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ニュル24時間でモリゾウ選手の15周を実現した、豊田大輔、大嶋和也、石浦宏明選手のサポート

ニュルブルクリンク24時間レースの最終スティントを担当した豊田大輔選手(左)を出迎えるモリゾウ選手こと豊田章男氏(中央)

モリゾウ選手の15周をサポートしたTGRRのドライバー

 6月21日から22日の24時間にわたってニュルブルクリンク24時間レースが開催された。このニュル24時間レースにトヨタ自動車とルーキーレーシングは「TOYOTA GAZOO ROOKIE Racing(以下、TGRR)」としてGRヤリスの8速AT仕様である109号車 GRヤリス DATで参戦。見事ニュル24時間を113周で完走し、総合52位、SP2Tクラス優勝という結果を得た。このGRヤリスは、ニュル24時間用に安全装備やサスペンションなどは変更されているものの、パワートレーンは市販と同様。G16E-GTS型エンジンや8速AT GR-DAT、そしてGRヤリスの優れた素質を世界に示したことになる。

 また、このGRヤリスは二人のアマチュアドライバー(ジェントルマンドライバー)と、二人のプロドライバーがドライバーとして参戦していた。一人はもちろん69歳でチャレンジしたモリゾウ選手こと豊田章男会長で、2日間にわたって2スティント、合計15周を走行。モリゾウ選手自身が、スーパー耐久に参戦することで進化してきたことを示すとともに、8速AT、2ペダル操作のGRヤリスのポテンシャルを示した。

ニュルブルクリンク24時間レースを戦ったTOYOTA GAZOO ROOKIE Racingのスタッフ。24時間完走後の記念写真

 そしてもう一人のジェントルマンドライバーは豊田大輔選手。スーパー耐久ではST-QクラスのGR86をドライブすることが多い豊田大輔選手だが、ニュルブルクリンク24時間へ向けてはGRヤリスを、テスト段階から担当。プレテストとなったNLS(Nürburgring Langstrecken-Serie)の4時間耐久レースでもプロドライバーと同等の走りを披露しており、ニュル24時間へ向けてしっかり走り込んでいた。豊田大輔選手は実に47周を走り、全周回数の41.5%を担当した。

モリゾウ選手(左)と何やら話す石浦宏明選手(中央)。右はTGR グローバル MSディレクター 加地雅哉氏

 プロドライバーとしてモリゾウ選手の15周を支えたのが、ルーキーレーシングの大嶋和也選手。大嶋選手は37周を走り、全体の32.7%を担当。とくに大嶋選手はモリゾウ選手の次のドライバーとしてスタンバイし、モリゾウ選手がスティントでの周回数を伸ばすことを積極的にサポートしていたのが印象的だった。モリゾウ選手としてはどこまで自身の周回数を伸ばしていけるかを探りながら走行しており、大嶋選手は次のドライバーとしていつでも行けるようにスタンバイ。ニュルブルクリンクは1周24.358kmと長大なため、モリゾウ選手の走りを確認しつつ、ヘルメット装着を行なっていたのが印象的だった。

夜中に自身のスティントを待つ大嶋選手

 もう一人のプロドライバーが石浦宏明選手。石浦選手の109号車における記録は16周と少ないが、実は石浦選手はもう1台のGRヤリスである382号車もドライブしていた。

 この382号車は予備車として参戦しており、109号車に万が一なんらかの大きなトラブルが起きたときのための対応と、モリゾウ選手が走行する際には石浦選手が先導車として使用されていた。その際は2台での走行を基本としていたが、モリゾウ選手のペースがよくニュルブルクリンクのグランプリコースエリアではモリゾウ選手が石浦選手をつつくほど。石浦選手はこの382号車で19周しており、合計35周を走行することでモリゾウ選手の15周をしっかりサポートしていた(ちなみに豊田大輔選手はプロドライバー並みに速いのでサポートなし)。

夜のスティントを終えた石浦宏明選手

 134台がスタートし、88台が完走として記録された2025年のニュルブルクリンク24時間レース。クラッシュも相次ぎ、停電も起こる中で完走率65.7%というサバイバルレースとなっていたが、市販パワートレーンで挑んだGRヤリスは見事完走という結果を得た。4人のドライバー、そしてそのドライバーを支える多くのチームスタッフ、これまで鍛え上げてきた開発スタッフの努力が記録となった結果と言える。

豊田大輔選手(左)と大嶋選手(右)。NLS 4時間における撮影
NLS 4時間で無事完走後の石浦選手。この参戦&完走がニュルブルクリンク24時間レース完走につながった

 トヨタはこのニュルブルクリンク24時間レースのゴールから18日後に新型GT3車両「トヨタGT レーシングコンセプト」を発表し、おそらくGRヤリス同様にニュルブルクリンク24時間レースなどに挑んでいくものと思われる。

 その際にTGRRとして挑むのかどうかは不明ではあるが、2025年のニュルブルクリンク24時間レースで強さを見せたTGRRがベースとなっていくのは間違いないだろう。

TGRRの戦いを見守っていた成瀬弘氏

 ニュル24時間レースを完走したTGRRとGRヤリス DATは、7月26日~27日に開催されるスーパー耐久第5戦オートポリスに参戦することが発表されており、日本でもその走りを見ることが可能になった。サスペンションなどはオートポリスに合わせてリセッティングされると思うが、ニュル24時間と同様に市販GRヤリスと同じパワートレーンでの戦いとなるだろう。

 なお、オートポリスのエントリーリストはすでに発表されており、32号車 TGRR GR Yaris DAT(MORIZO/佐々木雅弘/石浦宏明/小倉康宏)と、104号車 GR Yaris DAT Racing Concept(大政和彦/山下健太/中山雄一/松井孝允)の2台がST-Qクラスから参戦する。