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現行「レガシィ」に比べ、ねじり剛性40%以上アップを実現した「レヴォーグ」のホワイトボディーを見る

Bピラー後部までを、新型「WRX」と共用

 ツインリンクもてぎで開催されたスバル(富士重工業)の「レヴォーグ プロトタイプ」試乗会。ツインリンクもてぎのピットでは、レヴォーグの骨格であるホワイトボディーや、1.6リッターモデルのリニアトロニックCVTが展示されていた。本記事では、主にホワイトボディーについてお届けする。

ツインリンクもてぎのピットに展示されたレヴォーグのホワイトボディー

 レヴォーグの車名は、「LEgacy」(大いなる伝承物)、「reVOlution」(変革)、「touRinG」から作られた造語で、「“スバルの大いなる伝承”を引き継ぎながらも、次世代に先駆けた変革により、新たなツーリングカーの時代を切り拓く」という意味が込められている。

車名レヴォーグ4代目レガシィ現行レガシィ(D型)現行インプレッサ スポーツ
車型ワゴンワゴンワゴン5ドア
全長(mm)4690468047904415
全幅(mm)1780173017801740
全高(mm)1485147015351465
ホイールベース(mm)2650267027502645

 日本にジャストフィットというそのボディーサイズは、4690×1780×1485mm(全長×全幅×全高)で、先代レガシィよりやや大きく、現行レガシィより小さい。レヴォーグが、北米市場をメインマーケットに進化するレガシィと、インプレッサの中間を担うモデルとして企画されたことが分かる。日本では、今後より大型化するレガシィを完全に置き換えるモデルとなり、初代レガシィからの「25年目のフルモデルチェンジ」というキャッチコピーが、レヴォーグを象徴している。

 レヴォーグが採用するプラットフォームは、現行インプレッサを大幅に改良したもので、スポーツセダンとしてデビューする「WRX」「WRX STI」と同時開発されている。そのため、ホイールベースはWRXと同様2650mmとなっているのだろう。

 しかしながら、レヴォーグのメインターゲットは、インプレッサユーザーではなくレガシィユーザーで、スバル開発陣も「現行レガシィに比べ」という言葉でレヴォーグを語る。プラットフォームはインプレッサベースのものとはいえ、レガシィユーザーを満足させるべく大幅に強化。現行レガシィに比べボディーのねじり剛性(Nm2/rad)は40%以上アップしているという。

 レヴォーグのホワイトボディーについて説明していただいたのは、富士重工業 スバル技術本部 車体設計部の白昌鍋氏。白氏は、「レヴォーグのボディー設計で配慮したのは、力の伝達をいかにスムーズに行うか」だという。レヴォーグは、フロント部からBピラー直後までの骨格をWRXと共用。その上で、テールゲート開口部を大きく確保するワゴン車型となるため、リアセクションの剛性にとくに注力しているという。

 また、単に剛性を向上させるだけでなく、静粛性にも配慮。さまざまな高張力鋼板を組み合わせ、板厚を調整するなどで共振点をずらし、高い静粛性の実現に貢献しているという。そのほかフロントセクションは、Aピラー周辺部の補強を行うとともに、軽量化にも配慮。スポット溶接の打点以外の個所を波形にすることで、グラム単位の軽量化を実現。アルミボンネットフードと相まって、フロントの回頭性の向上にも貢献している。

ボンネットフードを開けた状態のホワイトボディー。乗員保護のため、とくに強固に仕上げる部分は980MPaの高張力鋼板(青の部分)を使用している
Aピラー付け根から、フロントストラット上部を強化。複数の鋼板を組み合わせることで、路面からの入力をボディー全体で受け止めていく
波形にカットされた鋼板。スポット溶接個所以外をカットすることで、フロントセクションの軽量化に貢献
フロントストラット部。奥に赤い鋼板がボックス上に組まれているのが分かるだろうか。このような形状に仕上げることで、剛性をさらに上げ、力を上方向に逃がしていく
フロントストラット上部を強化した鋼板で組み上げることで、ステアリングの正確性などが確保できる
フロント部はボックスセクションでエンジン保護を行うとともに、一部の補機類はステー(長円で囲んだ部分)で保持。あえてつぶれやすい個所を作ることで、歩行者保護を図っている
Aピラー強化部を斜め前から
フロントストラット部を別の角度から。黄色いダンパーはビルシュタイン製で、このホワイトボディーはGT-Sのもの。1.6リッター、2.0リッターとも基本構造は変わらない
GT-Sのため、フロントロアアームには、アルミ製のものを使用
前席フロア下も強化されている
ミドルセクション。ここは乗員保護を行うため、980MPaの高張力鋼板(青い鋼板)で保護空間を確保。ただし、ガチガチに固めるのではなく、400~440MPaの鋼板(黄色い鋼板)で力を逃がす部分を作っている
Bピラー付け根。鋼板の組み合わせ方が分かる部分。Bピラー後部までをWRXと共用する
Bピラー上部。Bピラーで固めつつ、左右のBピラーを400~440MPaの鋼板で接続。力の逃げるエリアを作っている
ダッシュボード内部には丸いパイプが。これで左右のつぶれを防いでいるのだろう
前席
後席
リアシートの下にも強化された鋼板がある。これにより、リアシートをしっかり支えるとともに、ラゲッジルーム部の剛性を確保していく
リアセクション。赤い鋼板はとくに強化された部分、黄色い鋼板は強化された部分だ。Cピラー内部に赤い鋼板が使われているのは、視界確保などでCピラーを細くデザインするため
高張力鋼板を使うとコストは高くなるはずだが、Cピラーの細さによる視界確保を優先したデザインを行ったというわけだ
リアゲート開口部付近にも高張力鋼板を使用。この鋼板を組み合わせることで剛性を確保している。リブが天井部に向かって湾曲しているが、これは力を天井方向に向かって逃がしているため。レヴォーグでは、この力を逃がす方向の工夫が、走りの質感の向上に寄与している
こちらは、リアゲート下部、リアバンパー裏にある高張力鋼板。ここはリブが縦横に走っており、しっかりとしたリアまわりを作り出そうとした意図が見て取れる。つまり、リアサスペンションなどから入る入力を、リアゲート上部で吸収する設計となる。これにより、リアサスの動きの正確性を確保したいのだろう
リアサスペンションまわり。リアダンパー部を補剛してあるほか、リアサスペンション取り付け部を補剛している
リアダンパーを囲むボディー構造を強化
こちらはリアサスペンション取り付け部の補剛鋼板。正確なリアサスの動きは、スタビリティ向上につながる
レヴォーグはワゴンであるため、なるべく大きな開口部を確保する必要がある。それでいながら、スポーツツーリングカーとしての高いボディー剛性、適切なボディー剛性を実現しなければならない。そのような設計を行ったと、白氏は語ってくれた

 現代のクルマは、衝突時の乗員保護を実現した上で、歩行者保護も求められている。さらに高い走行性能を確保する上で、車体の剛性を上げていく必要もあるし、燃費向上のため軽量化も必要となる。レヴォーグでは、それらを力の伝わる方向を工夫することで両立しようとしている。それが端的に表れているのが、フロントストラットの支持部となる。

 高張力鋼板をボックス状に組みつつ縦方向に配置することで、ストラットサスペンションの上下方向の動きを受け止める(緑の方向に力が働く)。衝突時は、ボックス状の通常鋼板がつぶれながら衝撃を吸収する(ピンクの方向に力が働く)とともに、右奥に見える横方向のボックス状の高張力鋼板(青の方向に力が働く)で乗員の生存空間を確保。ピンクの力の方向と青の力の方向はベクトルが異なっているため、衝突時のフロントセクションは下へ潜り込もうとする。スバルのエンジンは水平対向であるため、とくに下に潜り込ませやすく、いざというときの乗員の足下空間を確保していこうという意図が、斜めに組み合わさった鋼板接合部(黄色い長円)に見て取れる。

 このレヴォーグが実現した走りについては、松田秀士氏のインプレッションを参考にしていただきたい。

●インプレッション スバル「レヴォーグ プロトタイプ」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/20140123_632001.html

(編集部:谷川 潔)