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マツダ、2023年3月期通期決算は営業利益36.2%増の1419億6900万円、当期純利益75.1%増の1428億1400万円。売上高の3兆8267億5200万円は過去最高

2023年5月12日 開催

マツダ株式会社 代表取締役社長兼CEO 丸本明氏。丸本氏は2018年6月から社長に就任して5年間にわたりマツダを率いてきたが、この6月で退任すると発表されている

 マツダは5月12日、2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の通期決算説明会を実施した。

 2023年3月期 通期の売上高は前年同期(3兆1203億4900万円)から22.6%増となる3兆8267億5200万円、営業利益は前年同期(1042億2700万円)から36.2%増となる1419億6900万円、営業利益率は3.7%、当期純利益は前年同期(815億5700万円)から75.1%増となる1428億1400万円。グローバル販売台数は111万台(前年同期比14万1000台減)で、連結出荷台数は105万9000台(同6万8000台増)となった。

2023年3月期通期のマツダ財務指標

 同日に行なわれた説明会では、マツダ 常務執行役員 川村修氏が2023年3月期 通期の決算内容について説明。

 2023年3月期 通期の生産台数は前年同期11%増の113万5000台となったが、販売ネットワーク再編や商品ラインアップが端境期となっていた中国での販売減、上海ロックダウンの影響による在庫の枯渇などの影響により、グローバル販売台数は前年同期比14万1000台減の111万台となっている。

 財務指標では、売上高の3兆8267億5200万円は過去最高となっており、売上高を出荷台数で割った「台あたり売上高」は約360万円となり、前年同期比で50万円ほど増加しているという。

マツダ株式会社 常務執行役員 川村修氏
2023年3月期通期の台数実績
コロナ禍と上海ロックダウンの影響で生産台数が減少。2022年3月期は在庫車を活用して販売を維持していたが、この枯渇によって2023年度上期に販売が落ち込むことになった
2023年3月期通期の営業利益変動要因
2月の第3四半期決算発表時に公表した数値からの営業利益変動要因。物流影響によって北米に対する輸出台数が減少したことが減益要因となった

2024年3月期は売上高4兆5000億円、営業利益1800億円、当期純利益1300億円を計画

2024年3月期の財務指標見通し

 続いて2024年3月期の見通しを発表。7月からは米国・アラバマ工場での生産体制が2直化すること、新たな主力商品である「ラージ商品群」が本格導入されることなどの効果により、北米市場での販売台数が22%増になることなどを予定して、グローバル販売台数を17%増の130万台に設定。

 この販売を背景に、売上高は18%増の4兆5000億円、営業利益は27%増の1800億円、当期純利益は9%減の1300億円を計画している。売上高や営業利益を増加としつつ、当期純利益を減益としている理由について川村氏は、今後は為替が円高方向に動くことを想定して、営業外の為替評価損益の差分がそのまま出たものになると説明した。

2024年3月期の販売台数見通し。すべての市場で販売増を目指す
2024年3月期見通しにおける営業利益の増減分析。これまで追い風となってきた為替が円高になり、519億円の減益要因になると予測している
決算説明のまとめ

この5年間で「稼ぐ力」は着実に向上していると丸本氏

丸本氏による社長就任期間5年の取り組み総括

 川村氏の決算説明に続き、2018年6月から社長に就任して5年間にわたりマツダを率いてきた丸本明氏が、この6月に退任して後任の毛籠勝弘氏に社長の座を譲ることを受け、就任からこれまでをふり返る取り組みの総括を行なった。

 丸本氏はこの5年間にさまざまな経営環境の変化が起き、とくにコロナ禍による急激な需要減、半導体の供給不足による生産減少、原材料やエネルギー価格の高騰、物流のひっ迫などが財務に極めて大きく影響したと説明。財務以外でも、ESG経営といった企業の社会的責任に対する要求が高まり、自動車メーカーとしては安心・安全なクルマ社会、カーボンニュートラルに対する貢献などをよりいっそう求められるようになったとふり返った。

 具体的には、この5年間に起きたさまざまな社会変化によってグローバル販売台数は156万1000台から111万台に低下したものの、商品力強化、インセンティブの抑制、固定費の抑制、原価低減、経営効率の改善などに取り組んだ結果、売上高を約600億円、台あたり売上高を約90万円増加させる結果となっている。まだ取り組むべき改善点は多くあるとしつつ、この5年間で「稼ぐ力」は着実に向上。強い事業構造に1歩前進できたとの考えを示した。

販売台数は減少しているが、“販売の質的改善”などによって売上高は向上している
5年間で見た営業利益の変動要因

 販売の足もとでは、米国内で販売網の再構築を実施。ブランド価値の浸透によって販売台数を伸ばし、単価改善によって円安効果を最大化して利益増に貢献。マツダが重視している残価率についても、「CX-30」以降は導入時からセグメントトップレベルを維持できるようになっていると説明。生産面でも米国・アラバマ工場の稼働開始、ラージ商品群である「CX-60」「CX-90」や、バッテリEV(電気自動車)の「MX-30」、PHEV(プラグインハイブリッド車)を市場投入して新しいニーズにも対応している。

車両1台あたりの販売価格を高め、残価率も高い数字を維持できるようになった
トヨタ自動車との合弁で設立されたアラバマ工場は2022年1月に車両生産を開始

 また、後半に行なわれた質疑応答であらためて5年間で苦労した点などについて問われた丸本氏は、「2018年の6月に社長に就任して、10日も経たないうちに西日本豪雨が発生しました。幸運にも弊社の工場などは被災を免れましたが、道路網、交通網が完全に寸断され、地場のお取引先さまにも被害が出ました。復旧復興を第一にしつつ、従業員の生活も守ると宣言して、最終的には2か月ほどかかって平素の生産ができる状態に戻りました。これが最初の試練になりました」。

「一番大きかったのはこの3年間で、全員が非常にしんどかったと思います。ただ、これは弊社だけの問題ではなく、他社さんも含めて必死になってリカバリーに努め、改善を積み重ねてと活動してきていますので、弱音は吐けない部分です。この期間はきつかったですが、これは全員で歯を食いしばってやってきたのかなと感じています」と回答している。

ラージ商品群の第3弾は下期、“末っ子”は年の後ろの方と毛籠氏

マツダ株式会社 取締役 専務執行役員 毛籠勝弘氏

 6月から社長に就任する毛籠氏は、現在取り組んでいる中期経営計画の折り返しである2024年3月期ついて、「これまで行なってきた投資と積み重ねてきた資産を活用して、成長軌道に乗せていく重要な1年」と表現。北米市場での通年販売に入るCX-90、アラバマ工場が2直化することで生産量が拡大する「CX-50」、さらに中国での現地生産もスタートして通年販売に入る中国製のCX-50などが販売に寄与してマツダの成長を牽引していくドライバーになるとの期待を示した。

 一方、経営の外部環境は引き続き厳しい状況が続くと想定し、半導体の供給不足も改善に向かいつつ影響が残り、輸送船の不足が大きなボトルネックになっていくとコメント。今期は引き続き価値上昇に焦点を当て、スピードと透明性、規律を向上させたオペレーションで経営環境の変化に迅速に対応できるよう進めていくと述べた。

2024年3月期の取り組み概要

 具体的な施策としては、まず台あたり売上高の向上に向け、「ラージ商品群の本丸」として米国で4月に発売したCX-90の導入を成功させるため、北米カスタマーの声に耳を傾けて商品力を磨いてきたと説明。実際に公開直後から「装備、性能、価格などのバランスが高い次元でとられている」と評価されているとした。また、CX-90にはPHEVモデルもラインアップされており、マツダらしい電動化技術が北米ユーザーの心を掴むことにも期待しているという。さらに中国市場で販売を拡大する予定のCX-50など、ラージ商品群の販売構成を高めることで台あたり売上高を高める計画としている。

 電動化では「マルチ電動化技術」によってラージ商品群にPHEV、マイルドハイブリッドなどのラインアップを増やしていくほか、ロータリーエンジンを発電用として搭載する「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」を日本、欧州の市場に導入。ユーザーや販売店の声を素直に聞き、継続的に学んで着実に電動化商品を導入していきたいと述べた、

 ラージ商品群の投入時期について、毛籠氏は後半の質疑応答で質問された際、「CX-90のヒット状況次第になりますが、第3弾は下期を目がけて出したいというイメージです。“末っ子”は年の後ろの方かなというイメージで考えています。時期が近くなってきたら具体的なタイミングを皆さんにもご報告できるかと思います」と答えている。

ラージ商品群の販売構成を高めることで台あたり売上高を高める計画
「マルチ電動化技術」によって電動化商品をさらに拡大していく

 カーボンニュートラルに向けた取り組みでは、省エネ、再エネ、カーボンニュートラル燃料の3つを柱に設定。再エネ分野では中国地方でのカーボンニュートラル推進協議会の活動に基づき、地域での再エネ事業拡大に向けて太陽光発電によるオフサイトPPAを締結。カーボンニュートラル燃料ではサプライチェーン構築によって化石燃料の使用量低減を進め、エネルギーサプライチェーン全体の取り組みを具体化していくという。

カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み。省エネ、再エネに加え、カーボンニュートラル燃焼の活用も柱としていく