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日本ミシュランタイヤ新社屋「PARK棟」公開 「社員の交流を増やして“集合知”を生み出す」と須藤元社長
2024年11月15日 10:00
- 2024年11月13日 公開
枠にとらわれない自由な発想と協業でイノベーションを起こしてほしい
日本ミシュランタイヤは11月13日、2023年11月より建設を進めていた新社屋「PARK棟」を公開すると同時に、本社移転から約1年の進化と成果を報告した。
日本ミシュランタイヤ 代表取締役社長の須藤元氏は、「コロナ禍により強制的にリモートワークが導入されたことで、これまでは東京とか群馬とか、場所にとらわれ過ぎていて、遠いから……、時間がもったいない……など、自分たちで消極的になり仕事の可能性をせばめてしまっていることに気がついた。それと同時に、これまで通りの対面での価値を改めて再確認しました」と振り返る。
また、東京は災害が発生すると機能が停止するリスクもあるほか、拠点が複数あると投資が分散し、固定経費もかかるとともに、部署を越えた社内協業の機会もなかなか増えないなど、「いろいろな課題も表面化していた」と須藤社長は語る。
そしてコロナが収束したタイミングで、1991年から研究開発拠点となるR&Dを置く群馬県に再び注目。台風による水害・土砂災害が少ないだけでなく、震度4以上の地震も少なく、過去10年で被災世帯が関東でもっとも少ないこともあり、移転を決定。
この本社移転は、「人(People)」「利益(Profit)」「地球(Planet)」のすべてを持続可能にするミシュランのビジョン(理念)に沿ったもので、「社員みんながお互いを知り、一丸となり、ともに挑戦し、協業し、一緒にワクワクをしながら対話をして、一体感を高められると考えました」と須藤社長は思いを述べた。
移転前は東京本社に約130人が在籍していたが、2023年8月1日に本社を群馬県太田市に移転したことで、そのうち約100人の勤務地が群馬県太田市にある「太田サイト」に変更された。すでに須藤社長を含めた約20人が群馬県へと転居済みで、日本ミシュランタイヤとしては、移転は強制はせず、子供の年齢や実家(両親)との距離など、本人や家族の環境に合わせて決められるようになっている。
そのため現在も約80人が東京から通勤しているが、出社日は週2.5日程度なうえ、出勤日も各自でスケジュールを組めるようにしているという。さらに、通勤中の電車やバスの車内での作業時間も勤務とみなすように新ルールを適用。引っ越しを行なった人も地元住民から暖かく受け入れられているとのことで、本社移転前後の社内満足度は、ほぼ変わっていないとした。
今回初公開したPARK棟は、「集う・アイデアが生まれる」をテーマに、異なる知見を持つ社員が自由かっ達に知識を増幅し、「サステナビリティ」「コラボレーション」「ABW(Activity Based Working:仕事内容などに合わせて自由に働き場所を選ぶ考え方)」を具現化し、社会貢献するための創造と革新の場となるコラボレーションスペース。須藤社長は、「産官学連携や地元企業とのコラボレーションなど、オープンイノベーションやビジネスの枠を越えた協業の機会を創出したり、社員の交流をもっと増やしたりして“集合知”を生み出していきたいと思います」とあいさつを締めくくった。
本社移転に関して社員はおおむね前向きな受け止め
続いて日本ミシュランタイヤ 人事部 デベロップメントパートナーの武内良憲氏は、本社移転に関する満足度や、通勤や宿泊など会社のサポート体制、働き方の満足度、キャリアパスの広がり、本社オフィスの進化への期待値など、本社移転から1年が経過したタイミングで行なった社内アンケートの結果を紹介した。
武内氏は、「本社の現在の設備や環境についての満足度のみ58%と低い数値となっていますが、これは今回のPARK棟が完成する前に実施したアンケート結果なので、次回のアンケートできっと改善してくると期待しています。そのほかのアンケートは75%以上の満足度を得られていますが、もちろんそれらも改善を継続していき、もっと満足度を高めていきます。本社を移転してまだ1年ちょっとなので、まだまだ気づかされることもありますし、社員からのフィードバックも増えることで、よりスピーディに改善できると思います。快適な職場を求めるプロジェクトはまだまだ進行中で、これからも進化し続けていきます」と説明した。
具体的には、新社屋となるPARK棟を活用しつつ、仕事内容などに合わせて自由に働き場所を選ぶ考え方「ABW(Activity Based Working)」を通じて、変化に強い組織を目指すとしている。
新社屋「PARK棟」が日本ミシュランタイヤにもたらす新たな価値とは
最後にタスクフォース代表 執行役員の田代英之氏が、PARK棟のコンセプトと概要説明を実施。PARK棟は建築コンテナと鉄筋を使ったハイブリッド構造で、1階は370m 2 、2階は230m 2 で、延べ床面積は600m 2 を誇る。
当時ミシュランの東アジア・オセアニアマネージングディレクターを務めていたマヌエル・モンタナ氏(現ミシュラングループ経営評議会メンバー)の、「日本ミシュランタイヤで働く社員の声を聞きながら、ビックリするようなオフィスを作り上げてください」との強いメッセージもあり、コロナ後の「NWoW(New Way of Work:働き方改革)」の具現化を目指したものとなっていて、電話用の個室3つを除き、すべて壁のないオープンスペースとなっている。
名称の「PARK」は社員公募から選定したもので、新社屋のテーマや目指す姿・コンセプトとなっている、「つながる」「出会う」「閃く」の3つがすべてできる空間・場所を表すシンプルな表現がポイントだという。社員が気軽に「じゃ、続きはPARKでやろうか」「ちょっとPARKへ行く?」といった会話が飛び交うような象徴的な名前を選んだという。
デザイン・設計・建設のすべてを群馬県内の業者へ依頼することで、物流によるCO2排出を抑制し、内装に石膏ボードを素地のまま使用することでシンプルな構造としつつ、修繕しやすさやリサイクルにも配慮しているとのこと。
また、建設発表時は建物の外壁にミシュランのコーポレートカラーである青色や黄色が使用されるイメージだったが、社員からの「いつまでも色あせないでほしい」とのリクエストを受け、シンプルなシルバーを採用したという。
とはいえ、それではミシュランさがないので、照明器具をタイヤのような丸形にしたり、イスの色を一部イエローにしたり、ミシュランらしさも少し取り入れているとのこと。
また、社会・地域・環境への貢献というミシュランの社風は、社員に少しずつ浸透していて、コロナ禍前よりも社員のボラティア活動の時間が約2.3倍に増えているという。これは本社移転完了発表(2023年8月)の際に須藤社長が、「地域貢献や次世代育成の一助として、地域の子供たちの学習支援や学校への講師派遣などのボランティア活動を積極的に進めていく」と語っていた成果が現われているとのこと。