ニュース

WRC第9戦ラリーフィンランド、豊田章男TGR-WRT会長がトップ5独占に祝福コメント

「今まで以上に楽しんで走れるようなクルマを、チームみんなでつくっていきましょう!」

WRC第9戦ラリーフィンランドでトップ5を独占したTGR-WRT(TOYOTA GAZOO Racing WRT)。シャンパンファイトに、ユハ・カンクネンチーム代表代行(左)も参加

 7月31日~8月3日の4日間にわたりWRC(世界ラリー選手権)第9戦ラリーフィンランドがユバスキュラ市を中心に開催された。8月3日の最終日は今大会最長となる23.98kmの「オウニンポウヤ」がSS19とSS20に設定され、SS20は「パワーステージ」としても設定された。

 最終日開始時点で、首位のカッレ・ロバンペラ選手と2位の勝田貴元選手の差は36.1秒、2位の勝田選手と3位のセバスチャン・オジエ選手の差は42.9秒とそれなりの差があったものの、TOYOTA GAZOO Racingはすべての選手が激しくアタックするなど、最終日の最終ステージまで熱い戦いが繰り広げられた。

SS20での表彰台。優勝したロバンペラ選手のフィンランド国歌に続き、チームの母国である日本の国歌も流れる

 最終となるSS20のオウニンポウヤ2では、セバスチャン・オジエ選手がそれまでの最速となるティエリー・ヌービル選手のタイムを1.5秒短縮すると大きな拍手が起き、さらにそのタイムをユバスキュラ市に長らく住んでいて地元人気も高い勝田選手が0.4秒更新。スプリットタイムのマイナス表示が出る度に、フィンランドの会場に集まった多くの人から「TAKA~」という声援と大きな拍手に会場が包まれた。

 この時点でほぼ2位を確定的にしている勝田選手には、抑えて走るという選択肢もあったのだが、会場から見ている限りはオジエ選手のタイムを上回るなど、どう考えてもフルアタック。無事に走りきってという思いで一杯だった。

 走行後、勝田選手に聞いたところではそれほど無理はしておらず、「思ったよりタイムが出ていた」とのこと。このラリーフィンランドでの調子のよさが、タイムに出ていたのだろう。

 驚くべきは最後に走ったロバンペラ選手で、勝田選手のタイムをさらに2秒短縮するなど、驚速の走りを披露。ロバンペラ選手もSS20開始時点で勝田選手との差は37.2秒あったため地元での優勝を確実とする走りもあったのだが、驚異的な走りで勝田選手のタイムを2秒短縮し、地元での初優勝を挙げるとともに、ラリーフィンランドの優勝、スーパーサンデーの優勝、パワーステージの優勝と、25点+5点+5点のフルポイント獲得。シリーズトップのエバンス選手まで3ポイント差の173ポイントに伸ばした。

 いずれにしろ、トヨタドライバーの誰にもチームオーダーが出ていないことが感じられる戦いぶりで、最後まで緊張感のあるラリーフィンランドを実現していた。

チームコメント

豊田章男 TGR-WRT会長

ドライバー、コ・ドライバーのみんな1-2-3-4-5フィニッシュおめでとう!

ヤリ-マティのWRC2クラス2位も含め、地元ユヴァスキュラの皆さんに最高の恩返しができました。チームのみんな本当にありがとう!

カッレは母国フィンランドでの初優勝おめでとう! 一昨年も昨年もホームラリーで悔しい思いをしていたと思うけど、やっと地元のみんなに優勝する姿を見せられて本当によかった! 地元のヒーローおめでとう!

貴元も第2の故郷で2位表彰台おめでとう! 一昨年前と同じようにシャンパンをかけてあげたかったけど、今年はそちらに行くことができませんでした。次のシャンパンは貴元が一番高いところに立ったときにとっておきます。第1の故郷でもがんばろう!

エルフィンはチャンピオンに向けて大切なラリーをしっかり走り切ってくれました。今シーズンもあと5戦、どのラリーも最後まで楽しんで走り切ってほしいです。そうできるようなクルマをチームみんなで準備していきます。

そんなエルフィンに良いプレッシャーをかけ続けるセブにも、もちろんいいクルマを準備していきたいと思います。

あと5戦。ドライバーたちが今まで以上に楽しんで走れるようなクルマを、チームみんなでつくっていきましょう! よろしく頼みます!

ユハ・カンクネン(チーム代表代行)

私たちにとって信じられないようなリザルトです。このリザルトをWRCチームが最後に成し遂げたのは、私がドライバーとして3位でフィニッシュした35年前のことです。昨日に関しては少し助けられた部分もありましたが、それもラリーでは起こりうることですし、ドライバー選手権とマニュファクチャラー選手権にとって素晴らしい結果になりました。カッレがホームラリーで彼本来のペースを取り戻し、優勝したのは本当に嬉しかったです。フィンランド人のドライバーにとっては重要な結果ですし、私自身は11回目の挑戦でようやく成し遂げたので、カッレが私より少し早く地元優勝を達成したのは素晴らしいことです! 今日の朝のチームの雰囲気はとても良く、ドライバーたちは全力で戦いに臨みました。貴元は非常に冷静でなおかつ速さもあり、素晴らしい戦いをしてくれました。そしてセブ、エルフィン、サミも素晴らしかったです。私はドリームチームに恵まれています。この後もシーズン終了まで、彼ら全員が素晴らしい結果を残し続けることを確信しています。

エルフィン・エバンス (GR YARIS Rally1 33号車)

5台すべてがトップ5に入ったことは、チームにとって本当に素晴らしい結果です。ただし、私自身は最終日の結果に少しがっかりしています。エキサイティングなフォーマットでしたし、オウニンポウヤの1回目の走りはかなり良かったと思います。しかし、2回目のパワーステージは、それほど素晴らしいものではありませんでした。ステージの2、3カ所で思い通りにクルマを曲げることができず、多くのタイムを失いました。それ以外は良いステージでしたが、僅差の戦いだったため、多くの追加ポイントを獲得する機会を逃しました。それでも、次の戦いに向けて前に進みます。

カッレ・ロバンペラ (GR YARIS Rally1 69号車)

ラリー・フィンランドで優勝することができて、素晴らしい気分です。長い道のりでしたが、毎年ファンの皆さんから多くのサポートを受けてきたので、皆さんの前で優勝できたことは本当に幸せです。今年は皆が信じられないほど努力し続けた末に、この結果を成し遂げることができました。ヨンネとチームスタッフ全員の働きは素晴らしく、自分たちは週末を通してプッシュし続けました。トヨタが1位から5位までを独占した歴史的な瞬間でもあり、皆が素晴らしい仕事をしたと思います。最も過酷なステージの一つで最終日を戦い抜くのは大変でしたが、ポイントを獲得するために全力でプッシュし、それを成し遂げることができました。

セバスチャン・オジエ (GR YARIS Rally1 17号車)

これは素晴らしいリザルトですし、とくにチームの本拠地であるフィンランドでの勝利は特別です。きっと今夜はビッグパーティーになるでしょう! チームは一年を通してずっと全力で頑張ってきたので、努力が報われたと思いますし、私がその歴史的な記録の一部になれたことを嬉しく思います。また、昨年すでに優勝に値するラリーを戦っていた、カッレとヨンネが今回勝ったことも本当に嬉しいです。私自身は週末を通じてスムースさが足らず、ペースについていくのに苦労しました。しかしラリー中に多くの変更を加えた結果、今日は私に合うセッティングが得られ、このクルマで、素晴らしいフィーリングを感じながら伝説的なステージを走ることができました。

勝田貴元 (GR YARIS Rally1 18号車)

ゴール後海外メディアのインタビューに応える勝田貴元選手

フィンランドという、自分とチームにとって重要な場所で表彰台に復帰し、2位でフィニッシュできたことを本当に嬉しく思います。応援してくれたフィンランドのファンの皆さん全員に感謝します。キートス・パルヨン(=フィンランド語で、本当にありがとう)。また、いつもしっかりとサポートしてくれたチームのみんな、とくに、素晴らしい仕事をしてくれたアーロンにも本当に感謝しています。チームと、幾度の不運を乗り越えてカッレがようやく地元で優勝できたことも、本当に嬉しいです。ラリー前に二人で約束したように、今日は一緒に表彰台に立つことができました。この週末の自分のパフォーマンスにも満足していますし、クルマも非常に良く走ってくれました。

サミ・パヤリ (GR YARIS Rally1 5号車)

トヨタの一員としてこのリザルトに貢献できたのは、本当に素晴らしいことです。チームはこの週末本当に頑張っていたので、この結果は皆の努力の賜物です。自分たちもベストタイムを何度か記録し、全体的に安定したペースを維持できていたので、本当に良い週末でした。今日は確実に結果を残すことを最優先しながらも、オウニンポウヤのようなステージを走ることができて楽しかったです。週末を通して本当に楽しめたので、チームとファンの皆さんのサポートに感謝します。

勝田貴元選手は、速く強い走りを披露した

WRC第9戦ラリーフィンランド 結果

1 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ GR YARIS Rally1) 2h21m51.4s
2 勝田貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ GR YARIS Rally1) +39.2s
3 セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ (トヨタ GR YARIS Rally1) +45.1s
4 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ GR YARIS Rally1) +48.1s
5 サミ・パヤリ/マルコ・サルミネン (トヨタ GR YARIS Rally1) +1m18.8s
6 ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒョンデ i20 N Rally1) +2m01.5s
7 ジョシュ・マッカーリーン/オーエン・トレーシー (フォード Puma Rally1) +4m07.4s
8 マールティンシュ・セスクス/レナールス・フランシス (フォード Puma Rally1) +5m17.2s
9 グレゴワール・ミュンスター/ルイス・ルッカ (フォード Puma Rally1) +5m24.9s
10 オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (ヒョンデ i20 N Rally1) +7m38.4s
(現地時間8月3日20時30分時点のリザルト)

WRC第9戦終了時点でのドライバー選手権順位

1 エルフィン・エバンス 176ポイント
2 カッレ・ロバンペラ 173ポイント
3 セバスチャン・オジエ 163ポイント
4 オィット・タナック 163ポイント
5 ティエリー・ヌービル 125ポイント
6 勝田 貴元 87ポイント
7 アドリアン・フォルモー 71ポイント
8 オリバー・ソルベルグ 52ポイント
9 サミ・パヤリ 48ポイント
10 グレゴワール・ミュンスター 21ポイント

WRC第9戦終了時点でのマニュファクチャラー選手権順位

1 TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team 458ポイント
2 Hyundai Shell Mobis World Rally Team 371ポイント
3 M-Sport Ford World Rally Team 129ポイント
4 TOYOTA GAZOO Racing WRT2 85ポイント

 第10戦は8月28日から31日にかけて、WRCとして初めて開催される第10戦「ラリー・デル・パラグアイ」。ラリーの中心となるサービスパークは南部のエンカルナシオンに置かれ、グラベルラリーとして開催される。