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岐阜県恵那市と兼松によるサステナブル燃料の地産地消に向けた取り組みがスタート

2025年6月14日 開催
2024年のラリージャパンの舞台になった岐阜県恵那市で「サステナブル燃料を活用したまちづくり連携に関する協定」の締結式が開催された

 2025年11月6日〜11月9日に開催される「フォーラムエイト・ラリージャパン2025」では岐阜県恵那市もその舞台となる。そうしたことから恵那市では「モータースポーツを生かしたクルマ文化にやさしいまちづくりを目指す」という目標を掲げている。

 そんな恵那市ではクルマ社会においての大事な課題であるCO2削減を遂行していくため、総合商社である兼松と「サステナブル燃料を活用したまちづくり連携に関する協定」を締結。6月14日に締結式を開催した。

「サステナブル燃料を活用したまちづくり連携に関する協定」の協定署名式出席者
締結式の会場は恵那市にある恵那笠置山モーターパーク
協定署名式は午前中に開催され、午後からは一般市民を対象としたサステナブル燃料を活用したイベント「Ena Sustainable Mobility Day」が開催された
Ena Sustainable Mobility Dayではサステナブル燃料を入れた競技車の同乗試乗やサステナブル燃料を入れた恵那市公用車での公道走行体験乗車も行われた
恵那笠置山モーターパークは地元住民の理解により使用できているモータースポーツフィールド。ジムカーナやオートテストなどが開催されている

「サステナブル燃料を活用したまちづくり連携に関する協定」とは、兼松と恵那市が連携して恵那市における2050年ゼロカーボンシティの実現に向けたサステナブル燃料の導入や燃料の地産地消、地域活性化や市民生活の向上を図るとともに、まちづくりの推進に寄与することを目的としたものだ。

連結協定締結式は恵那市市長の小坂喬峰氏(左)と兼松の執行役員 蒔田重信氏(右)の双方が協定書へ署名しあった
署名後の記念撮影

 協定書への署名後、兼松の執行役員 蒔田重信氏は「新しいエネルギーの対応は脱炭素を進めていくうえでの1丁目1番地ということで、弊社が開発を進める『P1フューエル』というサステナブル燃料は、われわれの日常を支えているガソリンの代替となるよう仕上げることができました。これからも脱炭素社会の実現に向けて尽力してまいりたいと思います」とあいさつをした。

あいさつに立った兼松の蒔田氏。2024年のラリージャパンでWRカーに給油された燃料が兼松が開発をしている「P1フューエル」だった

 続けて恵那市長の小坂喬峰氏は、恵那市にとってクルマは大事なライフラインそのものであるだけに、それを持続可能なものにしていくために恵那市としては何ができるかと考えたところ、自動車本体のことではなく環境や燃料などであれば手伝いができると考えたことが今回の協定を結んだ理由と説明。

 そしてサステナブル燃料を国内で製造できる未来に向けて、恵那市がひとつのモデルとして取り組んでいくことは「日本の国力を上げ、それぞれの地域の活性化にも寄与していくことと思っている」と語った。

こちらは小坂市長。恵那市の立場からクルマ社会の未来を持続可能なものにしていくために、サステナブル燃料を活用したまちづくりを進めていくとあいさつした

P1フューエルについて

 協定署名式の後は兼松の担当者よりサステナブル燃料についての説明があった。

 現在主流である化石燃料は数千万年から数億年単位で吸収、固定された炭素をサプライチェーンの中で放出してしまうもので、ここが環境問題になっている。

 そこで注目を浴びているのがサステナブル燃料。兼松としては原料に植物など地域ごとの原料を使用することで、吸収したものが排出されるまでの炭素サイクルを短くすることで、近い世代の中で大気中の炭素を増やさないことを考えているという。もうひとつ兼松としてのサステナブル燃料の定義としては「地産地消」の強固なサプライチェーンを作ること。原料の調達や製造の部分を可能な限り地産地消の形に持っていくことが重要なポイントと捉えている。こうした事柄を恵那市において進めていくということだ。

兼松では「鉄鋼、素材、プラント」「電子、デバイス、ICTソリューション」「食品」「車両、航空」という4つの事業分野に取り組んでいて、今回のエネルギー部門は「鉄鋼、素材、プラント」が担当している
現在主流である化石燃料は数千万年から数億年単位で吸収、固定された炭素をサプライチェーンの中で放出してしまうもので、ここが環境問題になっている
地域ごとの原料を活用することや地域ごとでの小規模の製造を行うことが兼松が進めるサステナブル燃料のポイント

 さて、兼松が製造するP1フューエルだが、これは、非化石の原料を使用したもので、二酸化炭素排出量を大幅に削減できるものである。数値にすると、従来のガソリンと比べると、約80%の二酸化炭素の排出量削減となるとのことだ。

 燃料の特性は現状のガソリンと同等にしてあるのでP1フューエルを給油するにあたって燃料タンクや補器類、エンジン、そしてガソリンスタンドの給油設備に一切手を加えることなく使用することが可能になっている。そしてラリージャパンでの使用をはじめとして、世界中のさまざまな環境下での使用実績を持っているものである。

 モータースポーツでの使用事例があると競技用などのイメージを持ったりするが、P1フューエルが目指しているところは、脱炭素と地産地消を両立させることであり、この取り組みで製造された燃料は市民の生活から産業など幅広く生かしていくものだ。

 最近はサステナブル燃料という言葉を聞く機会が増えたが、それらの多くは非化石の原料を使った新しい燃料であるということだけで製造について具体的に触れているものはまだ少ない。それに対してP1フューエルはこれまでの燃料を語るうえで出てくることがなかった「燃料の地産地消」というクルマ社会にとっての新しい方向性を示しているだけに、これから始まる恵那市との協業については、ぜひ注目していきたいものだ。

P1フューエルは燃料タンクからエンジンに至るすべてにおいて従来のガソリン仕様のままで使えるドロップイン燃料となっているのが大きな特徴
「燃料の地産地消」というクルマ社会にとっての新しい方向性を示す取り組みはとても興味深いものだ
会場にはP1フューエルが持ち込まれ、同乗試乗用の車両に蒔田氏が給油した(車両は燃料タンクからガソリンを完全に抜いている)
この日、走行した車両はすべてP1フューエルで動いている。ドライバーのコメントも通常のガソリンとの差は感じないという

モータースポーツ振興議員連盟 会長の古屋圭司氏のあいさつ

衆議院議員 自由民主党の古屋圭司氏が来賓として出席。古屋氏は自由民主党内にて「内年期間活用のための次世代燃料推進する議員連盟 会長」「モータースポーツ振興議員連盟 会長」「真の地産地消・地域共生型エネルギーシステムを構築する議員連盟 会長」を務めている

 サステナブル燃料を活用したまちづくり連携協定締結式に来賓として招かれていた衆議院議員 自由民主党の古屋氏はモータースポーツ議員連盟の会長を務める方で、ご自身も若い頃からモータースポーツに参加していたという。そして2022年には富士スピードウェイで開催されたK4GPに国会議員連盟チームでドライバーとして参加している。

 少し前の世界ではEVやクリーンディーゼルなどがクルマにおいて次の世代を担うような風潮もあったが、古屋氏はこのことについて「変わりましたよね、完全に」とコメントした。そして「2035年に新車販売で電動車100%(乗用車)にするという目標があります。この電動車とは電気自動車だけでなく、内燃機関を積んだハイブリッド車も含まれているので、われわれは内燃機関を活用した究極のクリーン自動車を世界に売っていくことを目指すのです」と語った。

 そして「そのためにはこのサステナブル燃料をぜひ成功させましょう。これによって日本の強みである内燃機関を生かしていきましょう。日本が長い時間をかけて育ててきた内燃機関の技術はとても大事なものであり、その業界は日本の産業を支えるものです。そしてそのためにもサステナブル燃料の地産地消を進め、内燃機関のクリーンエネルギーというものをしっかりと確立して、世界に発信していくということについてお手伝いをさせていただければと思います。また、同時に恵那市をモータースポーツのメッカにすることも進めていきたいと思います」と結んだ。

地産地消する内燃機関のクリーンエネルギーという構造を確立させて、それを世界に発信していくこの事業を前進させていくため、経済産業省、環境省、県、として恵那市や関係者と連携をしていくことが重要と語った
経済産業省 製造産業局 自動車課 企画官(自動車担当)(併)自動車戦略企画室長の田邉国治氏もあいさつに立った
経済産業省 資源エネルギー庁 資源・燃料部 燃料供給基盤整備課長 永井岳彦氏もあいさつをした