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三菱自動車、2025年度通期の業績見通しを下方修正 実施予定だった価格アップや販売費抑制が実行困難と判断したため
2025年8月27日 20:06
- 2025年8月27日 開催
三菱自動車工業は、7月24日に発表した2025年度第1四半期(2025年4月1日~6月30日)決算に関する補足説明会を8月27日に開催した。
7月24日の第1四半期決算説明会では、2025年度通期の業績見通しについて「日米間で合意された関税政策の影響が多岐に渡り、この精査が必要で現時点での見極めが困難」との理由から、同日の時点では期初発表の内容を据え置きとして、「今後に精査が完了してより明確な見通しが立ち、修正が必要な場合はその時点で速やかに発表する」としていた。
この精査が終わり、今回の補足説明会では修正された2025年度通期業績見通しが発表された。期初発表の通期見通しでは、売上高2兆9500億円、営業利益1000億円、経常利益900億円、当期純利益400億円と発表していたが、これら主要な財務指標について下方修正を実施。売上高は900億円減の2兆8600億円、それ以外はそれぞれ300億円減として、営業利益700億円、経常利益600億円、当期純利益100億円に下方修正している。また、小売販売台数も期初見通しの87万8000台から9000台減の86万9000台とした。
説明会で通期業績見通しの修正について発表した三菱自動車工業 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤隆雄氏は、「本日時点においても関税15%の適応時期が明確になっていない状況ではありますが、いったん『10月から関税が15%に下がる』ことを前提として、現在の販売環境などを織り込んで今期の業績見通しを表で示したとおり修正することといたしました」と前提について説明。なお、株主還元については1株あたり10円という配当を期初発表どおりで維持する。
業績見通しを修正した要因としては、1つめに関税コストを吸収するため実施する予定だった販売価格のアップやインセンティブの削減について、想定どおりの実行は困難であると判断したこと、2つめに米国の関税による販売台数減を挽回するため他市場での販売競争が激化しており、販売費の増加などが今後会社の収益を圧迫すると考えられることを挙げた。
通期見通しにおける営業利益の変動要因としては、米国の関税影響が10月から15%に引き下げられるとの想定から129億円好転すると試算しつつ、一方でアフターセールス部品、米国自治連邦区であるプエルトリコなどの関税支払想定額の見積もり不足額を追加で織り込み、さらに販売価格のアップやインセンティブの削減が想定どおり進まない実態を反映し、総計で20億円の減益要因として設定した。
また、前回発表では米国の関税影響として直接影響で300億円、間接影響で100億円の計400億円の減益要因と試算を行なったが、他地域を含む間接影響は把握が困難なことから、今回の試算では北米での直接影響に定義を絞って320億円のマイナス要因として示している。
このほかの要因では、各国市場での競争激化による台数影響と販売費増加で190億円、為替やインフレの影響による調達コストの増加などで210億円を減益要因として、コスト削減努力などで一定程度を打ち返して700億円の営業利益を見込んでいる。
販売台数でもこれまでの実績を踏まえて修正を実施。北米市場で9000台増、日本、中国他市場で増減なしとした以外では台数減として、全体で9000台減とした。北米市場で販売台数が増える要因としては、関税影響を考慮して一時的にストップしていたフリート販売を復帰させることが要因として説明されている。
最後に加藤社長は「今回の見直しで、現時点で予測される悪化要因はひととおり見直し値に反映いたしました。今後は確実に今回の見直し値を達成すべく進めてまいります。一方、自動車業界は引き続き急速、かつドラスティックに変化し続けていると認識しております。この急速な変化に対応するため、一定の収益を確保しつつも、さまざまな改革にスピード感を持って対応してまいります」とコメントしている。
新型車の販売が非常に好評と加藤社長
加藤社長による説明後に行なわれた質疑応答では、年度の後半に向けて注視していきたい今後の展開について質問され、加藤社長が「今後のリスクとオポチュニティとしては、先ほどから申しているように、関税が15%に減ることは決まっても、その時期がいつになるのかはっきりしておりませんので明確にお答えするのは少し難しい点もあります。リスクとしては、米国を含めた各国市場で競争がかなり激化しております。また、自動車以外の関税についてもほぼ決まって、これが本格的に経済の停滞という形になってリスクが表面化するのはこれからになるだろうと思いますので、そこで下振れするリスクも十分にありうるのかなと思います」。
「オポチュニティという面では、カナダやメキシコといった市場でもっとわるい影響が出るのではないかと考えていたところが、それほど大きな影響が出ていないところ。これをオポチュニティというのは少し微妙ですが、そこはあるかと思います。それから、当社に限って言えば、新型車の販売が幸いにして出だしが非常に好評となっており、それから日本市場では継続して販売台数が伸びております。こういった部分をプラス側に取り込んでいきたいと考えています。あと、オポチュニティとしてはもちろん、関税が15%に下がるというところがあって、これが好転要因になると思います」と回答した。
関税が地域別に見た販売状況に対してどのような影響を与えているかという質問には、三菱自動車工業 代表執行役副社長(営業担当)中村達夫氏が回答。「期初予想では、米国以外のメキシコやカナダ、アセアンの一部地域、ドイツなどで販売が減少すると考えていましたが、とくに北米市場ではわれわれはむしろ販売台数が増えているぐらいです。そこの部分はプラスになっています。一方で、米国販売の影響で他社さんがアセアンなどの地域で販売を強化したことにより、プラスになったことと同じぐらいの台数が減っております」。
「メキシコやカナダのプラスと、それ以外のマイナスでプラスマイナスゼロぐらいになりますが、販売台数を維持するためにVME、販売費用を使っている部分もあります。そこの影響が(営業利益の減益要因になっている)-190億円という部分です。アセアンで一番影響が出ているのはベトナムで、販売は好調ながらある程度の販売費用を使わなければならない状況になっています」。
「また、これは関税と直接影響があるのか分かりませんが、タイでピックアップトラックの需要が回復しておらず、『エクスフォース』のハイブリッドは非常に好調な一方、『エクスパンダー』のハイブリッドモデルが中国メーカーにやられて、もしくは他社の値引きに影響されていて、これにインセンティブを付けなければならない状況です。また、欧州や豪州でも同じように他社さんが値引きをしていて、特に『アウトランダー』クラスやもう少し小さいSUVで値引きを行なっているので、そこで予算を使っている形です」。
「また、欧州や北米で販売が減少した要因として、特に欧州では『アウトランダーPHEV』が非常に好調ながら、本来ならフリートやカンパニーユースといったところに最も台数を稼ぎたい4-6月というタイミングで、日本での雹害などが発生してデリバリーが遅れ、Q1、Q2のところでフリート需要を逃した問題が不幸にも起きました。ここはこれからしっかりと挽回していかなければならないと考えています」。
「米国では25%の関税が15%に下がるので、そこでこれまで止めていたフリート販売も採算が見込めるものは再開して台数を稼ぎたいと思っていて、一方でアウトランダーなど採算が難しいモデルはあまり無理して売らない。ただ、8月に発表した500台限定の『トレイルエディション』はすでに400台の受注をいただいて非常に好評です。こういった付加価値の高いモデルの販売で、台数を追えない状況でもしっかりと利益を挽回していきたいと思っております」と回答している。






