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倶楽部MAZDA SPIRIT RACINGのチャレンジプログラム3期生が本格始動 選抜27人が筑波サーキットでリアル走行を体験
2025年5月7日 11:19
マツダは“モータースポーツをより身近に、仲間とつながり、共にスピードスポーツを楽しむコミュニティ”として「倶楽部MAZDA SPIRIT RACING」を2022年4月立ち上げ、ユーザーの挑戦をサポートする「チャレンジプログラム」を始動。
このチャレンジプログラムでは、「スーパー耐久シリーズへの道」と「バーチャルからリアルへの道」と2段階のステップを設けていて、スーパー耐久シリーズへの道では、ロードスターパーティレース(ワンメイクレース)の成績優秀者を対象に、実際にST-5クラスへの参戦の場を提供している。
2025年の参戦ドライバーの中には、バーチャルからリアルへの道の1期生である加藤達彦選手が、2024年にロードスターのパーティレースIIIジャパンツアーシリーズで年間チャンピオンを獲得し、新たに加入した。
バーチャルからリアルへの道では、プレイステーションの「グランツーリスモ7」を使ったeモータースポーツ大会「MAZDA SPIRIT RACING GT CUP 2024」を2024年10月6日~11月24日に開催し、そこで優秀な成績を収めた人たちの中から27人を選抜。リアルモータースポーツへ挑戦できる環境として、筑波サーキットでの1泊2日の“リアル体験会”を用意。
今年は3月12日~13日と4月22日~23日と2回に分け、半数ずつ招集して行なわれた。この27人の中から、「速さ」と「技量」だけでなく、「人柄」「熱意」「協調性」「積極性」「成長力」「改善力」など多岐にわたって審査を行ない、4~8人まで絞られる。
去る4月22日~23日のリアル体験会では、10代3人、20代7人、30代3人、40代1人の全14人が参加。北は北海道、南は山口県までさまざまなエリアから集まり、中にはこのイベントに参加するため、急きょ運転免許を取得したという10代の人も。なお、筑波サーキットまでの交通費はすべて実費となっている。
初日(22日)は快晴のもと、筑波サーキットの1周が約1000mの「コース1000」を使用。リアルでサーキットを走るのが初めての人もいるので、まずはシートポジションの合わせ方やブレーキングによる荷重移動、パイロンスラロームを使ったハンドリングなどで実車の感覚を習得。夜は同じホテルに宿泊し、一緒に晩御飯を食べることで親交を深めていた。
2日目(23日)はあいにくの雨。コースはチューニングカーのタイムアタックの聖地とも称される1周が約2000mの「コース2000」を使用。講師は前日と同じくチャレンジプログラムのチーフインストラクターを務めるTCRジャパン代表の加藤彰彬氏、バーチャルからリアルへの道の1期生である加藤達彦氏、同じく1期生の三宅陽大氏の3名。
チーフインストラクターの加藤氏は、「このプログラムはF1に参戦できるような凄腕のドライバーを育成するのが目的ではなく、バーチャルだけでなくリアルのモータースポーツを楽しむ仲間を増やすことが大きな目標です。とはいえ、バーチャルとは異なりリアルの世界では、ぶつければクルマも損傷するし、身体もケガするリスクがあるので、しっかりと基礎から練習してスキルアップしていく必要があります。同時にコース上でのマナーはもちろん、パドックでの立ち振る舞い、チームの一員としての活動、SNSでの発進も含めて、きちんとした姿勢を身に付けながら、それを広めていただきたいです」とプロジェクトの目的を説明してくれた。
1期生のインストラクターからは、バーチャルとの違いとして「視点」をピックアップ。ゲームの場合自身が中央に座っているような視点もあるが、当然リアルでは右側に寄っているため、いくらゲームで筑波サーキットに慣れていても、車両間隔が異なり、特に左側のタイヤをコースギリギリまで寄せて使うのが難しいポイント。また当日は雨ということもあり、コース上には川や水たまりがあるのはもちろん、他車が走ることで毎周コンディションが変化するので、慎重さと素早い対応力も求められるという。
また、バーチャルとリアルのモータースポーツで異なるポイントはリスクや視点のほかにも、エンジンの振動やシフトチェンジの変速ショックといったクルマの挙動、風、匂い、温度、さらにはコース上でマーシャルが振る“旗”もある。
最新グランツーリスモでは、走行時にルール違反をするとペナルティとして数秒間アクセルが開かなくなるといった処置がくだされるが、リアルの場合はペナルティ以外にも、滑りやすい、前方でアクシデントあり、スロー走行車あり、後方から速いマシンありなど数種類の旗があり、全開走行しながらも、旗が掲示されるコースサイドのポストを確実に確認しなければならない。ちなみにこの日は、ダブルチェッカー(チェッカーフラッグを2回受ける違反行為)をしてしまった参加者がいた。また、ロードスターパーティレースでは、他車と接触した場合はノーポイントという厳しいルールが設けられている。
リアル体験会では、各自25分の走行を交代で2回実施。自身が走らない時間帯はインストラクターの助手席に同乗してライン取りやシフトタイミングなど直接指導を受けていた。走行後は車載映像やデータロガー(デジスパイス)を活用した振り返り学習を実施。直後に行なうことで、自身の記憶が鮮明なうちに各々ドライビングの修正を行なっていた。
カリキュラムの最後は、チャレンジプログラムを統括しているマツダ ブランド体験推進本部 ブランド体験ビジネス企画部 モータースポーツ体験グルーブ 主幹の後藤憲吾氏と、チャレンジプログラムのチーフインストラクターを務めるTCRジャパン代表の加藤彰彬氏による面談が、7人ずつ2回に分けて実施された。
最初の質問は、「今回の“リアル体験会”に参加するにあたりどんな準備をしてきたか?」で、参加者は、ゲームで筑波サーキットを走り込んだり、ゲームでは左足でブレーキを踏んでいるが実車ではクラッチがあるため、右足でブレーキを踏むのに慣れる練習や、シフトもパドルではなくMTシフトを使う練習、ゲームの視点を実車タイプに変えて練習したり、友人やレンタカーでNDロードスターを借りて街中を走行してみたり、普段使わない筋肉を使うことを想定して筋トレをしたりと、各自さまざまな準備をしてきたと発表。
続けて、インストラクターからのアドバイス含め、この2日間での気づきや達成したことについても質問。ゲームでは感じられない荷重や旋回G、ステアリング操作と実車が動くまでのタイムラグや挙動、ブレーキを詰めていく難しさなどが挙がり、うまく修正できたポイント、まだまだ特訓が必要など参加者は答えていた。
ほかにも、「もしサーキットや広場など、自由にクルマの限界を試せるような場所があったとしたら、どんなことをするか?」と、今回の練習から反芻して繰り返し練習する内容をどのようにとらえているかといった質問や、「パーティレースやスーパー耐久シリーズといったJAF公認レースへ参加してみたいか? さらにはスーパーフォーミュラやSUPER GTにも出たいか? 具体的にどんなことを考えて、どんなプランを持ってるのか?」と、長いスパンで物事を考えることが必要となる質問も出た。そのほかにも、現実的な話として、次の選抜に残った場合、今後のプログラムに参加するための日程調整や資金調達などが可能かの確認をしていた。最後は自己アピールをしてもらい面談は終了した。
この後は、27人から4~8人まで絞られ、5月下旬にSPKのシミュレータラボでのシミュレータトレーニング、6月下旬の勉強会を経て、7月26日に筑波サーキットで開催される耐久レース「マツダファンエンデュランス(通称:マツ耐)」で実践デビュー。10月3~5日に富士スピードウェイで開催されるマツ耐、11月21~23日に岡山国際サーキットで開催されるマツ耐へと参戦していく。