レビュー

【タイヤレビュー】ブリヂストン「レグノ GR-XIII TYPE RV」デビュー! ミニバン・コンパクトSUV専用タイヤとしての仕上がりやいかに?

レグノブランドの最新作「レグノ GR-XIII TYPE RV」に試乗

薄く・軽く・円く。アルファードサイズでは1.5kgの軽量化に成功

 ブリヂストンからミニバン・コンパクトSUV向けの「REGNO GR-XIII TYPE RV」(レグノ ジーアール・クロススリー タイプ アールブイ)が2月1日より発売されることになった。このタイヤは昨年、セダン・軽自動車・コンパクトカー用に発売した「REGNO GR-XIII」の派生モデルという位置付けだが、新たに対象車種に向けてトレッドパターンから内部構造までを見直した新製品である。

 そもそもミニバンやコンパクトSUVは車高や重心の高さからふらつきやすい傾向がある。また、開口部が多い車体構造のため外からの音が直接車室内に入りやすい。さらにはコーナリングやブレーキング時はタイヤに力がいっきにかかり、偏摩耗しやすいという特徴もある。だからこそレグノ GR-XIII TYPE RVのような専用タイヤが必要になり、新たに開発が行なわれたというわけだ。

 レグノ GR-XIII TYPE RVのトレッドパターンを見ると、まずショルダー部がレグノ GR-XIIIとはまるで異なっていることが理解できる。ショルダー部は幅広になり、剛性を持たせたことが伝わってくる。これなら偏摩耗もふらつきも心配はなさそうだ。だが、剛性を高めすぎると今度は縦方向の入力が大きくなってしまう。そこでIN側のショルダーはサイプをいったん減らし、菱形の「ダイヤモンドスロット」と名付けたものが与えられているところが特徴的だ。これにより縦方向のしなやかさを出して乗り心地を確保しているという。結果的に縦溝は4本から3本に変更しているが、実際のところは溝深さを増やすことで排水性に対応している。

 もう1つの特徴はブリヂストン独自の商品設計基盤技術である「ENLITEN(エンライトン)」を採用していることだ。ENLITENとは、“ゴムを極める、接地を極める、モノづくりを極める、そしてサスティナブル性能を追求する”というスローガンのもと、全方位で性能を大きく革新的に進化させようというもの。従来品の性能をどの領域も確実に進化させたうえで、特徴を持たせたい部分に対しては突出させるようにしていくそうだ。

2025年2月より発売を開始した「レグノ GR-XIII TYPE RV」はミニバン・コンパクトSUV専用タイヤ。まずは195/65R15 91H~245/35R20 95W XLの計29サイズを設定し、価格は2万6510円/本~9万9660円/本。ラベリング制度における転がり抵抗係数は「A~AA」、ウェットグリップ性能は「a」を実現
レグノ GR-XIII TYPE RVは専用パターンを採用しており、ショルダーブロックを大きくすることでブロック剛性を高め、ふらつきを低減。またタイヤのIN側にはショルダー部の剛性を高める「ダイヤモンドスロット」を採用し、高いブロック剛性を確保しつつ路面からの振動を吸収することで乗り心地とロードノイズの低減、偏摩耗の抑制を実現している。摩耗寿命についてはレグノ GR-XIII比で19%向上しているという

 結果としてレグノ GR-XIII TYPE RVは、レグノ GR-XIIIと同様に「薄く・軽く・円く」作られたところが特徴の1つだ。プライ張力分布の最適化を行なった上で、しなやかに変形していくことで、振動入力を低減しながら、理想の接地状態を作り出している。タイヤの重量は平均して1kgほど軽く、今回乗るアルファードサイズでは1.5kgの軽量化を実現している。レグノ GR-XIIIの時にも言われていたが、タイヤだけでなく空気圧の力もうまく使っているイメージ。タイヤが薄くなると変形がいびつになりがちだが、シミュレーション技術である「ULTIMAT EYE(アルティメット アイ)」が役立ち、接地特性を可視化できるようになったことも役立っている。

 以前はタイヤを分厚くしてしまえば静粛性は保ちやすく、耐摩耗性はよく、ウエット性能だって引き上げられる状況があった。けれども、重たくなることで低燃費性能もハンドリングも資源循環性だってわるくなる。間もなく導入される欧州の排気ガス規制・ユーロ7では、タイヤから出るマイクロプラスチック排出にも規制がかかるという。時代が求める性能を達成しつつも、レグノブランドを達成し続けなければならないところに難しさがあり、だからこそENLITENという全方位の商品設計基盤技術が必要だったということなのだろう。

 レグノ GR-XIII TYPE RVではゴムを分厚くしたり柔らかくするのではなく、新トップゴムの「GR-tech Silentゴム」を採用。さまざまなポリマーの機能を分子レベルで明確化することで、振動エネルギーを散逸することが可能になり、静粛性や乗り心地を高めることに成功したという。

レグノ GR-XIII TYPE RVではレグノ GR-XIII同様、レーシングドライバーの立川祐路氏が開発に携わった

ミニバン&コンパクトSUVユーザーに確実に恩恵を与えてくれる

レグノ GR-XIII TYPE RVを、旧製品の「レグノ GRVII」と比較試乗

 そんなレグノ GR-XIII TYPE RVを、旧製品となる「REGNO GRVII(レグノ ジーアールブイ ツー)」と比べながらその特性を見てみる。

 広場にパイロンや突起物を並べたコースで走ってみると、まず圧倒的に違うのがスラローム時のハンドリングの自然さだった。タイヤがたわんでいく過程にクセがなく、一定したフィーリングが得られるところが好感触だ。過渡特性が一定しているその感覚はレグノ GRVIIでは得られなかったところ。レグノ GRVIIは初期の剛性にしっかりとした感覚が際立っているものの、切り込んでいった先で急激にグリップが立ち上がるポイントがあるところが気になった。タイヤのたわみ方が一定していないということなのだろう。

 レグノ GR-XIII TYPE RVは、切り始めた瞬間から最大グリップが出るまでクセがない。その上でしっかりとした剛性も感じられ、結果としてステアリング操舵角を必要としなくなり、ロールも減る傾向があると感じる。ちょっと運転が上手くなったかのような感覚が得られる。また、突起の乗り越しは一瞬で収める感覚。硬質ではあるが、いつまでも揺らぎが続くようなことがないところがうれしい。

パイロンや突起物を並べたコース、そして一般道でも試乗を行なった

 一般道試乗では横風が強い状況ながらも直進安定性を確保。高速道路の継ぎ目における収束も早く、フラットライドが楽しめる。アルファードにおいて後席にも座ってみたが、乗り心地に不満を覚えるようなことはなかった。また、静粛性についてはやや高い音が出る傾向を感じたが、それでも十分に音のレベルは低く保たれているように思えた。

 時代の変化にきちんと対応しながらも、これまで通りのレグノブランドを守り、さらに進化させてきたレグノ GR-XIII TYPE RV。この仕上がりならば、ミニバン&コンパクトSUVユーザーに確実に恩恵を与えてくれることだろう。

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橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛