販モデルがここから生産され、かつ第二工場でも500万本/年のタイヤが生産されるまでになっている。
ちなみに現在ミシュランは、アジア(中国+東アジア&オーストラリア。インドを除く)に10の工場と3つの支社を持ち、そこには約2万2000人の人々が働いている。その中でもタイには5つの工場と1つの支社があり、その従業員数も約8000人と、アジア全体で見ても4割近くまで及んでいる。そしてこのLMCはタイ工場の中でも、いや世界的に見てももっとも進んだ設備を持つ工場だという。
そんなLMCの先進性もまた、ミシュランが持続可能な未来を構築するために掲げたキーワード“3P”(People×Profit×Planet)で表すことができる。
1つ目は“人材”だ。LMCにおける雇用体制のオープンさは、管理職における男女比率が全13人のうち女性7:男性6の男女比であることからも伺い知れる。国籍は4か国構成で、タイ10人、インド1人、ベルギー1人、インドネシア1人。その平均勤続年数は20年だという。LMC全体ではまだ男性比率が85%と大多数だが、逆に言えば25%の女性比率に対して管理職の割合は多いことが分かる。
ミシュランがこうした労働環境を実現するのは、タレントキャンパスにおいて、学習とステップアップの場を全ての人々に均等に与えているからだろう。また、工場内はオートメーション化が進んでおり、たとえばグリーンタイヤ(加硫前のゴムやカーカス、ベルトといった素材を組み付けた段階のタイヤのこと。“生タイヤ”とも呼ばれる)の組み付けは、全て機械が行なうようになっていた。作業が肉体労働から生産管理に変わることで働く人々の身体的な負担は軽減され、年齢や性別に関係なく活躍の場が得られるようになったのだと思われる。さらに言えば工場内はかなり静かで、きれいで、予想とは違って涼しかった。
LMCにおけるハイライトは、加硫工程の電動化だ。硬化プレスを従来のボイラー式から電動式に改めたことで、エネルギーの消費量が3分の1へと下がり、エネルギー効率が6~8倍へと上がったのは先にも述べた。さらに言うと電動方式は加圧器の温度を早く高めることができるため、加硫時間も短くなった。だからかどうかは定かではないが、ミシュランの加硫プレスエリアは、筆者がこれまでに見学した他メーカーのボイラー式よりも涼しかった。ちなみに現在LMCでは、約70%のプレス機を電動化している。
これ以外にもLMCではソーラーパネルの導入を積極的に行なっており、2019年の第1段階では1MW(メガワット)だったその容量も、現在7MWにまで増加している。これによって工場内の電力は100%再生可能なエネルギーでまかなわれ、かつ二酸化炭素は70%削減されたという(iーREC認証)。また工業用水のリサイクリング、揮発性有機化合物やエネルギーの削減など、2030年までにグループ全体で45%、LMCとしては現状比35%の環境フットプリント削減を目指している。
こうした活動からも分かるとおり、ラムチャバン工場は2050年までにカーボンニュートラルを目指すミシュランのリーディングファクトリーとして機能している。「ミシュランといえばフランス」というイメージは未だ強いが、その最先端のファクトリーはいまアジアにある。これは非常に強いインパクトを筆者に与えた。