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住友ゴム、2025年12月期上期決算は営業利益35.6%減の270億円に 米関税影響145億円の対応策公表
2025年8月7日 18:00
- 2025年8月7日 開催
住友ゴム工業は8月7日、2025年12月期 第2四半期(2025年1月1日~6月30日)の決算内容を発表した。
第134期となる2025年12月期 中間期の連結業績(IFRS)は、売上収益が前年同期(5870億4100万円)から2.5%減となる5721億9200万円、事業利益は前年同期(422億9400万円)から33.1%減の283億1000万円、営業利益は前年同期(419億5100万円)から35.6%減の270億3400万円、営業利益率は4.7%、親会社株主に帰属する中間利益は前年同期(387億2900万円)から62.9%減の143億7400万円となった。
2026年1月に北米市場で独自開発の新商品を発売
同日開催された決算説明会では、決算内容について住友ゴム工業 代表取締役社長 山本悟氏が説明。
決算の概要として山本社長は、前年同期比で97%の5722億円となった売上収益、同67%の283億円となった事業利益、同64%の270億円となった営業利益、同37%の144億円となった中間利益などについて、減収減益ながら天然ゴムを中心とした原材料の高騰、為替によるマイナス影響などが大きいと期初から予想しており、前年同期比で減益としていた計画どおりに進捗していると説明した。
主力のタイヤ事業では販売本数が対前年比で減少となっているが、北米市場における市販用タイヤについてはダンロップの主力商品「ワイルドピーク」製品が前年を上まわる販売を記録して好調に推移していると説明。国内市場でも市販用のSUV向け夏タイヤの商品ラインアップ拡充により、高インチでの販売を増やしているという。タイヤ事業全体としては原材料価格の高騰、為替の円高影響などによって減収減益となっているが、タイヤ販売構成のプレミアム化といった方針どおりの進捗となっている。
事業全体で推し進めている取り組みについては、2023年に設定した10項目の構造改革の対象事業のうち、構造改革では最重要課題である北米事業の構造改革を含む6項目の事業、商材に関するめど付けを2024年に行ない、さらに2025年のこれまでに3項目のめど付けを実施。合わせて9項目についてめど付けが完了したことを紹介し、コスト構造の抜本的改善や固定費の削減によってさらなる収益性向上に取り組んでいると述べた。
また、5月に米グッドイヤーから欧州、北米、オセアニア地域における4輪タイヤのダンロップ商標権などを取得してタイヤの販売を開始。2026年1月には北米市場で独自開発した商品を発売する計画も明らかにして、欧州市場向けの商品についても順次展開していくと説明。欧州、北米、オセアニア地域で住友ゴムの技術を投入した差別化商品を発売してプレミアム商品比率を高めていく。
2024年10月に発売したオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」で初採用した独自技術「アクティブトレッド」はその後も日々進化させていて、シンクロウェザーは発売後さまざまな賞を受賞するなど高く評価されており、今後もタイヤ業界にゲームチェンジを起こすような新商品、新技術を開発していくとコメント。
今後については2027年の発売に向け、欧州と北米それぞれの道路特性に適応するさらに高機能化したアクティブトレッドを搭載したオールシーズンタイヤについても開発が順調に進んでおり、このタイヤをダンロップブランドの基幹商品に育てていくと意気込みを語った。
もう1つの独自技術である「センシングコア」は、タイヤの空気圧、荷重、摩耗、路面状態、車輪脱落の予兆などを検知する機能を備え、ドライバーの安全性を高め、車両メンテナンスの効率化を図る技術となっており、提供形態としては自動車に搭載するビジネスに加え、商用車の故障予知を行なうサービスの2つを用意。国内外で提案を進め、複数の自動車メーカーから採用されるフェーズまで進んでいると明かし、センシングコアの採用で自動車の機能高度化、自動運転の実現に貢献していくとした。
関税影響を商品の値上げでカバーし、不足する部分は内部努力で吸収
米国政府による関税の影響と対応については、日本や一部の国に対する関税率の引き下げが合意されたことを受け、タイヤ事業とスポーツ事業で関税の影響をあらためて試算。第1四半期決算の公表時にはグループ全社で180億円の影響があると通期業績予想に織り込んでいたが、追加関税の適用時期延期、日本とインドネシアで米国と関税率の引き下げについて合意されたことなどを背景として試算をやり直し、最新の数値では影響を35億円抑えた145億円程度まで縮小されるとした。
この影響については商品価格の値上げや商品構成の改善、内部努力などで打ち返す計画としており、具体的には2024年に生産を終了した米国子会社SRUSAの米国工場と比較して、タイ工場で必要となるコストは半分以下であり、タイ製タイヤを米国に輸出しても関税影響は12~13%程度に抑えられると解説。また、米国でタイヤを生産する場合でも原材料に対して関税の影響が出ることから、タイからの輸出でも十分に戦っていける体制にあるとの認識を示した。
関税による影響は価格転嫁で吸収する方針に変更はないが、これによって値上げを実施できない市場があることのリスクを計画に盛り込む内容と説明し、実際に5月から米国で販売するタイヤ商品について価格転嫁を行なっており、足下の状況としては計画どおりに進捗しているとアピールしている。この影響で値上げ前の駆け込み需要とその後の反動減も一部で起きたものの、年間の販売本数ではほぼ年初計画どおりに推移すると予測しているとした。
スポーツ事業については競合他社の動きを見つつ、6月から一部で値上げを実施しており、引き続き米国政府による関税政策の動向を、米国の市況や他社動向などを注視しながら柔軟に、迅速に対応して、関税影響については商品の値上げによってカバーし、不足する部分については内部努力で吸収していくとの方針を示した。
北米市場で主力製品のワイルドピークが依然として好調
決算内容の詳細では、まずセグメント別の売上収益と事業利益について説明し、タイヤ事業、スポーツ事業、産業品他の各セグメントで減収となったが、事業利益では産業品他セグメントが対前年比156%と大幅な増益となっている。
タイヤ事業では国内市販用タイヤで利益を重視する施策によって低採算商品を下市。これによって夏タイヤの販売本数が減少したが、SUV向け高インチ商品で販売を拡大している。また、新車装着タイヤについては一部自動車メーカーで減産していた影響から回復して前年同期を上まわる結果となっている。
海外市場では北米市場で主力製品となっているファルケンブランドのワイルドピークが依然として好調を維持。中南米でも増販となったが、市況が低迷している欧州、中近東などの市場で前年同期から販売減となっている。海外向けの新車装着タイヤは、中国で日系自動車メーカー向けの納入が減少しているという。
タイヤ事業での事業利益は、各国で実施した価格施策と販売構成の改善による効果が出たものの、原材料価格の高騰と為替影響によって減益となった。
2025年度通期の業績予想としては、売上収益は前年同期比100%の1兆2150億円、事業利益は同108%の950億円、営業利益は同751%の840億円、当期利益は同456%の450億円と設定。5月の第1四半期決算発表時に公表した予想から売上収益を50億円下方修正している。
このほか、説明会冒頭で山本社長は子会社のダンロップタイヤがオールシーズンタイヤの販売に関して公正取引委員会による調査を受けており、前日の8月6日に独占禁止法が規定する確約手続について確約計画を提出。公正取引委員会の認定を受けて調査が終了したことを報告した。
これについて、ダンロップタイヤの行為が独占禁止法の規定に違反することを認定したものではないとしつつ、ユーザーや取引先など関係者に多大な迷惑と心配を掛けたことについて陳謝。ダンロップタイヤを含めてグループ全社で独占禁止法をはじめとする法令遵守の徹底をさらに強化していくと述べている。








