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藤島知子の“女性同士のガチバトル”競争女子「KYOJO CUP」レポート

第24回:ゴール直前で抜き、0.019秒差でチェッカーを受ける

2024年10月6日 開催

KYOJO CUPの2024年シリーズ第5戦が開催されました

練習走行は雨に見舞われるも、決勝に向けて天候は回復

 2024年10月6日、富士スピードウェイで「KYOJO CUP第5戦」が開催された。

 今季は全6戦で女性ドライバーたちのバトルが繰り広げられるKYOJO CUP。前回のレースは8月中旬という灼熱の時期に行なわれたが、今回は10月上旬のレースウィークとあって、気温はそれよりも10℃近く下がってきている状態。

KYOJO CUPはダンロップタイヤのワンメイクレースで、毎年10月は女性の乳がんの早期発見・早期治療を推進する「ピンクリボン運動」の強化月間となり、ダンロップはその活動に賛同する意思表示として、ダンロップのロゴをピンクにしている

 しかし、タイヤやドライバーの負荷が減るかと思いきや、日本列島に秋雨前線が近づいている影響で、木曜日と金曜日の練習走行はあいにくの雨に見舞われた。木曜日の最後の走行枠では、走っている途中で一気に雨量が増すなか、300R付近に流れる川で足をすくわれて派手にスピン。一瞬ヒヤリとしたが、接触はせず、難を逃れた。レースは天候を選ばず、与えられた環境下で競い合うスポーツだが、日曜日のレース本番は曇りの予報。運転感覚を取り戻しながら調整に入った。

2024年シーズンのKYOJO CUPは、総勢34人がエントリー
KYOJO CUP第5戦に参戦する選手は30名。パートを分けて選手紹介が行なわれた

 また、この週末の富士スピードウェイではさまざまな試みが行なわれていて、展示車用のピットには英国の自動車メーカーであるジャガーのフォーミュラE参戦車両「JAGUAR I-TYPE 6」のモックアップが展示され、その向かい側には2025年に開催予定のKYOJO FORMULAのマシンが並べられていた。

 このピットではコスプレ愛好家たちの撮影会ツアーも行なわれ、臨場感満点のサーキットの施設やマシンを背景にして、特別な環境での撮影を楽しんでいるようだった。

ジャガーのフォーミュラE参戦車両「JAGUAR I-TYPE 6」のモックアップ
JAGUAR I-TYPE 6のモックアップの向かいにあるのは2025年に開催予定の「KYOJO FORMULA」のマシン

 今季のKYOJO CUPは4号車グッドスマイル初音ミクVITAの岡本悠希選手が、初音ミクのカラーリングが施されたマシンで参戦していて、8月には秋葉原でマシンの展示が行なわれていた。クルマやレースをテーマとしたアニメが世界中で人気を得ていることを考えれば、レースの世界とサブカルチャーの親和性は抜群。

 最近ではシミュレーターレーサーがリアルなレースにデビューするケースが取り沙汰されていたりするが、バーチャルとリアルの世界が交錯し、いろんな角度でレースが行なわれる場を楽しんでもらうことが、モータースポーツファンの輪を拡げるヒントにつながっていくのではないかと思う。

パドックにはスーパーカーや旧車が並んだ
同乗試乗会も実施された
クルマ好きでにぎわうパドック

 パドックでは同じ敷地内にある富士モータースポーツミュージアムから、レース史を彩ったマシンが持ち出され、トヨタ2000GTのレプリカやアメリカのレースで活躍したIMSA 300X GTS-1など、来場者たちはレジェンドドライバーの逸話に耳を傾けたり、間近で車両に触れたりすることで、ちょっとした驚きを感じているような表情を浮かべている人たちもいた。

究極のロードゴーイングスポーツカーを目指し、宇都宮にあるイケヤフォーミュラが制作した「IF-02RDS」は、2013年の東京モーターショーにも展示されていた1台
世界初のシームレストランスミッションを搭載。完全合法仕様でナンバープレートを取得して、公道走行も可能
トヨタ「2000GT 谷田部スピードトライアル仕様(1966年)」
トヨタ「2000GT 谷田部スピードトライアル仕様(1966年)」
1951年のトヨペット・レーサー(レプリカ)
幻のレースカー「トヨペット・レーサー」のレプリカ

ハーフウェット路面に苦しめられた予選

 決勝当日の日曜日、天候は曇りになったものの、昨夜遅くまで雨が降った影響で路面が乾ききらない状況で8時20分から20分間の予選がスタートした。皮むきしていないフレッシュタイヤを装着して走り出したこともあり、コースイン後はあちこちでスピンしている車両が出ていたが、タイヤが温まり、路面が乾いていく終盤にタイムアップすることを想定しながらペースアップを図る。

8時20分から20分間の予選がスタート

 練習で走って摩耗したタイヤとグリップが大きく異なるニュータイヤ。路面はところどころ濡れているし、セクター3で逆バンクのような路面を駆け上がっていく13コーナーの路面は滑りやすく、それでもアクセルを開けていかなきゃいけない状況に痺れながら走っていったりと、最善を尽くしたい気持ちと裏腹に、アジャストするのが難しい。

 また、この周のペースはいいかもと思いきや、イエローフラッグでペースを落とさざるを得ず、結果的にタイムアップに結び付かなかったりする。タイミングを失って、力さえ及ばず、決勝は24番グリッドからスタートすることになった。

路面状況の変化に素早くアジャストするのが難しい

決勝レースに向けてコースイン

 予選のあとも時折雨が降っていたが、決勝を前にして気温は23℃まで上がり、日差しが照りつけて蒸し暑い状況。レコードラインはドライコンディションに変わっていった。

各車コースインを開始
決勝前に気温は23℃まで上がり、天候も回復

「せめて、スタートは決めたい」と意気込むも、トラクションがうまくかからず3台に抜かれてしまった。ラインを外すとまだ滑りそうな場所があったので、オープニングラップは前に出られるタイミングを伺いながら集団に紛れて走行。

いよいよ決勝レースがスタート

 2LAP目に差し掛かったとき、13コーナーでインを刺そうとしたが、前方車両が寄せてきたので、ここはいったん引いて、勝負は持ち越し、ホームストレートで1台をパス。さらに前を連なって走る集団との距離が開いてしまっていたので、コーナー手前のブレーキングを繰りかえしながら、少しずつ距離を縮めるものの、ストレートではスリップストリームを使い合いながら走っている集団から離されてしまう。

マシンはワンメイクなので、簡単に差は縮められない

 それでもまだチャンスはやってくるはずだとプッシュしていくと、ダンロップコーナーの進入で、目の前でせめぎ合っている2台のマシンに追いついた。3台のマシンが接近した状況で1コーナーを立ち上がっていく。前方車両がブロックするなか、ラインを外してアクセルを踏みこみ、勢いをつけてスープラコーナーでパスすることに成功。ただ、いったん抜いても、一瞬のミスで抜かれてしまうこともあるため、挙動を乱さないように細心の注意を払いながら、後ろを意識することよりも、前の車両に目を向けて走る。

淡々とプッシュして前を走るマシンを追う

 7周目に差し掛かると、100Rで前方車両に近づいた。1コーナー手前で前に出られそうになったものの、スリップストリームが効き始めて前に出るタイミングがわるく、コカ・コーラコーナーでイン側のポジションをとられてしまったが、ヘアピンに差し掛かると、2台で絡み、ペースを落とした車両を横目にパス。その後、競り合っていたマシンと離れてしまったが、8周目のストレートで抜くことができた。

前方車両に近づいたらバトルの開始
一瞬のミスで抜かれてしまうので、抜いても安心はできない

 ところが、10周目のストレートで後続車両が私のスリップについて前に出た。バトルは続いていたが、ファイナルラップで巻き返しを狙うべく、接近しながら走行して、最後はゴール直前で抜くことに成功。0.019秒差で暫定20位になった。

 しかし、レース後の車検では車両規定違反が発覚。1位と2位のマシンが失格となり、正式結果では私の順位は18位に繰り上がった。熾烈な戦いが繰り広げられるレースの世界はときとして違反が発覚することがあるが、純粋に腕とチームの力で勝負できる環境があってこそ、健全なレースが成立するというもの。こうした形で違反が判明したのは残念なことだが、ドライバーの1人としては、フェアに戦える環境づくりを行なってほしいと思う。

第5戦の結果は18位となった

 正式結果によると、優勝したのは114号車 Car Beauty Pro RSS VITAの翁長実希選手、2位は高校生ドライバーの225号車 KTMS VITAの富下季央奈選手、3位は44号車 ROOKIE Racing RSS VITAの平川真子選手が獲得した。

優勝した114号車 Car Beauty Pro RSS VITAの翁長実希選手
2位の225号車 KTMS VITAの富下季央奈選手
3位の44号車 ROOKIE Racing RSS VITAの平川真子選手

 残すは12月22日に行なわれる最終戦。今年の女王は最後の1戦で決定することになりそうだ。

2024年シーズンも残り1戦。応援にかけつけてくれる人たちの声援が、走るパワーにつながる