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藤島知子の“女性同士のガチバトル”競争女子「KYOJO CUP」レポート
第18回:2023年シーズン第2戦、体力も根気も必要な12LAPのレース
2023年8月2日 14:00
- 2023年7月23日 開催
2023年7月23日、富士スピードウェイでKYOJO CUP第2戦が開催された。レースウィークは梅雨明けが宣言され、灼熱の陽射しが照りつける日々が続く状況といえたが、決勝当日も開幕戦の荒天と打って変わって真夏の晴天に。マシン的にも体力的にも厳しい中で行われるタフなレースになりそうだ。
真夏のレースで最大の関心事といえば、タイヤのフィーリング。今季のVITA-01専用タイヤはコンパウンドが変わってグリップが高まっているが、時間の経過とともにその感触がどう変わるのか? 5月の開幕戦以来、テストに来られなかったこともあり、レースウィークで周回を重ねて確かめる形になった。
金曜日の特別スポーツ走行枠では、土曜に開催される「MEC 120」の2時間耐久レースで一緒に走る見崎清志さんとMEC用の枠とKYOJO CUPの走行枠をマシンが休む間もなく交互に走行。タイヤは連続走行で摩耗が進み、熱が上がると車体の姿勢も崩しやすくなる。粗っぽい操作はさらなる挙動の乱れを招いてしまうため、ステアリングやペダルの操作は丁寧に行なうことを心掛け、イメージした走りに近づけていく。タイムが縮まないからといってムキになってブレーキポイントを遅らせてしまうと、今度は車速が落としきらないぶん、ブレーキリリースのタイミングが遅れて曲がれないという悪循環。失敗したら、次の周に修正して走ることを繰りかえす。その後、土曜日の耐久でレースモードに気持ちを切り替えて、日曜日のKYOJO CUP本番日を迎えた。
今回のKYOJO CUPのトピックはレーシングドライバーの黒澤琢弥さんがアドバイザーの役割を務めることになったこと。レースはオフィシャルが判断に戸惑う接触などが起こりうるが、経験豊富なレーシングドライバーの視点から、レースが円滑に行なわれるようにフォローしていくそうだ。
コースコンディションはドライ。8時30分から20分間で行なわれる予選がスタートした。2分前になると、各車がピットロードになだれ込み、コースインのタイミングを待つ。朝モヤが解消しかけている朝の気温は25℃。気温はじわじわと上昇し始めていたが、コースインしたてのニュータイヤのグリップ感はわるくない。序盤でタイムが出ると予想して周回を重ね、2分01秒台を出し、その後、8LAP目で13番手のタイムとなる2分01秒622。ポールポジションは今季、5年ぶりにKYOJO CUPに戻ってきた#44 RSS vitaを操る平川真子選手で1分59秒777をマークした。私自身はあと0.2秒ほど速ければ10番手も見えてくるポジションにいるが、そう簡単にいかないところが難しいところであり、今季のKYOJOドライバー達の壁が厚いと感じる部分。ともあれ、挑戦し甲斐のあるレースで揉まれれば皆が育つ。運転技量、精神力、戦い方など、持ちうる力を総合的に試される環境にいるのかと思うとワクワクしてきた。
KYOJOドライバーのサイン会
決勝レースまでの間の時間を使い、パドックではKYOJOドライバーのサイン会が開催された。太陽がてっぺんに近い陽射しは周囲をジリジリと照らし、帽子を被って対応する形になったが、そうした暑さにも負けず、多くのファンがオフィシャルプログラムや色紙を手にして長い列をなしている。レースとなると、ドライバーはピットの中でメカニックとやりとりしていたり、オンボード映像を確認して過ごすことも多いので、ドライバーを目にする機会が少なかったことを思えば、1人ひとりのドライバーを知ってもらうのに良い機会になったと思う。
決勝コースインの時間がやってきた
そして、決勝コースインの時間がやってきた。ヘルメットを被り、ハンスを固定。グローブを装着してマシンに乗り込む。気温30℃、グリッドは路面温度が60℃近い状況なだけに、チームのスタッフがペットボトルに長い管を取り付け、スタート直前まで水分を補給できるようにしてくれた。12LAPで行なわれるレースは体力も根気も必要になる。
スタート3分前がアナウンスされると、グリッドに応援しにきてくれた人たちが去り、コース上はマシンとドライバーのみで静まりかえる。1分前ボードの提示でエンジン始動。グリーンフラッグでフォーメーションラップが開始された。1周して全車がグリッドに着くと、レッドシグナルが全灯し、消灯。レースがスタートした。
最近、スタートは失敗続きだったが、今回はまずまずの状況で発進。スタート直後に1台をパスして、1コーナーにインから進入して立ち上がったところ、外側に併走してくるマシンがいたので、アウトに膨らんで接触しないように舵を切り増したら、その隙に後続車に抜かれてしまった。集団は数珠繋ぎでヘアピンから300R、そのままダンロップコーナーへ。上りが続くセクター3は走行ラインがクロスして接触しやすい箇所といえるが、前方の群れに気を取られていると、今度は反対側の後方から隙を狙って入り込もうとするマシンがいる。最終の立ち上がりで前車にビタビタについて立ち上がり、スリップストリームについたが、さらに私の後続にいたマシンがスリップを使って追い越していこうとしている。競り合うことこそレースの醍醐味ではあるが、イチかバチかで後方の死角から刺してくるマシンは私自身のラインを走り続けたら、接触するのではないかというくらい、スレスレのところを攻めてくることもある。接触したら共倒れのリスクがあるので、譲りたくない気持ちはあるが、ここは踏みとどまって接触を避け、後でチャンスを狙うことにした。
2LAP目には抜かれたマシンにダンロップコーナーで追いついたが、こちらのペースの方が速いと思う一方で、抜かすことができない。その後、ホームストレートでスリップについて並ぶも、まだ抜ききれないのがもどかしい。やきもきしそうな気持ちを封じ込め、再びチャンスを窺う。すると、300R先でブレーキングミスをしたマシンの前に出ることができた。「冷静に、着実に。」自分に言い聞かせるようにしてさらに前へ。スリップについて、もう1台パスしたものの、さらに別のマシンが私の背後につき、3ワイドの状態から1コーナーの立ち上がりで抜き去っていった。離されまいとしつこくスリップについていったんはパスしたが、相手も負けじと、抜きつ抜かれつを繰り返している状態。
すると、上位からスタートしたマシンが接触により順位を落としていたが、ラップタイムの差があって怒濤の追い上げであっさりと抜かれてしまった。その後、前方の集団とは距離が離れたが、自分のラインを崩さずに淡々と走り続けていると、4台が絡んで走る群れに追いついた。まだチャンスはある。前方で競い合うマシンたちの動きを見ていると、少しオーバーラン気味になる様子も見られたりと、酷暑で周回を重ねたことでタイヤがキツくなってきているらしい。しかし、ここからが堪えどころ。1コーナーのブレーキがロス無くまとまった時、立ち上がりで再び集団に近づいた。順位が目まぐるしく入れ替わり、もう自分が何位を走っているのかすら分からない状況だが、とにかく1台でも前へ。ブロックラインをとる前走車は隙を与えないが、こちらの判断が遅れてモタつくと、遅いペースに吞まれて前に出られないのがもどかしい。
でも、まだチャンスはあると信じて相手のミスを待ち、ファイナルラップの最終コーナー立ち上がりでスリップにつき並んだ。私のマシンの車速が伸びていく。コントロールブリッヂを潜る瞬間は鼻先の差。どうなったのか分からなかったが、結果的にはあと0.052秒足らず、あと一歩の力不足で抜くことができなかった。
トップ集団の戦いは1コーナーを通過するごとに順位が入れ替わったりするせめぎ合いで沸かせた展開となり、最終的には3番グリッドからスタートした#17 Team M VITAの三浦愛選手が優勝を勝ち取った。2位は2番手からスタートした#114 RSS VITAの翁長実希選手。ポールポジションの#44 RSS vitaの平川真子選手が3位となった。
私としては13番手からスタートし、15位でチェッカーを受けることになった今回のレース。順位は下がったが、その内容から戦い方の課題が見えたレースとなった。次戦は9月24日に富士スピードウェイで開催される。課題を整理して第3戦に臨みたいと思う。