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開発者も参加したランエボ&インプレッサのワンメイクドライビングレッスンリポート

次期ランサーエボリューションは電動化!? ランエボ&インプの開発者トークショーも開催

2014年10月3日開催

ランサーエボリューション22台、インプレッサ24台の計46台が参加して行われた「ランエボ&インプレッサワンメイクドライビングレッスン」
三菱自動車は現行モデルのランサーエボリューションX(手前)、スバルは8月発売の新型WRX STI(奧)を富士スピードウェイに持ち込んだ。ランサーエボリューションXはチューニングショップ「TEST&SERVICE」のデモカーだ

 10月3日に富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)において、三菱自動車工業「ランサーエボリューション(ランエボ)」とスバル(富士重工業)「インプレッサ」を対象にしたワンメイクドライビングレッスンが開催された。

 4気筒2.0リッターターボ+4WDという共通項を持つランエボとインプレッサ。ラリーはもとより、スーパー耐久などサーキットの舞台でも数多の激闘を演じてきた両車のワンメイクレッスンが今回行われた。参加対象車は4ドアセダンのランエボI~X、4ドアセダンと5ドアハッチバックを展開するインプレッサが「インプレッサ WRX STI」「WRX STI」「WRX S4」となっており、前者からは22台、後者からは24台の計46台が参加した。

 タイムアップやドライビングテクニック向上を目的とした上級者向けドライビングレッスンとは異なり、主にサーキット走行を経験したことがない人が「安全」に「安心」してサーキット走行ができるようになることがイベントの趣旨となっており、そのため午前中は座学を通して運転の基礎を学ぶところからレッスンは始まり、その後P2駐車場に移動してウォーミングアップを兼ねたタイム計測付のパイロンスラローム、そして午後にレーシングコースでのフリー走行(20分×3本)というカリキュラムが組まれた。

豪華な登壇者がランエボ&インプを語る

 その座学の登壇者が豪華だ。今回のドライビングレッスンで講師を務めたのは、自動車ジャーナリストでありドライビング理論研究会「中谷塾」を主宰する中谷明彦氏と、ニュルブルクリンク24時間レースで2011年、2012年に「SUBARU WRX STI」でクラス2連覇を果たした吉田寿博氏の2名。これに加え、三菱自動車から商品開発プロジェクト CDセグメント担当部長 吉田博和氏、スバルから商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャーの高津益夫氏という、ランエボ&インプレッサの開発担当者も参加してのトークショーも繰り広げられた。

自動車ジャーナリストの中谷明彦氏(左)とプロドライバーの吉田寿博氏(右)が講師を務めた
ドライビング理論研究会「中谷塾」で展開するドライビング理論を参加者にレクチャー。基本的なクルマの走らせ方を身体で知る前に頭で知っておく必要があると中谷氏

 まず理論派で知られる中谷氏から、サーキット走行においての上達への近道についての基本的な考え方が紹介された。サーキット走行でタイムアップさせるには何十周、何百周と周回を重ね、自らが運転するクルマの挙動・特徴などに慣れていく必要があるが、そうするとタイヤ代、ガソリン代、オイル代など多くのお金がかかる。そのため、まずは基本的なクルマの走らせ方を身体で知る前に頭で知っておく必要があると中谷氏は説明する。

 講義ではコーナリング中におけるクルマの重心位置や、タイヤ4本にどのような力がかかっているかを理解する必要があるとして、中谷塾で展開する理論について紹介するとともに、「FF車やFR車と比べ、4WD車は悪路だけでなくサーキットでも有利に走れる。例えばコーナリング中にアクセルを踏むと駆動輪にトラクションが出て、FR車ではオーバーステアになりやすく、FFではその逆のアンダーステアになりやすい。その点4WD車は前後輪の力のバランスが一定でオーバーステアになったりアンダーステアになったりしにくい」と、ランエボ&インプレッサのような4WD車の基本的な動き方やメリットなどについて解説を行った。

三菱自動車 商品開発プロジェクト CDセグメント担当部長 吉田博和氏

 トークショーではランエボの今後について吉田氏から語られた。現行モデルのランサーエボリューションXは、5速MT車とゲトラグ製の6速ツインクラッチSST(Sport Shift Transmission)車の2モデルを展開するが、6速ツインクラッチSST車の生産は2014年度内に終了することがすでに発表(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140710_657367.html)されている。

 このことについて、吉田氏は「最近の欧州車は、燃費のために小排気量のターボエンジンにツインクラッチトランスミッションを使ったクルマが数多く出てきている。高性能のSSTをそのまま継続して作っていくのは難しいということで、SSTの生産は(2014年)12月まで、車両の生産は(2015年)3月までということになった。ただ、MT車は来年以降も作り続ける」と、引き続きランエボXの生産を行っていくことを説明した。

 また、「三菱自動車の特徴は駆動系の電子制御にあります。弊社は今、電動化にプライオリティを置いていて、ガソリンエンジンよりも電気で制御する方が制御の幅が増えるし、電気の方がトルクも出せると考えている。そういう方向に今しようとしていて、(ランエボでは)これからそういうところを進化させて……(しばらく間をおいて)これは希望ですけど(笑)。次世代のエボリューションというのは、こういうところから生み出していけるのではないか」とし、やや口が滑ったともいえる形で次期ランサーエボリューションの存在を示唆するとともに、次世代モデルで電動化技術を取り入れたいとの要望を明かした。

スバル 商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャー 高津益夫氏

 一方、中谷氏から8月に発表されたばかりの「WRX S4」「WRX STI」の受注状況について聞かれた高津氏は、「おかげさまで大変ご好評をいただいており、発売後1カ月の受注計画台数は約6倍をいただくことができた」と語るとともに、「重量配分とか車体剛性、サスペンションのジオメトリーといったクルマの基本性能を研ぎ澄ませていき、“いい走り”ができるクルマを目指した」と、新型WRX S4/WRX STIにおける開発の基本コンセプトを紹介。

 また、WRXという車名はこれまでインプレッサシリーズのスポーツバリエーションとして使われてきたが、今回のモデルチェンジから車種として独立している。そのことについて高津氏は「インプレッサの派生車のWRXということになると、インプレッサもWRXもお互いに両車の妥協点を探さなければならなかった。そういった意味で各々でやりたいことをしっかりやる、ということで名前を分けてみました」と説明。

 さらに両モデルの特徴については「やはりボディーです。従来のWRXはインプレッサの派生車だったので、どうしても自然吸気・小排気量のボディーと、2.0リッターターボのボディーで供用しなければならず制約が厳しかった。基本的にはインプレッサを補強する形で開発を進めてきたが、補強すると重量が重くなってしまう。やはり基本の骨格自体をはじめから設計できると軽くて剛性の高い骨格が作れるので、そういったところで今回のモデルはボディーがかなり変わっていると思う」と語るとともに、従来モデルからの具体的な変更点については「材料を変えて軽量化するというのもあるが、どちらかというとその軽量化分を使ってフレームをとにかく硬くすることに注力した。ボディー重量自体は従来とトントンかやや軽いくらいだが、剛性は曲げ剛性係数で30%、ねじり剛性係数で40%ほど向上している」と、新型車のアピールを行った。

レーシングコースでのフリー走行は、ストレートでレブリミッターがあたる付近にシケインを設けて実施。愛車保護の観点からこのような配慮がなされた

ランエボ総選挙の結果も発表! 1位は……

 このトークショーのあとにP2駐車場でのパイロンスラローム走行、レーシングコースでのパレードランやフリー走行が行われ、参加者は中谷氏や吉田寿博氏から多くのレクチャーを受け、充実した1日を過ごしたようだった。

P2駐車場で行われたパイロンスラローム走行の様子。スタート地点に中谷氏、ゴール地点に吉田寿博氏が立ち、ドライビングスキルに合わせて的確なアドバイスをしていた
レーシングコースではパレードランやフリー走行が行われた。ストレート上に設けられたシケインはこのような感じ(写真右)
中谷氏と吉田寿博氏による同乗走行も体験できた(抽選)
三菱自動車の吉田氏も新型WRX STIに興味津々、ということで吉田寿博氏の助手席で新型WRX STIの性能を体感
ドライビングレッスン参加者もランエボ総選挙に参加。投票結果の順位を当てるクイズが行われ、正解者にはグッズをプレゼントするイベントが開かれた

 なお、今回のドライビングレッスンでは7月10日~9月30日の期間、三菱自動車の特設サイトで行われていた歴代ランエボの人気投票「ランエボ総選挙」(同時に歴代ギャランの人気投票も実施)の結果発表も行われた。

 総投票数は1万8123票で、1位は現行モデルの「ランサーエボリューションX」が獲得。以下、「ランサーエボリューションIII」「ランサーエボリューションIX」「ランサーエボリューションV」「ランサーエボリューションIV」「ランサーエボリューションVI」「ランサーエボリューションVII」「ランサーエボリューションI」「ランサーエボリューションVIII」と続き、最下位は「ランサーエボリューションII」という結果となっている。

(編集部:小林 隆)