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マツダ、2024年3月期 通期決算 売上高26.2%増の4兆8277億円、営業利益76.4%増の2505億円、当期純利益45.4%増の2077億円はそれぞれ過去最高

2024年5月10日 開催

マツダ株式会社 代表取締役社長兼CEO 毛籠勝弘氏

 マツダは5月10日、2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の通期決算説明会を実施した。

 2024年3月期 通期の売上高は前年同期(3兆8267億5200万円)から26.2%増となる4兆8276億6200万円、営業利益は前年同期(1419億6900万円)から76.4%増となる2505億300万円、営業利益率は5.2%、当期純利益は前年同期(1428億1400万円)から45.4%増となる2076億9600万円。グローバル販売台数は124万1000台(前年同期比13万1000台増)で、連結出荷台数は120万2000台(同14万2000台増)となった。なお、売上高、営業利益、当期純利益はそれぞれ過去最高となっている。

2024年3月期 通期決算の財務指標
2024年3月期 通期の生産台数、グローバル販売台数の内訳

 通期決算の実績についてはマツダ 代表取締役 専務執行役員兼CFO ジェフリー・H・ガイトン氏が説明。

 2024年3月期 通期の車両生産は、米国・アラバマ工場の生産2直化が実現されたことで同工場の生産が74%増加したことに加え、日本、中国、メキシコにある各工場でも稼働効率が向上したことを受けて対前年度比7%アップ。1月に発生した能登半島地震地震の影響による生産リスクも危惧されていたが、取り引き先の在庫活用、早期復旧に向けた努力、代替部品の調達などによって大きな生産影響は回避できたという。

 販売では、北米市場で新たに導入した「CX-90」に加え、「CX-50」「CX-30」の販売が好調に推移したことにより、通期として過去最高となる37万5000台を記録。また、メキシコでも7万7000台を販売して過去最高となった。中国では「MAZDA 3」「CX-5」の価格や装備を見直しする販売強化策が奏功して、販売台数は対前年度比15%増の9万7000台を記録している。

マツダ株式会社 代表取締役 専務執行役員兼CFO ジェフリー・H・ガイトン氏
日本市場での販売動向
北米市場での販売動向
欧州市場での販売動向
中国市場での販売動向
その他市場での販売動向

 過去最高の2505億300万円となった営業利益の変動要因では、販売台数の増加に加え、米国、欧州などの高収益市場で販売が伸張していることで「台数・構成」が1252億円、米ドルやユーロ、豪ドルといった主要通貨が円安に動いた「為替」が535億円、さらに「コスト改善」が248億円の増益要因となっている。一方で調達部品のエネルギー高騰影響、人件費の増加による「原材料・物流費等」が112億円、品質関連費用の増加、ラージ商品やCX-50の広告宣伝費、研究開発の取り組み強化などが計上された「固定費等」が838億円の減益要因になっている。

2024年3月期 通期における営業利益の変動要因
2024年3月期 通期決算の総括

2025年3月期はグローバル販売台数13%増の140万台を計画

2025年3月期の通期見通し

 4月からスタートしている2025年3月期については、市場動向でHEV(ハイブリッド車)の需要が高まっていることを挙げ、マツダでもさまざまなユーザーニーズに応える多彩なHEVをラインアップ。ラージ商品でPHEV(プラグインハイブリッド車)を搭載した「CX-70」「CX-80」を市場投入し、北米市場ではCX-50のHEVモデルも導入予定としている。このほか、発電用のロータリーエンジンを搭載した「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」を2023年末から日本、欧州の市場で発売してHEV需要に応えている。

 販売施策では、米国ですでに300店舗以上が稼働している「新世代店舗」について、2025年3月期中にさらに70店舗を新世代店舗に転換する予定。これにより、米国販売網の70%以上が新世代店舗になり、米国で販売される新車10台のうち9台が新世代店舗での販売になる計画としている。

HEV需要の高まりに応えるためラインアップを強化していく
米国の「新世代店舗」をさらに増やして販売面も強化する

 これらの取り組みにより、北米市場を中心に各市場で販売を拡大。グローバル販売台数は対前年度比で13%増の140万台を計画しており、財務指標では売上高11%増の5兆3500億円、営業利益8%増の2700億円、一方、為替レートが円高傾向に動き、期末時には米ドルが136円/ドルになる前提としており、これによって外貨建て資産が評価減になって営業外損益が発生。当期純利益を28%減の1500億円の見通しとしている。

2025年3月期の販売台数見通し
2025年3月期における営業利益の変動要因
2024年3月期に特別配当として5円/株を実施。2025年3月期では米国の大統領選挙などの影響が不透明であることを理由に、期末配当を未定としている

車両電動化の黎明期である2030年までの取り組み

2030経営方針の概要

 決算説明に続き、マツダ 代表取締役社長兼CEO 毛籠勝弘氏から2030年に向けて進めている経営方針の進捗などについての説明が行なわれた。

 マツダでは車両電動化の黎明期である2030年までの期間を「PHASE1」「PHASE2」「PHASE3」の3つに分け、各段階での取り組みについて具体化している。2024年度はPHASE1の最終年度となっており、ここで進めるべき3つの重要な取り組みを紹介した。

北米市場での成長/ラージ商品によるトップラインの成長

「北米市場での成長/ラージ商品によるトップラインの成長」では、2024年3月期に米国とメキシコで過去最高の販売台数を記録し、北米市場で初めて50万台の販売を達成している。この原動力は、商品面ではCX-90、CX-50による増販効果、販売面ではメキシコで90%、米国で300店舗の目標を達成した新世代店舗化が進み、販売力で当初予定以上の着実な強化が進んでいると評価した。

 2025年度はラインアップにCX-70に加えるラージ商品とCX-50を活用して、さらに10万台増の60万台を北米市場で販売する意欲的な計画を立てて取り組んでいるという。

 グローバルではCX-80を市場投入によって完成する「ラージ商品4兄弟」が約20万台販売される計画で、今期以降がラージ商品を育成し、成長させていく本番になると位置付けて取り組んでいく。

電動化に向けた進捗

「電動化に向けた進捗」では、2023年11月に「e-Mazda」とも呼ばれる「電動化事業本部」を100人の人員で発足。電動化事業にリソースを投入して急ピッチで加速させており、そこから電動化事業本部はスタッフを200人に拡大。マツダ初のBEV(バッテリ電気自動車)専用プラットフォームを利用するBEVを2027年導入に向けて取り組みを進めている。

 また、すでにラージ商品で導入が始まっているHEV、PHEVに加え、2024年後半にはCX-50にHEVモデルを追加。さらに現在開発を進めているCX-5の次世代モデルには、排気エミッションと熱効率を同時に改善したSKYACTIVエンジンに、マツダ製のハイブリッドシステムを組み合わせて導入することを計画していることも明らかにした。

 BEVについては導入に向けて市場ごとの現実的な対応が必要だと述べ、現状で最も電動化の進展が早い中国市場では、4月に開催された「北京モーターショー2024」で公開した「MAZDA EZ-6」を2024年内に発売することを皮切りに、BEV、PHEVで4車種の新エネルギー車を市場投入して反転攻勢をかけると意気込みを述べた。

人への投資とITとの供創による価値創造

「人への投資とITとの供創による価値創造」としては、カーボンニュートラルや電動化といった自動車産業の大きな変化を乗り越えるため、最も重要なリソースは人であると説明。重要取り組み事項に「人への投資」「ITとの供創による生産性倍増」を設定して取り組んでいる。

 このため、「ブループリント」と名付けた全社的な職場風土改革を約1万2000人の全間接社員で展開し、全本部でDX推進活動を進めている。この取り組みによってスモールプレーヤーであるマツダの強みであるべき活力、効率、スピードを大幅に向上させるべく活動しているという。

 これら3項目の具体化と実行、内容をステークホルダー各位に十分知ってもらうことにより、将来のマツダビジネスへのコンフィデンスを高めることが企業価値の向上を実現するため重要であると総括した。

質疑応答

質疑応答で回答する毛籠社長

 発表会後半に行なわれた質疑応答では、今秋発売となるCX-80の登場でラインアップが完成するラージ商品について問われ、毛籠社長は「ラージ商品はプラットフォームを新しく後輪駆動にして、トランスミッションやエンジンも新規設計です。開発でのチャレンジは非常に大きかったということで、途中で多くの困難をなんとか乗り越えて導入につなげてくれたと思います。このラージ商品となる4兄弟を短期間で導入できたのは、モデルベース開発を中心とするマツダの高効率な開発体制が奏功しているかなと思います」。

「また、クオリティ面のレベルも非常に高い、ポテンシャルが高いプラットフォームになっていると私は思っておりますので、4モデルがそろった今年度から本格的に育成していく、市場で信任を受けていく取り組みを各地で一生懸命進めて育てていくんだということで進めていきたいと思っています。収益力も高いモデルですが、マツダが重要だと考えている『走る歓び』を高いレベルで体現している商品に育成していけると考えておりますので、機会があればぜひ皆さんに試していただければと考えています」とコメントして自信をのぞかせた。