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フェラーリ、「296スペチアーレ」国内初披露 プロダクトマーケティング担当カランド氏が進化ポイントを詳説

2025年6月21日 初公開
フェラーリ「296スペチアーレ」の発表説明会を実施したフェラーリ・ジャパン 代表取締役社長のドナート・ロマニエッロ氏(左)と、フェラーリ S.p.A. ヘッド オブ プロダクト マーケティングのエマヌエレ・カランド氏(右)

ル・マン24時間耐久レース3連覇中のマシン同様のV6ツインターボを搭載

 フェラーリは6月21日、静岡県にある富士スピードウェイホテルにて、新型「296 Speciale(スペチアーレ)」を日本国内で初披露した。

 これは6月20日~22日に開催される第10回「Ferrari Racing Days 2025」に合わせて用意されたプログラムで、21日~22日には、フェラーリの「488 Challenge EVO」を使ったワンメイクレース「フェラーリ・チャレンジ・ジャパンシリーズ」や、体験走行などサーキットを中心とした多数のコンテンツが行なわれる。

フェラーリ296スペチアーレが日本に初上陸した

 フェラーリ・ジャパン 代表取締役社長のドナート・ロマニエッロ氏はFerrari Racing Dayについて、「このイベントは、フェラーリオーナーやフェラーリに興味を持つファンのために開催するもので、ラグジュアリーな環境の中で、フェラーリの魅力や技術への理解を深めてもらう貴重な機会となっています」と説明。イベントは富士スピードウェイと鈴鹿サーキットで毎年交互に開催されていて、昨年は鈴鹿サーキット、今年は富士スピードウェイでの開催となっている。

フェラーリ・ジャパン 代表取締役社長 ドナート・ロマニエッロ氏

 また、日本初披露となる「296スペチアーレ」についてドナート氏は、「ベースとなっている296GTBは、サーキットから日常の普段使いまで運転する楽しさを味わうために作られたモデルで、ル・マン24時間耐久レースで3年連続優勝を成し遂げたマシン“499P”と同じアーキテクチャとなる、120度バンクのV型6気筒ツインターボエンジンを搭載し、フェラーリのスポーツ精神を語るには外せない1台です」と紹介。

【フェラーリ】296 Speciale アンベール(31秒)

 続けて、「296スペチアーレは、2003年のチャレンジ・ストラダーレ、2007年の430スクーデリア、2013年の458スペチアーレ、2018年の488ピスタといった歴代スペシャルモデルの伝統を継承しつつ、エンジン、空力性能、車両ダイナミクスの大幅な改良が施されたまったく新しいモデルで、296シリーズの単なるバリエーション(派生モデル)ではないです」と強調。ドライビングエモーションを極限まで引き出すために設計され、革新的なテクノロジーを多数搭載した、現代の技術と情熱が融合した究極のエモーションとパフォーマンスを体感するための1台となっている。

グローバルでは2025年4月29日(現地時間)に発表された新型「296スペチアーレ」
新型「296スペチアーレ」が日本へ上陸したのは今回が初となる
フェラーリの歴代スペシャルカーやレーシングマシンのDNAを継承して296スペチアーレは誕生した

イタリアからプロダクト マーケティングのカランド氏が来日して説明

 今回296スペチアーレの日本初上陸とFerrari Racing Days FUJIの開催に合わせて、フェラーリ S.p.A. ヘッド オブ プロダクト マーケティングのエマヌエレ・カランド氏も来日。発表披露会にて296スペチアーレの詳細を説明した。

フェラーリ S.p.A. ヘッド オブ プロダクト マーケティングのエマヌエレ・カランド氏

 カランド氏によると、296スペチアーレはプロジェクト開始時に「ユーザーの求める頂点となる1台を作る!」と高い目標を掲げてスタート。また、296スペチアーレを語るうえで重要となる3つの数字として「50」=50CVアップ、「60」=60kg軽量、「20」=20%ダウンフォース増加と紹介。続けてカランド氏は、「これまでのスペシャルモデルも成功してきましたが、この296スペチアーレは、それらのさらに上をいく性能を持ち合わせています」と語る。

296スペチアーレの3つの重要なパフォーマンスアップの指標数値

 また、搭載するV型6気筒2.9リッターツインターボエンジンについてカランド氏は、「さまざまなカテゴリーに参戦しているモータースポーツの場からヒントを得ていて、特にF1技術の1つであるエンジンノッキング・コントロール・システムを採用したことや、GT3マシンのエアロダイナミクス、さらにル・マン24時間耐久レースに参戦しているハイパーカー499Pからも軽量化のヒントを得たことで、最高峰のロードゴーイングカーが完成しました」と明かした。

 また、もっとも重要なのはドライバーを笑顔にしたり、アドレナリンが増えることで、フェラーリでは独自にドライビングエモーションの五感(加速、横G、シフト、ブレーキ、サウンド)の数値化をして、すべての要素の向上させることで最高の1台に仕上がるという。

ドライビングエモーションの五感(加速、横G、シフト、ブレーキ、サウンド)

 エンジン本体に関しては、「ワンメイクレースのフェラーリ ・ チャレンジ・トロフェオ・ピレリ参戦用レースマシン“296チャレンジ”が採用しているチタン製のコンロッド、強化ピストン、軽量化クランクシャフトを取り入れつつ、7.45kWのハイブリッドシステムは新たにエクストラ・ブースト・モードを加えることで167CV→180CVへとアップグレードを実施。システムトータル最高出力は830CVから50CVアップの880CVをマーク。後輪駆動としてはほぼMAXの数値ではないか」とカランド氏は語る。

パワートレーンの進化について

 また、シフトについてカランド氏は、「フェラーリはデュアルクラッチ・トランスミッションのおかげでシフトの速さには定評がありますが、296スペチアーレでは、従来よりもさらに速めていて、パドルでシフトチェンジした瞬間に、強大なトルクが路面に伝わります。これはどんなドライバーでもすぐに体感できると思います」とアピールした。

 さらに60kgという大幅な軽量化を実現したことについては、ボディの内外装はもちろん、エンジン本体にも手を入れていて、チタンパーツを取り入れたことでエンジン本体だけで9kgの軽量化を達成。ロードカーでは初めてチタン製のボルトまで採用。「コンロッドなど回転する部品を軽くすることは、ドライバーのフィーリングにも直結する」とカランド氏。

 外装の軽量化については、フロントバンパー、フロントボンネット、エンジンカバー、、リアディフューザーなどはすべて軽量で強いカーボンファイバー製を多用。内装もドアパネルやセンタートンネル、ダッシュボード下部などもカーボンファイバーを採用したことで、見た目の美しさも楽しめるという。

軽量化への挑戦

 エアロダイナミクスについてカランド氏は、「縦方向にも横方向にも寄与するエアロダイナミクスですが、実はデザイナーとエンジニアの意見が衝突しやすく、とても難しい部分です。296スペチアーレでは、フロントの開口部を広げたことで、冷却性のアップはもちろんですが、フロントから入った空気をボンネットから排出してルーフの上を通してリアへと導くエアロダンパーとしての機能も設けています。リアのデザインはかなり四角くなっていますが、両端にあるフィンはギリシャ文字のガンマ(Γ)に似ていることから、ガンマウイングと呼んでいます。垂直フィンは296チャレンジのマシンから、平行フィンはFXX-Kから着想を得ています。こうして最もパワフルで美しい1台に仕上がったのです」と説明を締めくくった。

フロントから取り込んだ空気はボンネット抜けてルーフの上えと導かれる
ダウンフォースの増加はもちろん、冷却効率のアップにも寄与している
リアもディフューザーから巻き上げたエアーとルーフから導かれたエアーをうまく後方へと排出
両端の羽は「ガンマウイング」と名付けられている

296スペチアーレ実車を国内で初披露

 富士スピードウェイホテルには、国内だけでなく海外からもイベント「Ferrari Racing Days 2025」に参加する人が大勢宿泊していて、296スペチアーレの初お披露目が実施された。スタッフによると価格は5911万円ほど。

ボディサイズは4625×1968×1181mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2600mm
フロントトレッド幅は1665mm、リアトレッド幅は1632mm、車体に書かれたゼッケン「25」は、2025年の「25」、バッテリだけの航続距離25kmの「25」とかけているとのこと
重量配分は前40%:後60%。乾燥重量1410kg、パワーウエイトレシオは1.60kg/CV(乾燥状態)
装着タイヤはミシュランが専用に開発した「パイロットスポーツCUP2」で、サイズは前245/35ZR20(ホイール9.0J)、後305/35ZR20(ホイール11.0J)。ホイールもカーボンファイバー製。ブレーキローター径はフロント398φ、リア360φ
フロント両サイドのダクトでブレーキの冷却およびタイヤハウス内の圧力を低減する
センサー類はフロント中央部に配置されている
トランク容量は169L、リアベンチ容量は112Lを確保している
フロントボンネットもカーボンファイバーを採用
リアの中央部に可動式のウイングが内蔵されている
リアディフューザーもカーボンファイバー製
新たに造形された特徴的なデザインとなる「ガンマウイング」
センター出しマフラーはチタン製
V型6気筒2.9リッターターボエンジンは、最高出力515kW(700CV)/8000rpm、最大トルク755Nm/6000rpm。最高回転数は8500rpm。ハイブリッドシステムを加えたトータル最高出力は648kW(880CV)。燃料タンク容量は65L。バッテリのみで走るeDribeモードの最高出力は113kW(154CV)で航続距離は25km
シートやドアパネルなどもカーボンファイバーを多用
レイアウトは296GTBとほぼ同じ