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マツダ、国内ビジネスを改革 より選ばれ続けるブランドになり国内販売20万台達成を目指す
2025年6月20日 11:13
- 2025年6月19日 発表
マツダは6月19日、日本市場におけるビジネス基盤の強化と再成長を図るための「国内ビジネス構造改革の方針」に関する説明会を実施した。
この改革では「ブランド価値経営を軸にお客さまに選ばれ続けるブランドを目指し、改革を加速」という大きなテーマを掲げていて、その上で「ブランド育成に向けた成長投資」「優先地域の特定(都市圈戦略)」「店舗体験の向上に向けた現場支援の徹底」といった3つの柱を設定している。
これらの取り組みを通じて、マツダがより多くのユーザーに選ばれ続けるブランドになることで、国内販売20万台という目標を早期に実現できるビジネス基盤の構築を図るという。
国内ビジネスの成長に向けた事業構造改革について
取り組みの説明を担当したマツダ 国内営業本部 三浦忠本部長は、1991年にマツダへ入社後、一貫してグローバルの販売マーケティング畑を歩み、海外リージョンでの12年を含む「現場」にてビジネス戦略とセールスオペレーションの両方で経験を積んできた人物。
そしてどの市場でも重視していたのが、“ブランドを大事な経営資源の1つと位置づけ、ブランド価値によって利益を生むビジネス”への転換である。
国内ビジネスが抱える課題について三浦氏は、過去20年の国内市場を振り返りつつ解説。マツダは2011年までの期間、1台でも多く販売するためなら値引きをしても構わないといった販売スタイルを続けていたが、それによって「マツダ=値引き」のイメージがユーザーに定着してしまったという。
そのことによりマツダ車の残価は落ち込み、ユーザーが購入したクルマの資産価値を毀損するという状況が続いてしまった。マツダとしてはユーザー視点でこの時代を見直すと大いに反省する必要があるという。
こうした価格訴求の時代を経て、次の時代となったのが2012年~2018年の「商品指導の成長期」というもの。
2012年から市場に投入された初代「CX-5」を契機に、マツダは商品主導の成長期を迎えることになった。その結果、当時台数を伸ばし始めたハイブリッド車に対して「クリーンディーゼル」や、「スカイアクティブ技術」といったマツダの独自価値を作り上げて訴求することで、これまでよりも多くのユーザーがマツダ車を選ぶようになり、販売台数が大きく伸びた時期となった。
この時期は商品とブランド体験の両方で、独自のブランド価値をユーザーに届けることを目指し、商品領域ではもの作り革新、営業領域では繋がり革新というオペレーションに取り組み、その両輪でユーザーに選べる選ばれるブランドとして成長させてきたと分析している。
しかし、実際のところビジネス成長の観点では取り組みが十分ではなかったようで、既存ユーザーの代替え需要が向上するなどの成長は見られたが、トータルでの販売台数を伸ばすことにつながらなかった。
その原因として挙げたのが、「当時のマツダでは全国一律、全国共通の戦略を展開していたため、地域ごとに行なうべきだった戦略が欠如していたこと。新規ユーザへのアプローチが不足していたこと。店舗へのブランド浸透を図る取り組みがなかったことなど。そうしたことを含め、いろいろなものが現場任せになってしまい、メーカーとして適切な支援をできていなかった」と三浦氏は振り返る。
これらを課題点として整理して、国内事業立て直しの方向性と戦略が策定された。ここで三浦氏が基本方針としてあげたのが「ブランド価値経営」を基軸に据えることだった。
その内容は、マツダ車ユーザーや取り引き先、株主、従業員とその家族、地域の住民とマツダに関わるすべての人が誇りを持てるマツダブランドにしたうえで、さらに多くのユーザーに選ばれるブランドへと進化しながら成長するビジネスへの転換を目指すということだ。
販売店の再編を含めたブランド価値経営について
この取り組みを進めるにあたりマツダは、ユーザーをすべての中心に置き、ユーザーのことを考えて行動する事業に再設計していくのだが、そのための具体的な方法は以下のものとした。
まずユーザーとマツダとの直接接点である店舗の現場が、ユーザーケアに全力で当たれる仕組みや環境にしていくために、メーカーとして徹底的な現場支援を行なうこと。そしてもう1つはブランド価値経営というもので、これはアメリカ市場での成功エッセンスをベースにした取り組みを日本市場に取り入れるもの。
アメリカ市場では2016年からブランド価値経営に基づく店舗再編や、ブランドの強化によって成長を果たしていた。アメリカでの店舗販売網再構築では、マツダのブランド価値経営を受けれるユーザーが多くいる重点39市場に絞り込み、新世代店舗に積極的に投資した。そしてそこでの顧客体験を大幅に改善すると同時に、店舗あたりの販売を劇的に改善したという。
こうした的を絞った戦略は、自動車メーカーのようなビックプレイヤーとしては変わった内容ではあるが、マツダとしては選択と集中、そして効率的な投資を念頭に考えたうえでの大胆な取り組みとしている。
この取り組みでは、重点39市場への絞り込みと、300店の重点店舗には年間1000台の販売を目標とし新世代店舗に投資。同時にマーケティングリソースもこの市場で優先的に投資を行なった。
こうした展開をしていく上でポイントになったのが、販売店がブランド価値経営を受け入れるかどうかであり、マツダはその点を見ながら販売店をはっきりと選んでいった。同時に地域戦略の考え方として、ブランド価値を利用するユーザーが多いかどうかという部分も重視。
アメリカで行なった店舗の再構築は、このようにブランド価値経営を受け入れてくれるユーザーに対して効率的にアプローチできるようにしたものであり、結果としてユーザーには高い満足感を得てもらい、対価として販売数改善というビジネス成果につなげていった。これがアメリカでの新世代店舗の実例となっている。
さて、日本の市場に話を戻すと、今後マツダはブランド育成のための成長投資を積極的に行なっていくという。その一環としては今まで全国一律、全国共通の戦略としていたところを優先地域を決めた「特定都市圏戦略」としてそこに選択と集中で投資を実施。
そのうえで販売現場への支援を強化し、販売会社とマツダが一体となって、お客さま販売会社とマツダが一体となってユーザー体験の改善に取り組み、ビジネスを設計、再設計をしていくとのこと。
つぎは方向性や戦略に基づく計画が語られた。柱となるのは「ブランド育成に向けた成長投資」「優先地域の特定 都市圏戦略」「店舗体験の向上に向けた現場支援の徹底」という3つ。そしてそれらの鍵となるのが4つの重点施策。それは販売再構築、マツダブランドにフォーカスしたマーケティング投資、店舗へのブランド価値の浸透の仕組みやそのための体制の整備、そしてバックヤードの機能効率化を担う新会社を設立することだ。
日本では今後、人口減少に伴い日本全体で自動車需要は減少していくと推測されるが、都市圏では維持となる予想。
その結果、全国に対する都市圏の需要が相対的に増加すると見込んでいることから、日本でもアメリカで進めてきた重点エリアの策定と集中投資の考え方をもとに、都市圏で新世代店舗に集中的に投資していくとのこととしている。実はマツダはすでに首都圏、東京、神奈川で店舗投資を加速していて、さらに、ここ4、5年の間に店舗投資を加速させていくという。
マーケティング戦略についても大きく舵を切る。これまでは個別のクルマの機能や技術について伝えるメッセージを送っていたが、今後はマツダブランドに焦点を当てたコミュニケーションとしていく。これによってマツダ車のユーザーはもちろん、マツダ車に乗ったことがない新規ユーザーに対してのアプローチを強化することになる。
その一環となるのが、2025年2月にオープンした「MAZDA TRANS AOYAMA」だ。この施設はマツブランド発信拠点として東京の南青山に設立し、マツダ車ユーザーだけでなく、まだマツダに触れたことのない人も多く来場している。
オープン後の来場想定数は7500人だったが、実際には1万人以上の来場があり、そのうちの半数がマツダ車オーナーではない人だったそうだ。また、マツダ車ユーザーの8割は男性客であるのに対し、マツダ車ユーザーではない一般来場の57%は女性というデータも上がってきた。このことから、これまで設定が持てていなかったユーザーにも、マツダの世界観を感じてもらったと分析している。
今後の施策としては、今期の前半は車両購入検討層に向けて、マツダSUVの検討可能性を高める商品の機能価値の訴求を実施。そして後半では潜在顧客層に対してマツダブランドファンの裾野を広げるために、マツダブランドを感情的な価値とともに訴求していく計画となっている。
つぎに上期に実施するSUVシリーズのマーケティングキャンペーンについて。これは「技術って愛だ」というキャッチコピーを用いて多くの人にマツダSUVのラインナップを知ってもらい、興味を持ってもらうことを目的とした内容。具体的な内容としては、SUVの購入を検討している人に対して、マツダならどのような技術やアプローチできるかをユーザー視点で価値を分かりやすく伝えていく内容という。
店舗についてもブランド価値浸透のための体制構想がある。例えば販売領域でそれまで販売プロセスにおいて時間がかかっていたものを、短い時間で済ませることによりユーザーに手間をかけないものとしていくことで、来店者に満足してもらえるブランド体験のあり方としていく。
こうした対応を確実に店舗に浸透させる仕組みとしては、教育・認定制度を刷新して、現場を支援する体制を導入するとのこと。
そして最後は販売店舗の管理、サポート業務を集約して行なう新しい会社の設立。これにより店舗はカスタマーケアに集中できると同時にグループ全体で固定費の削減にも貢献できるものとなる。すでに今年1月に立ち上がり、4月から稼働している。
三浦氏は最後に、「現場が主役であり、店舗の皆さんがお客さまとコミニケーションを取り、顧客体験の向上に集中できるようにしていくことに努めて参ります。これまで紹介をした重点施策の大まかなスケジュールについては2025年~2027年の3年間で着実に進めていきたいと考えています。私はこの4月に国内営業部の本部長に就任したばかりではありますが、アメリカで成功したブランド価値経営のエッセンスを日本のカルチャーに適合させ、様々な部門との協議を重ねながらすでに実行しています。例えば販売網の再構築では、首都圏において数店舗の新世代店舗の出店予定があります。またブランドにフォーカスしたブランドキャンペーンをスタートしています。そして新会社を立ち上げて現場支援体制も強化しています。今後はお客様体験について現場スタッフが集中できる体制をさらに整備をして行きます。最後に変革への決意として販売も強化とブランド強化の両輪で変革を加速し、販売台数20万台を早期に実現できる基盤づくりを確立していきます」と語り、説明会を締めくくった。





















