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フォルクスワーゲン、新型EVミニバン「ID.Buzz」発表会 「競合他社のミニバンが持つ価値観とは真逆」

2025年6月20日 開催
新型「ID.Buzz」と撮影に臨むフォルクスワーゲンブランドディレクターのイモー・ブッシュマン氏

 フォルクスワーゲン グループ ジャパンは6月20日、新型EV(電気自動車)ミニバン「ID.Buzz」の発表会を六本木ヒルズアリーナ(東京都港区六本木)で開催した。

 ID.Buzzは“ワーゲンバス”ことフォルクスワーゲン“Type 2”のヘリテージを継承しつつ、新たなフォルクスワーゲンのブランドアイコンとなるべく開発されたフル電動ミニバン。2-2-2のレイアウトを採用した6人乗りノーマルホイールベース仕様「Pro」(888万9000円)、2-3-2のレイアウトでホイールベースを約250mm伸長した7人乗りロングホイールベース仕様「Pro Long Wheelbase」(997万9000円)をラインアップする。

2-2-2のレイアウトを採用した6人乗りノーマルホイールベース仕様「Pro」。ボディサイズは4715×1985×1925mm(全長×全幅×全高)でホイールベースは2990mm

 ハノーバーにあるフォルクスワーゲン商用車部門の工場で生産され、プラットフォームはBEV専用のMEB(モジュラー エレクトリック プラットフォーム)。モーターとトランスミッションをリアアクスルに搭載するRRレイアウトを採用しており、ノーマルホイールベース仕様、ロングホイールベース仕様ともにモーターの最高出力は210kW(286PS)/0-3581rpm、最大トルクは560Nm(57.1kgm)/2100-5500rpmを発生。

 駆動用バッテリはフロア下に敷き詰められ、アルミニウム製のハウジングとアンダーボディプロテクションによって堅牢性と高い放熱性を実現したという。バッテリ容量はノーマルホイールベース仕様で84kWh、ロングホイールベース仕様で91kWh。WLTCモード一充電走行距離はノーマルホイールベースで524km、ロングホイールベースモデルで554km(いずれも国土交通省審査値)となっている。

2-3-2のレイアウトでホイールベースを約250mm伸長した7人乗りロングホイールベース仕様「Pro Long Wheelbase」。ボディサイズは4965×1985×1925mm(全長×全幅×全高)でホイールベースは3240mm

フォルクスワーゲンのアイコンの復活は本社にとって悲願

フォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社 プロダクトマネジメント シニアマネージャーの沢村武史氏

 発表会ではフォルクスワーゲン グループ ジャパン プロダクトマネジメント シニアマネージャーの沢村武史氏がID.Buzzの概要について説明。

 沢村氏はID.Buzzの源流となるフォルクスワーゲン“Type 2”について触れ、「Type 2の生産が始まったのは1950年ですから、今から75年前。この75年という時を超えて、ついにこのID.Buzzが日本でも走り出すと、そんな瞬間に私は立ち会っています。今から75年前、1950年に生産開始されたフォルクスワーゲン トランスポーター。当時のビートル Type 1の車体をベースに開発され、広くType 2という名称でも知られることとなりました。その名のとおり、多人数乗車での移動から商用バン、そしてキャンパーとしてさまざまな用途で使われたクルマでした。そして、とりわけType 2がその名を一躍馳せたのは、1960年代にカウンターカルチャーと言われたヒッピー文化の象徴の1つになったことでしょう。安価に手に入れられたType 2は、自由と平和を謳った彼らの主義・主張を表現する格好のキャンパスでした。こうして熱狂的なファンを獲得したType 2の名称は、T1からT3の3世代の通称と言われていますが、その後T3の生産は1992年に終了いたしました。そうした稀有なヒストリーを持つフォルクスワーゲンのアイコンの復活はフォルクスワーゲン本社にとって悲願でした」と説明する。

会場に展示されたフォルクスワーゲン“Type 2”(T1)

 その証として、T1の印象的なデザインをモチーフにしたコンセプトカーを幾度となく登場させ、量産化の機運を探ってきた。2001年のマイクロバス、2011年のBulli(ブリー)、そして2017年のI.D. BUZZコンセプトなどがそれにあたり、いずれも世界的に大きな反響を得るとともに、特にI.D. BUZZコンセプトは東京モーターショーで展示されたこともあり、日本で大きな注目を集めたという。このI.D. BUZZコンセプトについて沢村氏は、「それはType 2が醸し出す自由というフィーリングを、新たな電動モビリティの時代に引き継ぐことであり、ID.Buzzを現代に復活させたことは必然だったのです」と語った。

T1の印象的なデザインをモチーフにしたコンセプトカーたち

 そしてID.Buzzについては、「あくまでイメージとしてお話をしますけれども、お客さまがID.Buzzと比べられるであろう他社の大きなミニバン、それらが持つ価値観というのは時代性が強く、ここで並べた言葉(華美、強い存在感、テック感、ステータス)で表現できるのではないかなと思っています。一方で、ID.Buzzが表現する価値とはシンプル、親近感、サステナブル、そして自分らしさという時代に左右されず、普遍性が高く、競合他社が持つ価値観とは真逆に位置するものと言えると思います。この提供価値は全てのフォルクスワーゲンに共通するものですけれども、特にこのID.Buzzはフォルクスワーゲンのクルマ作りの哲学、そして世代を超えて愛されるクルマを作るというブランドの思想をもっとも顕著に体現したモデルである、そう確信しています」と述べる。

競合他社のミニバンとID.Buzz、それぞれの提供価値

 また、ID.Buzzのユーザー像については「例えば創造性の高い職業やフリーランスの方などをイメージしやすいですけれども、平日は会社勤めでも週末にクリエイティビティを爆発させるような趣味人の方も、ID.Buzzの顧客像の1人だと思います。長くフォルクスワーゲンに親しみのある方もいれば、このクルマで初めてフォルクスワーゲンを知る方もきっと多くいるでしょう。しかし、このクルマを本当にほしいと思ってくださるお客さまが持つ価値観というのは共通しているのではないかと思っています。プロダクトの背景にあるストーリーやブランドの哲学に共感してくださる方、単なる移動手段としてのクルマではなく、クリエイティビティを刺激し、ライフスタイルを豊かにしてくれることを期待されるお客さま。そんなお客さまたちが型にはまらない、われわれが想像もしえないような使い方を広めて、それがムーブメントとなってカルチャーとなる。そのような未来を想像させるクルマがID.Buzz」との考えを示した。

ID.Buzzのユーザー像

 最後に沢村氏は、「私事ですが、2022年に世界各国のインポーターが集まる本国の導入会議に参加し、デンマークからスウェーデンまで試乗する機会をいただきました。1つのグループが20台ほどのID.Buzzを連ねて走っていったのですが、その道中で通りがかった小さい子供たちがずっと笑顔で手を振ってくれる光景に出会い、大変感動しました。こんなクルマは世界中見渡してもきっとない、まさにOnly Buzz.(ID.Buzzのキャッチコピー)を感じた瞬間でした。日本においても、こうした光景が至るところで見られることを心から祈っております」と述べ、プレゼンテーションを締めくくった。

ホイールベースの違い
ID.Buzzのスペック
ボディカラーとシートカラーについて
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