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藤島知子の「FCR-VITA KYOJOクラス」参戦レポート

第1回:富士スピードウェイに帰ってきました

2025年5月10日 開催
2025年は「VITA-01」で「KYOJO VITA」に参戦

 2025年5月10日〜11日、富士スピードウェイで「KYOJO CUP&INTER PROTO SIRIES ROUND.1」が開催された。2024年までの8年間、Car Watchなどを通じて「KYOJO CUP」の参戦レポートを寄稿させていただいたが、2025年シーズンから「KYOJO CUP」の本家は専用のフォーミュラマシンを使った上位カテゴリーに移行。これまで共に戦ってきた女性ドライバーのうち17名はフォーミュラに挑戦している。

 2024年までの「KYOJO CUP」に参戦してきた私を含めた11名の女性ドライバーは、これまでステアリングを握ってきたマシン「VITA-01」で参戦できる土曜日の「FCR-VITA」レースの「KYOJOクラス」にエントリーしている。

 私は引き続き2024年と同じチームでお世話になる形だが、マシンはメインスポンサーのロゴがOPTIMUSグループへと変更となり、気持ちを新たに今季2戦目からのスタートを切ることになった。

久しぶりに参戦マシンと再開

「FCR-VITA」は、富士スピードウェイが主催するレースシリーズの中でこれまでも開催されてきた人気のカテゴリーで、男女が混走するレース。FCR-VITAの開幕戦はすでに5月に開催されていて、私は仕事の関係で出場することができなかったが、今回のRd.2では全エントリー32台中、11名の女性ドライバーが「KYOJOクラス」で競い合う。

 いつものレースウィークは木曜日からサーキット入りをして、2日間ほどスポーツ走行で調整してからレースに臨んでいたが、今回は木曜日にスーパー耐久の合同テストが行なわれる関係もあって走れず、レース前日の金曜日に2本のみの走行で予選に挑んだ。12月下旬の冬場に行なわれた最終戦以来ステアリングを握っていなかったため、どれくらいのタイムで走れるのかという不安もいっぱい。走れなくても最低限の準備はしておかなければと横浜の本牧にある店でシミュレータートレーニングをして頭の中を整理してから富士スピードウェイへ向かった。

参戦マシンの「VITA-01」はメインスポンサーのロゴがOPTIMUSグループへと変更された

 久しぶりに向き合うマシンはパーツもセットも最終戦のまま変更はないが、冬場に比べて気温は15℃近く上昇している。走り始めはペダルの操作や操舵に無駄があり、気持ちが先走ってロスを招いてしまっている。周回を重ねながら反省点を修正するように心掛けて、本番でやるべきことをイメージしながら走行を終えた。

 久しぶりのレースだけに、できればドライコンディションで走りたかったところだが、当日は天気予報が見事に的中して雨が路面をぬらしていた。現在のマシンの状態がウエットでどんな挙動をみせるのか確かめていない状態だったが、8時には20分間の予選がスタートした。

 おろしたてのニュータイヤを装着しているため、序盤はタイヤとブレーキを温め、グリップが変化していく感触を確かめながらペースアップ。コースインしたてのタイミングは雨が弱まったかのように思えたが、1コーナーを通過し、コカ・コーラコーナーに近づくころには、それまで降り続いていた雨が路面にたまって、黒く不気味に光っている。足をとられてコースアウトする車両が出ていたが、その後、雨量はさらに増していき、走行継続はリスクがあると判断され、わずか数周で赤旗中断する事態になった。

予選はわずか数周で赤旗中断となってしまった

 全てのマシンがピットロードに戻り、リスタートのタイミングをみて再びコースインしていく。放送であと6分と言っていたので、「2周くらいは走れるかな」と思いながらアタックに入ったが、雨で視界の悪い状況でヘアピンを立ち上がり、スピードを上げていこうとしていた矢先、突如300Rのコース上に1台の車両が完全停止しているのが目に飛び込んできて、アクセルを緩めてしまった。リスタート後は計測1周でチェッカーが振られて、あえなく予選は終了。限られた時間で力を出し切れなかったこと、タイミングが悪かったことが重なってタイムは縮まず、決勝は26番グリッドからのスタートが決まった。

決勝グリッドに並ぶマシン
26番グリッドからのスタート

 決勝は10時25分にコースイン。気温は16.5℃に上がってきたが、コース上はまだウエットだ。グリッドに着くと、雨は弱まって傘がいらない状況になっていたため、徐々にコンディションは回復していくのではないかと思っていた。

 フォーメーションラップを終えて、レッドシグナルが一灯ずつ点灯していくタイミングで、エンジン回転を上げ、消灯を認識したのと同時にクラッチをつないだ。すると、周囲にいたマシンよりも早いタイミングで抜きに出ることに成功。コース中央付近のポジションをとりながら、1コーナーへなだれ込んでいく。路面が滑りやすいこともあるし、インからアウトからとわれ先にと折り重なって他のマシンがせめぎあっていく状況の中、注意深く居場所を見つけながら、コカ・コーラコーナー、100Rへと進んでいく。路面はそれほどぬれていなかと思いきやフルウエットコンディション。空は薄暗く、前を走るマシンたちが巻き上げるウォータースクリーンが視界を遮る。100Rでオーバーランする車両。ダンロップコーナーから上りに転じてスープラコーナーにアプローチすると、3台のマシンが絡んだのか、散り散りに停車している。コーナーの立ち上がりで前に出たいとアクセルペダルを深く踏み込むと、ホイールスピンで挙動を乱し、不安定な挙動を招きそうな状況だ。

決勝レースがスタートした

 スピードレンジが高いホームストレートでは、前走車の水しぶきを避けるようにラインを少しだけずらしながら追従して走行。車速は195km/hを超えていく。私の後方に連なっていたマシンがスリップストリームを使いながら私を追い越していく。コカ・コーラコーナーの真ん中でスピンした車両が出ると、各車は各々に避けるラインを探しながら前に進む。13コーナーでは2台の車両が目の前でスピンしたりと、難しい環境で緊張を保ちながら、瞬間的な対処が求められる。

第1コーナーの争い
上位ポジションを争うマシンたち

 6LAPが経過したころ、前方にいる2台のマシンに近づいた。逃げ切ろうとするマシンと、追い抜こうと躍起になって走る後続車両。依然、ウエットコンディションは変わることなく、セクター3で前を走る車両がミスをして挙動を乱した隙にじわじわと距離を縮めて、最終コーナーへ向かっていく。背後につき、スリップストリームを狙ったものの、立ち上がりで離されてしまい、追い抜けないのがもどかしい。3台でせめぎあうまま10LAPを終え、総合21位でチェッカーを受ける結果となった。

決勝レースの走り

「FCR-VITA」レース総合優勝は#225 KTMS VITAの富下季央奈選手、2位に#11 Final Lap Racing ワイルドキャットVITAの金本きれい選手と、「KYOJO CUP」とダブルエントリーで臨んだタフな女性ドライバー2名が表彰台に上った。3位は#777 恵比寿Moty’S制動屋VITAの有岡綾平選手だった。

総合優勝した#225 KTMS VITAの富下季央奈選手
「KYOJOクラス」の表彰台。写真左から、2位の#11 FinalLapRacingワイルドキャットVITA 金本きれい選手、1位の#225 KTMS VITAの富下李央菜選手、3位の#32 中央電材エムクラフトVITAの保井舞選手

 一方で、「KYOJOクラス」においては、私は6位でフィニッシュ。FCR-VITAの次戦は同じく富士スピードウェイで8月16日に開催されるが、雨のレースで得られた経験をさらなる糧として、気持ちを切り替えてチャレンジしていきたいと思う。

フォーミュラカーで戦う「KYOJO CUP」が開幕

開幕戦「KYOJO CUP Rd.1 KYOJO Sprint」、第2戦「KYOJO CUP Rd.1 KYOJO Final」で優勝した#86 Dr.Dry with Team IMPUL KC-MC01の下野璃央選手

 2025年よりフォーミュラカーで戦う「KYOJO CUP」は、これまで、8年間に及んだKYOJO CUPの歩みに続いて、さらなる上位カテゴリーとして第2のステージが用意された形だが、5月10日〜11日に開催された「2025 KYOJO CUP Round1」には20名の女性ドライバーがエントリーした。これまで、VITA-01のマシンで戦ってきた17名の女性ドライバーのほか、フィンランド、中国、タイから参戦するドライバーの姿もある。

 マシンはカーボンコンポジットモノコックに1.4リッターターボエンジン(176HP)と12kWの小さなモーターを搭載した車両で、トランスミッションは6速でパドルシフトを使って操作する。徹底的なイコールコンディションでレースを行なうため、車両は主催者が管理し、レースウィークにおいてチームが触れていいのは、タイヤの内圧とスタビライザーのみとなる。

 2025年の「KYOJO CUP」は、土日に「KYOJO Sprint(10周)」「KYOJO Final(12周)」の2レースを開催することになるが、開幕戦となる「KYOJO CUP Rd.1 KYOJO Sprint」ではこれまでF4などの参戦経験をもつ#86 Dr.Dry with Team IMPUL KC-MC01の下野璃央選手が優勝を飾り、2位はKYOJO CUPでチャンピオンを獲得した経験をもつ#7 Kid’s com KDDP KC-MG01の翁長実希選手。3位はWRCの参戦経験をもつ#4 docomo business ROOKIE KC-MG01の平川真子選手となった。

 第2戦となる「KYOJO CUP Rd.1 KYOJO Final」では、開幕戦で優勝した#86 Dr.Dry with Team IMPUL KC-MC01の下野璃央選手が2勝を挙げ、2位は再び#7 Kid’s com KDDP KC-MG01の翁長実希選手。3位はカートから国内限定Aライセンスを獲得して2024年KYOJO CUPデビューをした最年少の高校生ドライバー#38 OPTIMUS CERUMO・INGING KC-MG01の佐藤こころ選手が表彰台に登った。

 2025年のKYOJO CUPは、Round5まで全10戦のレースが開催される。次戦は「2025 KYOJO CUP Round2」として7月19日〜20日の2日間、富士スピードウェイで開催される。スーパーフォーミュラと併催となるため、開幕戦以上に注目度が高まっていくだろう。今後の女性ドライバーたちの活躍に注目していきたい。