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三菱自動車、2025年度第1四半期決算 売上高6091億円で営業利益は84%減の56億円、米国の関税や為替の影響など減収減益
2025年7月24日 19:53
- 2025年7月24日 開催
三菱自動車工業は7月24日、2025年度第1四半期(2025年4月1日~6月30日)の決算を発表した。
2025年度第1四半期の売上高は前年同期(6275億2200万円)から2.9%減となる6090億9100万円、営業利益は前年同期(355億1900万円)から84.1%減の56億3500万円、営業利益率は0.9%、経常利益は前年同期(423億8800万円)から88.6%減の48億3900万円、当期純利益は前年同期(294億6800万円)から97.5%減の7億3800万円。また、グローバル販売台数は前年同期(19万4000台)から大きな増減なく19万4000台となった。
関税交渉の日米合意による影響緩和に期待
オンライン開催された決算説明会では、最初に2025年度第1四半期の決算内容について三菱自動車工業 代表執行役副社長(CFO)松岡健太郎氏が解説。
前日の7月23日に日本と米国の関税交渉が合意したことを受け、この内容の詳細を確認しつつ、4月から25%に設定されていた自動車に対する関税も15%に引き下げられたことによる影響緩和に松岡CFOは期待を示した。
一方、今回の第1四半期決算については25%の関税下となっており、米国における販売で影響を受けているほか、米国市場以外についても競合各社が米国での販売減を他地域で補おうとする動きが進み、競争が一段と激しくなっていると説明。販売環境はこれまで以上に厳しい局面になったと説明した。
営業利益の変動要因としては、アセアン、日本、欧州などで販売が堅調に推移したこと、北米市場での売価改善などが増益要因となって「台数/車種構成」「売価他」で計78億円の増益とした一方、各国市場における競争激化の影響で販売促進費用が増加したことによって「販売費」で90億円、為替レートが対米ドル、豪ドル、タイバーツなどでマイナス要因に働いたことで「為替」で209億円のそれぞれ減益要因となり、これに加えて「関税影響」として144億円の減益要因を計上している。
市場別の販売状況では、アセアンでは中国メーカーの新規参入が続き、タイやインドネシア市場での全体需要減を受けて販売が激化。三菱自動車では新型車の市場投入、各国のディーラーや金融機関との連携強化といった販売戦略によって販売の維持に努め、成長が期待される市場セグメントに対して新型車をタイムリーに、戦略的に投入してシェアの拡大と収益性向上を目指していく。
オセアニア地域の中核となる豪州市場では政策金利の上昇、PHEV(プラグインハイブリッドカー)が税制優遇から除外されたことで主力モデルが苦戦したが、新型「トライトン」のラインアップ完成などの競争力強化で市場での優位性を再構築していくとした。
中南米では主要各国の景気回復で自動車需要が堅調に推移。この状況で新型車投入によって販売を拡大し、今後もこのモメンタムを維持しつつ、予定している新型車投入でさらなる拡販を推し進めていく。
中東でもGCC(湾岸協力理事会)諸国を中心に自動車需要が堅調に伸びており、これまで低迷していたサウジアラビアでのピックアップカーが回復傾向となっているが、UAE、サウジアラビア、クエートなどで在庫構成や価格競争、納入遅延などが影響して販売台数は前年同期並みにとどまった。
日本では「デリカ D:5」「アウトランダーPHEV」の販売が好調に推移して販売台数を増やし、市場シェアも拡大。今後に向けて販売会社と協力して販売力を重点的に強化していくとした。
北米では追加関税による価格上昇を見越した駆け込み需要の発生と反動減、カナダでの電動車の補助金停止に伴う電動車セグメントの縮小といった外部環境の影響を少なからず受けており、今後も変化に対して柔軟に対応していくと述べた。
欧州では主要国で需要が低迷したほか、販売競争の激化や値引き圧力の影響で販売が苦戦。今後は販売が本格化したアウトランダーPHEVの拡販に注力し、下期に予定している新型車の市場投入に向けて万全の準備を進めていく。
なお、2025年度通期の業績見通しについては、日米間で合意された関税政策の影響が多岐に渡り、この精査が必要で現時点での見極めが困難なことから、現時点では期初発表の内容を据え置きとした。今後に精査が完了してより明確な見通しが立ち、修正が必要な場合はその時点で速やかに発表すると述べて理解を求めた。
新型SUV「デスティネーター」を順次グローバル展開
第1四半期期間のビジネスハイライトとしては、7月17日にインドネシアで世界初公開した新型ミッドサイズSUV「デスティネーター(DESTINATOR)」について説明。クロスオーバーMPV「エクスパンダー」、コンパクトSUV「エクスフォース」に続くインドネシア発となる世界戦略車の第3弾であるデスティネーターは、アセアン地域を中心に南アジア、中南米、中東アフリカといった市場に順次グローバル展開していくと述べた。
また、エクスフォースにはHEV(ハイブリッドカー)モデルを3月から追加して販売が本格化。エクスパンダーに続く2つめのHEVラインアップとなっており、ASEAN NCAPで最高評価となる5つ星を獲得する高い安全性能を備えており、発表してから想定を超える5500台以上の予約受注が寄せられるなど、好調な立ち上がりとなっているとアピールした。
アセアン市場では中国メーカーのBEV(バッテリ電気自動車)による低価格攻勢が進んでいるが、これからもこれらのモデルを中核として市場での成長機会をとらえていくと語った。
決算説明の最後に松岡CFOは、「今回の関税の動向のみならず、引き続き中国メーカーの進出、AIなど新しい技術に進化により、自動車業界は大きく変化をしております。これらに対処するため、スピード感を持って事業基盤の見直しや強化に取り組んで、引き続き事業の安定化を図ってまいります」と締めくくった。
質疑応答
説明会後半に行なわれた質疑応答では、合意された日米間の関税政策に関連する点に質問が集中。松岡CFOは基本的には詳細が分かっておらずこれから精査していくとしつつ、今後も引き続きコスト削減などを含めた総合的な対応で関税の影響をカバーしていきたいと説明。また、4月から25%となっていた関税率が15%に引き下げられた状況を見極めてさまざまな面で検討したいと述べた。
また、アセアン市場での戦略については三菱自動車工業 代表執行役副社長(営業担当)中村達夫氏が答え、「ベトナムやインドネシアといったアセアン市場では(米国との)関税が19%というあたりで固まりましたので、これは非常にポジティブだと思っています。一方で、内政を見てみるとネガティブな部分もあって、プラスマイナスの両方をしっかりと分析していかなければならないと思っています」。
「インドネシアでは新たにデスティネーターを発表したところ、非常に好評で、ネットでの再生回数が累計で6500万回になるといった形でも好評価になっていて、『やっと自分たちがお金を使いたくなるようなクルマが出てきた』といったムーブメントをしっかりととらえていきたいと考えています」と回答した。












