レビュー

【タイヤレビュー】ダンロップの新コンフォートタイヤ「スポーツマックス ラックス」初試乗 しなやかなステアフィールと高い静粛性を味わう

2025年2月から順次発売
オープンプライス
全75サイズ
ダンロップの新プレミアムコンフォートタイヤ「SPORT MAXX LUX(スポーツマックス ラックス)」を試乗する機会を得た

SPORT MAXXの名を冠したコンフォートタイヤ

 このところSUVを中心としたプレミアムタイヤが各社からリリースされている。そこで今回紹介するのは、ダンロップの新プレミアムコンフォートタイヤ「SPORT MAXX LUX(スポーツマックス ラックス)」となる。

 ダンロップはグローバル戦略の一環としてブランドの統一化を進めている。今回のSPORT MAXX LUXはコンフォートタイヤだが、ブランド名はSPORT MAXXシリーズに入り、従来品「VEURO(ビューロ)」が担っていたポジションに位置するものだ。グローバルで展開するSPORT MAXXを日本でも広く展開することでブランド力の向上を図っている。

 なおSPORT MAXX LUXシリーズは、他にスポーツ系の「RS」、全方位の性能をバランスさせた「060+」がラインアップされている。

ダンロップがグローバルに展開するブランドが「SPORT MAXX」シリーズで、スポーツ系の「RS」、コンフォートの「LUX」、オールラウンドの「060+」がそろっている

メルセデスのまったりとした乗り味にもよくマッチ

 試乗車はSUVのメルセデス・ベンツ GLC(装着タイヤサイズは235/60R18)と、Eクラスセダン(同245/45R18)の2台。タイヤラベリングは、転がり抵抗がGLC/Eクラスサイズは「A」グレードで、ウェット性能も「a」グレードとなる。

 最初にGLCのハンドルを握る。ダンロップの美点である乗りやすさはSPORT MAXX LUXでも磨きがかけられて、メルセデスのまったりとした乗り味にもよくマッチする。

SPORT MAXX LUXは従来品VEURO VE304に対して、パターンノイズを14.9%低減、ロードノイズを8.8%低減させている
接地面積を増やしたSPORT MAXX専用特殊プロファイル「マックス・ドライバビリティ・テクノロジー」を採用
静粛性を表現するべく日本庭園「枯山水」から着想を得たという5本線があしらわれるほか、近年のEV(電気自動車)需要増に対応するため、独自の基準で定めた「EV適応マーク」を初めて刻印した

 滑らかな走り出しは安心感のある手応えだ。ステアリングのセンターフィールはもう少し欲しいところだが、メルセデス・ベンツとの相性はなかなかよく、直進状態に戻ろうとする力とのバランスもとれている。タイヤに癖がなく幅広いカテゴリーのクルマに合いそうだ。

 素直なステアリング応答性を持ち、低中速で舵角が大きくなっても操舵力の変化は小さい。手応えが優しいダンロップらしい製品というのが第一印象。

ドライバーが耳ざわりに感じる周波数帯の音圧を抑え、周波数の波形をなだらかにすることでノイズを低減する「サイレントウェーブテクノロジー」を採用している

 幹線道路で軽いレーンチェンジを行なっても操舵感が自然で、イメージどおりの走行ラインで車線変更ができる。SUVにもマッチするソフトなステアリングフィールだ。

 ダンロップは、タイヤプロファイルを変えることで各ブロックにかかる力を均一化させた結果、効率よく路面をとらえることができたとしている。

 少し横Gがかかるような場面では、スポーツタイヤとは違うコンフォートタイヤらしいたわみ方でリラックスしてドライブできるのもSPORT MAXX LUXの魅力だろう。

タイヤ表面のパターンをブロックと溝が途切れないように接地する「シームレスグルーブ」デザインにすることで、接地面のブロックが路面を叩くことで発生するパターンノイズを低減。また、主溝内部にスロープを配置する「デュアルスロープ」により、タイヤ溝内の空気振動によって発生するパターンノイズを低減しているという

 SUVは大きな居住空間を得られる半面、重心高が高くロールも大きい。GLCもコーナーで少しロールが大きくなるが、タイヤもそれに応じてたわみながらグリップする。グリップ力はガッチリ路面をとらえるスポーツタイヤとは違うが、しなやかで滑らかなところがSPORT MAXX LUXの持ち味だ。このようなコーナーでもステアリングの切り初めからに操舵量の変化幅は小さい。

 SPORT MAXX LUXのもう1つの美点に“ビューロ譲りの静粛性”がある。SPORT MAXX LUXも静粛性が高く、特に高周波ノイズがよくカットされている。

トレッド面に横溝がほとんどなく、センターグルーブに入る横溝も斜めに入れることで静粛性を高めている

 パターンはストレートグルーブを基本としたものだが、そのストレートグルーブの溝底に進行方向に向かってL字型の三角スロープを交互に2列を設けることで気柱管共鳴を小さくする技術を採用し、パターンノイズを減らしている。

 基本的にパターンノイズの元凶となりやすい横溝がほとんどなく、センターグルーブに入る横溝も斜めに入れており、大きなパターンノイズにならないように工夫されている。

 もう1つ音を小さくする技術としては、ダンロップが先鞭を切ったスポンジがある。「SILENT CORE(サイレントコア)」と呼ばれる吸音スポンジを、タイヤ内部の周方向に入れたものだ。最新のAI技術を用いて形状と容量を最適化させることで、タイヤ内部の圧力変化で発する振動音、ロードノイズを減少させている。気になるスポンジの劣化は、これまでの長い実績でもないという。

コーナーでは荷重に応じてたわみながらしなやかにグリップする

 これらの技術によってパターンノイズはビューロ比で約15%、ロードノイズは約9%減少したとうたわれるが、確かにそのとおりで両車ともパターンノイズはよく抑えられ、どちらかと言えばロードノイズが少し耳に届く。静粛性は低速中速まで真価を発揮し、高速になると風切り音のほうが大きくなるがタイヤノイズはよく消されている。

広くした接地面が路面をとらえるので、カーブ走行時により小さな舵角で思い通りの走行が可能

 セダンとSUVを乗ったが、タイヤの基本性能が変わることはなかった。マッチングで言えばEクラスセダンはAMG仕様でサスペンションの突き上げ感が若干強めだった。タイヤの突起の乗り越し性は路面形状を伝える程度でコンフォートタイヤらしいショック吸収性だ。EクラスのAMG仕様では先発のバランス型SPORT MAXX 060+もマッチングしそうだ。

 SPORT MAXX LUXは静粛性、そして直進時の微操舵の安定性に注力したプレミアムコンフォートタイヤで、SPORT MAXXシリーズの重要な柱になるタイヤだろう。

SPORT MAXX LUX
SPORT MAXX LUXサイズ一覧
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:堤晋一