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住友ゴム、タイヤ・路面摩擦粉じんに対する取り組み成果を国内外の学会で発表
2025年9月2日 16:42
- 2025年8月29日 発表
住友ゴム工業は8月29日、自動車の走行時にタイヤと路面の摩擦によって発生する粉じん(TRWP:Tire and Road Wear Particles タイヤ・路面摩耗粉じん)に対する取り組み成果を、国内外の学会で発表した。
住友ゴムは、TRWPが環境に及ぼす影響の解明と低減を重要課題と認識し、タイヤの耐摩耗性を高めることでTRWP発生量の低減に取り組んできた。現在はTRWPの(1)発生、(2)拡散、(3)蓄積の3段階に着目して調査と研究を進めており、今回「(1)発生」のメカニズムと「(2)拡散」の抑制に関わる研究について、発表した。
TRWPは未解明な点が多く、特に環境への影響はさらなる研究と検証が求められていて、住友ゴムはWBCSD(The World Business Council for Sustainable Development /持続可能な開発のための世界経済人会議)傘下のTIP(Tire Industry Project /グローバルタイヤメーカー10社からなる業界団体)に発足当初より参画し、TRWPに関する調査研究、評価手法の確立、ステークホルダーとの対話などに取り組んでいる。また、JATMA(日本自動車タイヤ協会)やJRMA(日本ゴム工業会)の一員として、TRWPの評価に関するISO規格の策定にも関与している。
こうした業界団体での活動に加え、今回の発表内容など独自の研究にも取り組んでいて、今後に向けて住友ゴムでは、科学的データに基づくアプローチを通じてTRWPに関する課題と真摯に向き合い、タイヤメーカーとしての社会的責任を果たすべく、環境負荷の低減に取り組んでいくとしている。
TRWPとは
自動車の走行時にタイヤと路面の摩擦によって発生する微細な粉じんで、主にタイヤのトレッド部材と道路舗装材からなる混合物のこと。タイヤは自動車部品で唯一路面と直接接触し、車両と乗員の荷重を支えながら、「走る(発進する)」「曲がる」「止まる」といった、安全な走行を支える基本的な機能を担っている。これらの機能を成立させるには、タイヤと路面の間に適切な摩擦が生じていることが不可欠。ただし、自動車の走行に伴いTRWPが(1)発生、環境中に(2)拡散、さらに(3)蓄積することで、環境にさまざまな影響を及ぼす可能性が指摘されている。
TRWPに対するアプローチ
住友ゴムは、TRWPの発生から環境中での挙動までを包括的に捉え、外部の研究機関や企業と連携しながら、(1)発生、(2)拡散、(3)蓄積の各段階に焦点を当てた研究を進めている。
(1) 発生:TRWPの形成メカニズムの解明
総合的な道路インフラソリューション企業であるニチレキグループと協力し、TRWPの発生メカニズムに関する調査を進めている。2025年3月に開催された「Tire Technology Expo 2025」および8月に開催された「第30回舗装工学講演会」にて調査手法や構造など、形成メカニズムの解明に重要な情報を得たことを発表した。引き続きメカニズムの解明に取り組み、タイヤと路面の両面からアプローチすることで、TRWPの発生を抑制する技術の開発を目指すとのこと。
(2) 拡散:TRWPの特性解明と拡散抑制の研究
空気力学の専門家であるドイツ・オストファリア応用科学大学のFalk Klinge教授と共同で、走行中のタイヤ周辺に生じる空気の流れを利用したTRWP回収装置の開発に取り組んでる。また、タイヤのゴム配合や走行条件と、回収されたTRWPの特性との関係を解析することで、拡散の低減につながる知見の確立を進めている。
2025年6月に開催された「EuroBrake 2025」にて、Klinge教授との共同研究において、風洞実験によるタイヤ周辺の空気の流れ(エアロダイナミクス)の可視化に成功したことを発表した。さらに、プロトタイプでの実験により、回収装置のコンセプトが実証できた。回収装置は二重構造になっており、外から風を送り込むことでタイヤと路面近くの風の流れを変える。その力を利用し、高効率にTRWPを装置内に回収。同様の回収装置は前例がなく、本研究における大きな成果と位置付けられている。今回得られた知見を足がかりに、実用化に向けた取り組みを進めていくという。
(3) 蓄積:環境中のTRWPとマイクロプラスチックの定量分析
TRWPはマイクロプラスチックの一種として分類されることがある。しかし、その物理的・化学的性質や環境中での挙動には大きな違いがあると考えられている。住友ゴムは、京都大学大学院の田中周平准教授と共同で、TRWPとマイクロプラスチックを区別して定量分析する手法を開発し、環境中におけるTRWPおよびマイクロプラスチックの存在量の把握を進めている。また、TRWPの拡散や蓄積の予防・抑制に向けた基礎的な知見の確立にも取り組んでいる。

