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マツダ、2025年3月期決算説明会 売り上げは初の5兆円超えも、競争激化や出荷台数減の影響などにより増収減益
2025年5月12日 18:33
- 2025年5月12日 実施
マツダは5月12日、2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日)の決算説明会を実施した。登壇者は、代表取締役社長兼CEO 毛籠勝弘氏、代表取締役 専務執行役員 兼 CFO ジェフリー・H・ガイトン氏、専務執行役員 CFO(最高財務責任者)補佐、財務統括、コスト低減統括補佐 藤本哲也氏の3名。
マツダの2025年3月期の売上高は、前年の4兆8277億円から4%増の5兆189億円、営業利益は前年の2505億円から26%減の1861億円、営業利益率は3.7%、経常利益は前年の3201億円から41%減の1890億円、当期純利益は前年の2077億円から45%増減の1141億円となった。
毛籠社長は、決算の内容について「前期は好調に推移した北米販売が牽引し、ラージ商品販売も堅調に伸び、グローバル販売台数は前年に対し5%増加となり、売上高は初めて5兆円を超えました。営業利益はグローバル競争の激化および品質課題への徹底対応による出荷台数減の影響などにより1861億円。前年対比26%減少と増収減益となりました。前期は2030経営方針のフェーズ1の最終年度として、商品面ではCX-50のハイブリッドモデルやCX-80などラージ商品の市場投入、長安汽車との共同開発車EZ-6の市場導入を行なったほか、電動化に向けた開発体制、ものづくり革新強化や原価低減に向けた体制作りなど、社内取り組みは計画通り進捗し、フェーズ2への準備が整いました」と報告した。
続いて今期の見通しに関して毛籠社長は、「現時点では国間交渉の過程にあり、状況は依然として流動的且つボラティリティが高いことから、合理的に先行きを算定できる状況にない」との認識を示したうえで、「米国政府の関税政策および、影響を受ける市場の需要や販売価格の変動によるお客さまの受容度などを注視する必要がある。米国関税政策など先行き不透明な経営環境を鑑みて、本日時点未定とさせていただきます。関税の課税後車両の販売が本格化すると想定される第1四半期決算時に、政策動向や影響をさらに精査の上、状況をアップデートする予定です」と説明。
また、関税政策による影響に対する基本的な方針として、「私たちはお取引先さまや優良販売店などのサプライチェーン上の重要なパートナーとともに雇用と事業を守り抜くことを優先として、グローバル販売台数について可能な限り前年並みを目指して取り組む方針です。先行き不透明感が強い現環境においては、まずは自らコントロールできる変動費や固定費に対して踏み込んだ取り組みを進めると同時に、テーブルに考えうるあらゆる対策を載せて、必要な対応策を講じられる準備を進めることで関税影響を可能な限り最小限にとどめるように努めます。逆にこの大きな危機を、経営のレジリエンシーを強化できる絶好の機会と捉え、前向きに活用するよう取り組みます」と方針を語った。
2030経営方針の進捗を報告
中長期経営計画「2030経営方針」に基づくフェーズ1(2022年~2024年)の進捗に関して毛籠社長は、「北米ビジネスの力強い成長、ラージ商品の導入によってトップラインの成長を実現し、利益やネットキャッシュを積み上げるなど、概ね想定通りの進捗となりました。また、お客さま視点を最優先とするブランド価値経営が奏功し、前期は米国43万台、メキシコ10万台をそれぞれ超える過去最高の販売台数を達成しました」と報告。加えて、「フェーズ1の3年間は、お取引先さまとの共創活動やビジネスパートナーの皆さまとの協業、販売店の皆さまの各地域での頑張り、そしてお客さまのご支援によってフェーズ2(2025年~2027年)に向かう準備が計画に沿って進捗できました」と関係各位に感謝を述べた。
続けて「フェーズ2では、先日公表した通り、保有資産の徹底活用とパートナー企業との協業により資産効率を高め、レジリエンシーの高い経営を目指す“ライトアセット戦略”と、当社の強みである柔軟かつ高効率な開発・生産プロセスを進化させた“マツダものづくり革新2.0”を推進し、実態に即した電動化マルチソリューションをさらに前進させるフェーズと位置付けています。構造的な原価低減活動による変動費削減1000億円、固定費削減1000億円、サプライチェーンの構造改革など資本効率の改善に着目し、今後の厳しい経営環境を生き抜いていくために事業構造の強靭化に取り組みます」と毛籠社長は抱負を語った。
さらに各市場への対応としては、米国のブランド価値経営による事業改革成功のレシピを中国、日本、タイなどへ展開し、アジア地域ビジネスの反転に取り組むほか、中国では長安汽車との共同開発車の市場導入や輸出、日本では都市圏マーケットにおける取り組みやマーケティングコミュニケーションの強化、タイでは販売網の再編に加え、新型の小型SUVの開発・生産を行ない、市場導入と輸出、インドネシアでの「CX-30」の現地生産を進めつつ、フェーズ2期間の商品として、次期「CX-5」自社製BEVの開発とグローバル展開、「EZ-60」の導入を進めるとともに、技術面では「SKYACTIV-Z」や自社製ハイブリッドの開発、導入を進めるとした。
また毛籠社長は、「今後の様々なチャレンジを乗り越えていく上で、最も重要な資本は“人”であり、人への多様な投資を進めています」と現在の取り組みの方向性を紹介。従業員1人ひとりが活躍できる組織風土への変革、前向きに挑戦し成長できる環境の整備などを推進するため、“BLUEPRINT”という組織風土変革活動を2023年11月以降、全間接従業員約1万2000人に実施したことを明かした。さらに2025年の4月~5月には、工場へ従事する直接従業員約1万1000人へも展開し、風土変革活動を全従業員へ浸透・定着させるという。
全職場で職位によらない自由な意見交換を活性化することで、創意工夫を促し、自律的に生産性向上を図ると同時に、技能系社員向け社員寮の建て替えを進めることで、優秀な人材確保も後押ししたいと説明。
そのほかにも、首都圏拠点の整備・強化を図り、生成AIなど高度化した技術が普及していく中でソフトウェア技術を持つ人材の採用や企業との連携強化を進めつつ、従業員の経験や専門性を生かした業務に着けるようキャリアの複線化の後押しをするなど、人事制度改革も進めると締めくくった。