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いよいよ今週末に母国レース、今シーズン絶好調の日産フォーミュラEチームが会見

2025年5月14日 開催
フォーミュラEの東京大会「Tokyo E-Prix」(第8戦/第9戦)の開催に先立ち記者会見を開催

 日産自動車は5月14日、東京・有明で5月17日~18日に開催される「フォーミュラE」シーズン11(2024/25)の東京大会「Tokyo E-Prix」(第8戦/第9戦)の開催に先立ち、日産フォーミュラEチームの記者会見を開催した。会見にはトマソ・ヴォルペ監督、ドライバーのオリバー・ローランド選手、2024年度までチーフパワートレインエンジニアを務めた西川直志氏の3名が出席した。

 フォーミュラEは、FIA(国際自動車連盟)が管轄する世界初のEV(電気自動車)レースの世界選手権で、2024/25シーズンで11シーズン目を迎える。ジャガー、マクラーレン、ポルシェ、マセラティといった自動車ブランドが参戦し、日本からは日産に加えて今シーズンよりヤマハ発動機も「ローラ・ヤマハABT」として参戦している。

 母国開催となる「Tokyo E-Prix」に出場する日産フォーミュラEチーム。前回のモナコではオリバー・ローランド選手が第6戦で優勝、第7戦ではポールポジションを獲得後2位でゴールするなど、7戦中3勝と好調さを見せており、ドライバーランキングでオリバー・ローランド選手がシーズン中盤でありながら115ポイントで首位、チームランキングで日産フォーミュラEチームは2位に立っている。

今シーズン7戦中3勝と好調さを見せる日産フォーミュラEチーム

 今週末に東京ビッグサイト周辺で開催されるダブルヘッダーの「Tokyo E-Prix」は、東京ビッグサイト(東京国際展示場)を囲むように作られた市街地コースで実施。全長2.575kmのコースには18のコーナーが設けられ、3本のロングストレートと3つのシケインからなるコンパクトなレイアウトとなっている。コース幅が狭いため予選が成功の鍵を握り、ターン4の外側に配置された「アタックモード」発動ゾーンは、レース展開に重要な戦略性を加える要素となる。

 また、第8戦ではジェッダとモナコに続き「ピットブースト」を導入する。これは全ドライバーに34秒間のピットストップと600kWで30秒間の急速充電を行ない、エネルギーを3.85kWh(10%)追加することを義務付けるというもの。エネルギーが増加するメリットがある一方、順位が下がるリスクもあるためいつ「ピットブースト」するかが勝負の分かれ目になるかもしれない。

特別なデザインが施されたフォーミュラEマシンのアンベール
日産は東京でのホームレースを記念してイラストレーター吉田健太郎氏とコラボレーションし、初制作となるEVレースゲーム「NISMO Electric Racer Tokyo」を発表。会場では桜をテーマにした既存のデザインに同ゲームのユニークなビジュアルを反映した特別版の車両デザインが披露された

 会見でトマソ・ヴォルペ監督、オリバー・ローランド選手とともにあいさつを行なった西川氏は、2021年から2025年3月まで日産フォーミュラEチームに帯同し、市販車とレーシングカー両方の視点で電動パワートレーンの開発に活かすエンジニアという立場で活躍。今期の日産フォーミュラEチームの好調の鍵でもあるGEN3 Evoマシンの開発にも携わったという。西川氏は「2021年から日産のR&DからフォーミュラEのチーフエンジニアとして参画しまして、まさに今シーズンから始まったGEN3 Evoと呼ばれるパワートレーンの開発統括としてパワートレーンをゼロから設計したという立場にいました。そういう意味でいうと、今シーズンどうなるかというのはすごく自分の中でもドキドキしていて、メキシコシティでオリバーが勝ったときは正直テレビを見ながら泣きました。それを見て私の長男が『父ちゃんなんで泣いているの?』みたいな話がありましたけど、それぐらい私の中でも思い入れがあるプロジェクトで、今シーズン好調というのは私個人としてもうれしいです」とあいさつ。

2024年度までチーフパワートレインエンジニアを務めた西川直志氏

 また、2024年の「Tokyo E-Prix」で予選ポールポジション、決勝2位表彰台というすばらしい成績を収めたオリバー・ローランド選手は昨年度の活躍について振り返り、「去年が初めてのTokyo E-Prixは、われわれにとって大きな喜びであり非常に忙しい1週間でした。かなりたくさん走ったのですが簡単ではなかった。ポールポジションを獲得して、最後にエネルギーがちょっと切れていてトラブルもありました。今期に入って(他チームとの差は)僅差です。競争は熾烈なのでわれわれも集中力を絶やさないようにしなくてはならない。去年はすばらしい結果を出すことができたが、今年もっとよくなりたいと言わなければ嘘をついていることになります」と意気込みを示した。

オリバー・ローランド選手

 一方、GEN3 Evoの開発秘話について語った西川氏は、「正直この仕事に携わり始めたときは、やはりモータースポーツと市販車の開発はだいぶ違うので、そこに対してどうやってうまく入っていくかってすごく苦労した部分ではあったんですけども、そこからどんどん仲間も増えていって、それに伴ってパワートレーンをどうやって変えていくかというところのコンセプトから始め、昨シーズンまで使っていたユニットに対してどういったところに手を加えられるかみたいなところを徹底的に考え抜き、ゼロから作り直した完全に違うパワートレーンというのがGEN3 Evoになります。2年前ですかね、オリバーとトマソ(・ヴォルペ監督)とここ(日産グローバル本社)に来たときに、従業員向けのイベントで『これぐらいパワートレーンの効率が変わります』と宣言したんです。数字は言えないのですが、それからことあるごとにオリバーが『その数字までたどり着いたのか』と聞いてきて。実際にその数字までいったので、自信を持って運転してもらえているんじゃないかなと思います。ただ、パワートレーンがよかったとしても、当然当日のセッティングとか戦略とか、チームがポテンシャルをどう引き出すかってところも非常に大事ですし、当然ドライバーがどうやってエネルギーマネジメントしながら速く走れるかっていうところが大事なので、本当に三位一体ですね、開発の成功とポテンシャルを引き出しながらドライバーがきちんとそれを走らせることができていることが今シーズンの好調の秘訣かな」と振り返った。

 また、西川氏は4月から車両開発主幹の立場になったといい、「そういう意味ではどういった技術を量産車に搭載していくのかっていうのを決める立場になりますので、今まで培ってきたフォーミュラEで得られたものをどうやって量産車に採用していくのかっていうところをまさに自分で体現していく立場になりましたので、そういう意味ですごくワクワクしながら今仕事しています」とも語った。

トマソ・ヴォルペ監督

 最後に意気込みを聞かれたオリバー・ローランド選手は、「毎週末レースに勝とうと思って競争心をかき立てています。全般的なターゲットとしてはポールポジションを獲得して首位に立つこと。でも天候もありますし、いろいろな要素をもって影響を受けるわけですが、目標は最初からトップです」と述べた。

 なお、会見後に西川氏に「Tokyo E-Prix」の見どころについて聞いたところ、「ぶっちぎりの日産の勝利です!(笑)。街中で走るサーキットがフォーミュラEということで言うとちょっと減ってきている中で、東京都にこの公道レースを続けていただいているっていうのは私としてはすごいうれしいポイントです。電気自動車のモータースポーツだからできるこの東京大会というのは象徴的でもあるので、この象徴的なコースの中でいい結果を残せればいいなと思ってます」と力強く宣言してくれた。