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藤島知子の“女性同士のガチバトル”競争女子「KYOJO CUP」レポート
第23回:色んな気持ちが渦を巻いたレース
2024年8月29日 10:03
- 2024年8月18日 開催
2024年8月18日、富士スピードウェイでKYOJO CUP Rd.4が開催された。今季、全6戦で開催されるレースは早くも折り返し地点を迎えている。前回はスーパーフォーミュラとの併催でRd.2とRd.3が 7月下旬に開催されたが、今週末のパドックを見渡すと、以前からKYOJOの参戦チームを応援してくれているファンに加えて、スーパーフォーミュラのチームウエアを着用している観客を見かけることが増えていることが関係者たちの間で話題になっていた。
女性ドライバーたちの熾烈な戦いを観て、モータースポーツファンのみなさんにKYOJO CUPに注目してくれる人が増えてきているのがうれしい。お盆の週は関東地方に台風が迫っていたこともあり、天候は晴れから曇り、そして雨とコロコロと変わり、路面状況も刻々と変化する中で各マシンは最終調整を行なっていった。
台風が去った後、レース本番を迎える日曜日は小雨の予報が出ていたが、実際には曇りのままで持ちこたえてくれている。太陽は顔を出しておらず、朝8時の気温は27℃。予選のコースインが始まった。フレッシュタイヤで走り出すと、タイヤを温め、グリップの感触を確かめながら周回を重ねていく。3LAP目で2分02秒台に突入するも、トップ勢は00秒台に突入、その後ろに01秒台のマシンが連なる。私はタイヤがグリップを発揮するタイミングでベストタイムを出せず、22番グリッドからスタートとなった。
決勝レースは予選終了後のわずか2時間後にコースインの時間がやってくるスケジュールとなった。コースコンディションは引き続きドライ。重たくなりかけた空は曇りの状態を保っている。少し長めにとられたグリッドウォークで選手紹介が行なわれ、やがて関係者が退去。フォーメーションラップがスタートした。再びグリッドにつき、レッドシグナルが一灯ずつ点灯しはじめると、スタートの瞬間を迎える集中力とともに心拍数が高まっていく。クラッチを繋ぐ瞬間を見極めるために液晶メーターに目を向けると……いつもと違う画面に勝手に切り替わってしまっていて、エンジンの回転数が表示されていない!? 待ったナシの状況ということもありレッドシグナルは消灯し、レースがスタート。私は山勘でクラッチをミートして走り出したが、エンジン回転が低かったようで、ジャンプスタートするほどのトラクションは残念ながら得られていなかった。
走り出したマシンたちは一斉に1コーナーに向かい、「われ先に」と言わんばかりに1台でも前のポジションを捉えようとしている。遅れをとった私は、まだ塊となって走る周囲のマシンのポジションに目を向けながら、インを刺すタイミングを伺って周回を重ねていく。幾重にも重なって走っていたマシンは、やがて、蛇のように1列に連なって走る態勢へと変化しながら、本来のレースペースに車速を高めていく。
序盤では1コーナーで後ろからの追突を受け、派手に挙動を乱してしまったが、どうにか姿勢を立て直して走行を続けていく。そして、5LAP目。これから追い上げていこうと気持ちを奮い立たせながら、スタートで私を抜いたマシンの背中を追う形で追従して走っていたときにトラブルは起こってしまった。
私が追うマシンのさらに前を走っていたマシンがスープラコーナーの立ち上がりでスピン。私の目の前を走っていたドライバーはスピンした車両の挙動の乱れをいち早く察知して避けることに成功したが、さらに後ろにいた私は2台の動きを避けようと咄嗟にステアリングを切るもスピンして停車したマシンを避けきれずに接触してしまった。
車体と身体に明らかにぶつかってしまった衝撃が走る。私のマシンは止まらず走り続ける形でラップを重ね、しばらくの間、単独で走行。しかし、ぶつけてしまった影響でタイムは落ち、ペースが上がらない。翌周もう一度そのコーナーを通過するとき、ぶつかってしまった車両が動けなくなっている姿を目にして、苦しい気持ちになった。
その後、1台のマシンが追い上げる形で数周をかけて迫り、ペースが上がらない私のマシンを抜いた。やがて、厳しい状況で長く感じたレースはファイナルラップに突入。目の前のマシンはまだ手を伸ばせば届きそうな距離にいる。周回を重ねてタイヤのグリップが厳しくなってきている状況の中、互いに最後の力を振り絞って走っていたとき、ダンロップコーナーで目の前を走るマシンが姿勢を崩してスピンしてしまった。ブレーキ後のタイミングで右コーナーに差し掛かっていたため、さらにハンドルを切って避けるラインを辿ったが、左のリヤの一部をそのマシンに接触させてしまった。
あまりに色々ありすぎた今回のレース。結果的にはスタートした時と同じ22位でチェッカーを迎えたが、私が接触してしまったのは、若手としてKUOJO CUPにチャレンジして来てくれたドライバーだっただけに、なおさら複雑な気持ちでレースを終えることになってしまった。際どい状況をくぐり抜け、順位を上げるために戦い抜くことがレース。まだ色んな気持ちが渦を巻いているが、気持ちを整理して次戦に臨みたいと思っている。
Rd.4で優勝したのは、ポールポジションからスタートした#17 Team M 岡部自動車D.D.R VITAの斎藤愛未選手で、トップ勢の激しいせめぎあいの末に表彰台のてっぺんを勝ち取った。Rd.2、Rd.3から連勝という快進撃をみせており、多くのファンの注目を集めた。
次戦は2024年10月6日、同じく富士スピードウェイを舞台にRd.5が開催される予定。シリーズ後半に向けて、さらに熾烈な戦いは熱を帯びていきそうだ。