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フェラーリ、新型「296 GT3 Evo」公開 エアロダイナミクスや冷却性能を向上したレーシングカー

2025年6月27日(現地時間)発表
フェラーリの新型296 GT3 Evoが公開された

 フェラーリは6月27日(現地時間)、スパ・フランコルシャン24時間レースの会場にて、新型レーシングカー「296 GT3 Evo」を公開した。年内にホモロゲーションの取得を完了し、2026年シーズンにデビュー予定。

 新型296 GT3 Evoは、2024年からWEC(FIA世界耐久選手権)に参戦している「296 LMGT3」と、デビュー以来5つのタイトルを獲得してきた「296 GT3」での経験をベースに開発したマシン。

新型296 GT3 Evo

 搭載される120度バンクのV型6気筒ターボエンジン自体に変更はないものの、搭載位置をロードバージョンよりも前方かつ低い位置に搭載したことで、重心を下げると同時にねじり剛性も向上したという。また、搭載角度を2度かたむけることでリアディフューザーのスペースも確保している。ギヤボックスは過去2年のデータ分析を基にギヤ比の見直しを行ない、低速から高速までのトルク特性を向上。

 エアロダイナミクスに関してフェラーリのエンジニアたちが掲げた目標は、技術規定ですでに限界まで押し上げられている標準モデル296 GT3の垂直荷重と効率性を維持しつつ、より予測可能で安定したレスポンスの実現。296 GT3 Evoが他車のスリップストリームに進入した際のフロント垂直荷重安定性と、空力荷重の変動を最小限に抑える空力感度の向上に重点を置いたという。

フロントまわり
リアまわり

 フロントスプリッターやフロントフロアの形状を改良し、エクスパンションボリュームやボルテックスジェネレーターの最適化も図られている。また、フロントバンパーのウイングレットや、リアディフューザーのエクスパンションボリュームや数も見直された。さらに、フロントホイールアーチのルーバーも再開発し、前方から取り込んだ空気を後部のエアインレットへスムーズに導くように設計。

 新型296 GT3 Evoの開発には、風洞試験とCFD(数値流体力学)を組み合わせたシミュレーション手法をさらに改良し、レース中に複数台と競り合うような乱れた空力場のシミュレーションと、さまざまな形状バリエーションの迅速なテストを行ない、同様にサーキットでも実走行で検証を実施。スリップストリーム中の垂直荷重が安定し、最もダイナミックで予測不可能な状況下でも、競争力と精度が向上したという。

進化したリアイング

 従来型との見た目の大きな違いは、ブレーキとコックピットの冷却効率を向上させるフロントボンネットの2つのエアインテークと、大幅に改良された新型リアウイングで、支持構造がサイドパネルとともに再設計されたほか、ウイングにはLMGT3で初めて導入した「クイックアジャストメント機構」が新たに搭載され、簡単なネジ操作でウイングの角度を調整できる。

 特にフロントブレーキの冷却に重点が置かれ、バンパーからディスクブレーキへ空気を送るダクトの最適化と、ボンネットに2つのダイナミックインテークを導入したことで、フロントブレーキへの総エアフローは296 GT3と比較して20%以上増加。また、アンダーボディに2つの「NACAダクト」を導入したことで、ステアリングポンプの冷却性能・効率が向上している。

 また、リアホイールアーチまわりのボディワークはLMGT3版のものを流用。世界中のGT選手権で使用されている各メーカーのタイヤとのマッチング性を高めるために、従来モデルよりもカーブ形状がより垂直的になっている。さらに、現行モデルのドアミラーの振動周波数を調べ、改良を加え振動量を低減しつつ、以前よりも内側に配置して角度も変更したことで、横後方の視界を向上させた。

新型296 GT3 Evoのコクピット

 前後サスペンションのジオメトリ最適化を行なうことで、部品への負荷を低減し信頼性を向上させたほか、フロントとリアのダイナミックレスポンスの連携を確保するとともに、ピットでのセットアップ作業も容易にした。

 コックピットは、直感的操作性や良好な視認性に加え、安全性や快適性も重視。基本コンセプトを維持しつつ、ファンを追加したこでエアコンシステムを大幅に改良している。