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デンソーと東京大学、社会連携講座「AI技術を活用して持続発展する次世代生産システム運用基盤の構築」を共同開設

2025年8月28日 発表
次世代生産システム運用基盤の概念図

AIで熟練者の知識を体系化

 デンソーと東京大学大学院工学系研究科は8月28日、社会連携講座「AI技術を活用して持続発展する次世代生産システム運用基盤の構築」を4月1日に開設したと発表した。

 社会連携講座とは、公共性の高い共通の課題について共同して研究を実施しようとする民間等外部の機関(国立研究開発法人を除く)の経費などを活用して、学部や研究科などの教育研究を行なう機関に設置される講座のこと。

 新たに開設された講座では、日本の製造業の強みである、無駄を徹底排除した効率的な生産方式を実現する生産管理や現場マネジメント手法である「リーンマニファクチャリング技術」をデジタル化やAI技術の活用によってさらに強化し、次世代の生産システム運用基盤を構築することを目指している。従来、生産現場にて熟練者から伝承されてきた熟練知識の体系化と生産システムの持続的発展を追求するとともに、収集・整理された情報を次世代モノづくり教育へ展開することで、将来の製造業を担う人材育成にも貢献するとしている。

 開発の背景には、日本の製造業はリーンマニファクチャリング技術を強みとする一方で、労働人口の減少、熟練知識の継承難といった深刻な課題に直面しており、これらの課題を克服し、持続的な成長を遂げるためには、生産現場におけるデジタル化の推進、AI技術の活用が急務となっていることがある。

 さらに、生産現場には日々膨大なデータが蓄積されているものの、それを十分に活用しきれていない現状があると同時に、熟練者が持つ技能や判断力などの熟練知識は形式知化が難しい暗黙知となっており、その継承も大きな課題となっている。

 生産性を飛躍的に向上させ、変化に強い生産システムを構築するために、膨大なデータと熟練知識をAI技術によって融合し、新たな価値を創出することが求められている。

具体的な研究内容

生産システム運用時の稼働データ分析プロセス・ロジックの知識体系化

 生産現場から得られる稼働データをどのように分析し、改善につなげるか、そのプロセスとロジックを再利用可能な知識として体系化する。

稼働データと工程・設備モデルからの情報抽出、異常原因と対策案の分析・推論

 センサーデータや画像などの詳細な稼働データと、生産工程や設備のモデルを組み合わせ、AIを用いて有益な情報を抽出。それを踏まえて、生産上の異常原因やその対策案を自動的に分析・推論する技術を開発する。

生産システム運用基盤の持続的発展のためのモデル・知識管理

 開発した知識モデルや蓄積した知識を常に最新の状態に保ち、生産システムが持続的に進化・発展していけるような、効果的なモデル管理および知識管理の手法を構築する。

研究成果の体系化、次世代モノづくり教育への展開

 本講座で得られた研究成果を整理・体系化し、AIやデータを活用する未来のモノづくりを担う人材を育成するための教育プログラムとして展開。

 東京大学の持つ最先端のAI研究能力と、デンソーが長年培ってきたモノづくりの知見・技術をかけ合わせ、持続的に発展する次世代生産システム運用基盤の構築に資する手法の確立を目指す。

講座概要

講座名称:AI技術を活用して持続発展する次世代生産システム運用基盤の構築
設置期間:2025年4月1日~2029年3月31日
設置部署:東京大学大学院工学系研究科
協働企業:株式会社デンソー
担当教員:
太田順氏(東京大学 大学院工学系研究科 附属人工物工学研究センター 教授)
梅田靖氏(東京大学 大学院工学系研究科 精密工学専攻 教授)
原辰徳氏(東京大学 大学院工学系研究科 附属人工物工学研究センター 准教授)
上西康平氏(東京大学 大学院工学系研究科 附属人工物工学研究センター 特任講師)