レビュー
【タイヤレビュー】横浜ゴム新製品「アドバンV61」初試乗 国産SUVの新車装着タイヤに選ばれる納得の乗り味だった
2025年1月31日 00:00
- 2025年3月 順次発売(全17サイズ)
- オープンプライス
横浜ゴムのADVAN(アドバン)ブランドから、中~大型プレミアムSUV向けの「ADVAN V61」というサマータイヤが3月から発売される。この商品はブランドこそ異なるが、事実上は「BluEarth-XT(ブルーアース-エックスティ)」の後継モデルという位置付けで、ターゲットとするのは主に国産SUV。
速度レンジもV規格(最高速240km/h)が中心であり、それ以上の領域を求めるような欧州SUVに対しては、速度レンジW規格(最高速270km/h)やY規格(最高速300km/h)の「ADVAN Sport V107」を勧めている。いまもなお日本国内の新車SUVは右肩上がりで増加しており、その数はトータルでおよそ100万台。なかでも「ADVAN V61」がターゲットとする中~大型SUVは約70万台を記録しているからかなりのボリュームだ。
実は「ADVAN V61」は、2022年より新車装着タイヤとして納入を開始。代表的なところでいえばトヨタ「bz4x」、レクサス「RZ」「RX」「LBX」、そしてマツダ「CX-60」「CX-80」といった車種で、今後も車種を拡大する計画があるそうだ。今回発売するのは、それらの補修用としてだけでなく、これまで販売されている多くのプレミアムSUV向けに、全17サイズを展開するという。
商品コンセプトは、転がり抵抗を低減し、航続可能距離に貢献しながら、静粛性を高めることで快適性を追求したとのこと。低燃費タイヤのラベリングでは転がり抵抗で「AAA~AA」、ウエット性能で「a~c」を獲得している。
その性能をより分かりやすく表現しようと、今回の試走会ではまず転がり抵抗のデモンストレーションが行なわれた。同じ車両に従来品の「BluEarth-XT」と新製品の「ADVAN V61」を装着し、坂の上(トラックの荷台)からギヤをニュートラル状態で走らせ、どこまで到達するかを見せてくれた。
すると「ADVAN V61」は「BluEarth-XT」よりもおよそクルマ2台分ほど先までスルスルと前に出てくるから興味深い。最後の最後でジワジワと動き続けるあたりに、転がり抵抗の低さを目で感じることができる。これは相当に期待できそうだ。
続いて同じ広場でパイロンスラロームや突起の乗り越しなどを試してみる。「BluEarth-XT」で走ってみると、これはこれで十分に感じる旋回性能やダンピングを感じられたが、「ADVAN V61」で走り出すと先程とはまるで違う感覚がある。
まず、ステアリングの操舵角が少ない状態でパイロンをクリア。タイヤがヨレてから一気に旋回し始める「BluEarth-XT」とは違う感覚だ。また、突起の乗り越しでは硬質な感覚はあるが、入力を一発で収めてくれる感覚があり、いつまでも揺らいでいないところが特徴的。
これは「ADVAN V61」が、まずIN側とOUT側で異なる特性を与えられる非対称パターンを使い、主にOUT側での高剛性を確保しているからだろう。また、ラグ溝(トレッド幅方向の溝)を非貫通とすることで、高いブロック剛性を実現し、重たいSUVでもしっかりと受け止める作りにしていることが効果を発揮しているのだと推測する。
さらにタイヤの骨格を形成する、ゴムで被覆された繊維やスチールでできたコード層のカーカスを、ショルダー部まで外側に巻き上げ、サイド部を二重にした高剛性ハイターンナップ構造を採用していることも大きい。
一方で主溝を4本持ち、さらにIN側にはナローグルーブを与えることでウエット性能を確保。トレッド下のベースゴムやサイドゴムは低発熱化した低燃費ゴムの採用も行なう。これらの対策で、転がり抵抗をよくしながらも、しっかりとしたドライグリップとウエット性能をバランスさせている。
その上でパターンノイズを低減するために、「HAICoLab(ハイコラボ)」と名付けた独自のAI利活用フレームワークに基づきピッチ配列の最適化を実現。これは直進時はもちろんコーナリング時にタイヤがたわんだ時に発するパターンノイズも、「BluEarth-XT」より「ADVAN V61」のほうが突出した音がなく静かに感じた。
その後、一般道をさまざまなSUVで走ってみたが、どれも剛性感を感じるステアフィールが得られ、直進安定性が高く仕上げられていたところが印象的。アウトランダーPHEVでは、回生ブレーキをゼロの状態でコースティングさせてみたが、どこまでも転がっていくかのような滑走感が味わえた。
また、どんな路面でも無駄に動かずフラットライドが得られるところもメリットの1つ。このバランスのいい性能があるなら、きっと多くのSUVユーザーに受け入れられることだろう。