レビュー

トーヨータイヤ、バッテリEVトラック専用スタッドレスタイヤ「ナノエナジーM951 EV」を冬の北海道で試してみた

2025年1月21日 開催

バッテリEVトラック専用スタッドレスタイヤ「NANOENERGY M951 EV」を三菱ふそうの「eキャンター」で試乗した

 トーヨータイヤのバッテリEV(電気自動車)トラック専用スタッドレスタイヤ「NANOENERGY(ナノエナジー)M951 EV」を、三菱ふそうトラック・バスの「eキャンター」試乗会で試乗できた。同じくトーヨータイヤのトラック用スタッドレスタイヤ「M919」と比較できたので、その違いをレポートする。

リブ基調とブロック基調の非対称パターンを採用するEVトラック専用スタッドレスタイヤ「NANOENERGY M951 EV」

NANOENERGY M951 EVを装着した三菱ふそう eキャンター、奥のeキャンターはM919を装着

 2024年にトーヨータイヤは小型EVトラック専用タイヤを2種、登場させている。1つは夏タイヤの「NANOENERGY M151 EV」で、もう1つがスタッドレスタイヤの「NANOENERGY M951 EV」。どちらも耐摩耗性能、低電費性能、トラクション性能の3つをEV用に向上させている。

非対称パターンを採用する「NANOENERGY M951 EV」

 今回は特設コースに用意された雪道での試乗ということで、EVトラック用スタッドレスタイヤの「NANOENERGY M951 EV」と、比較用として従来からあるスタッドレスタイヤ「M919」を用いた。

「M919」はデビューから年月が経っているが、今でも絶大な支持を得ている“レジェンドタイヤ”だという。「NANOENERGY M951 EV」はそのレジェンドタイヤであるM919の氷雪上性能を維持しながら、耐摩耗性能、低電費性能、トラクション性能を向上させた。

 トーヨータイヤによれば、同じ小型トラックでもバッテリEVになると重さがあり、しかも加速がよいことからタイヤの減りは早くなってしまうという。また、タイヤの転がり性能は電費に直結し、転がり性能がよければ1回の充電での航続距離も長くなる。そして、トラクション性能は高トルクでの駆動でも路面をしっかりとつかむ必要があるため、バッテリEVに必要な性能だ。

非対称パターンを採用する
耐摩耗性能、低電費性能、トラクション性能を向上

 さらに電動車の場合、減速時に回生ブレーキのみを使用すると駆動輪だけにブレーキ力がかかることになるため、滑りやすい路面におけるグリップ性能がわるければ回生ブレーキによる減速時に駆動輪がブレーキ力に耐えられずスリップしてしまう恐れもある。

 そこで、NANOENERGY M951 EVはバッテリEV特有の問題を解決した。どうしてもタイヤ価格はM919よりも高くなってしまうが、耐摩耗性能を向上させてタイヤの総コストでは同等を目指しながら、電費やトラクション性能を向上させている。

 そして、これまでトラック用タイヤに採用されてこなかった非対称パターンを採用した。フロントの片落ち摩耗を抑制するリブ基調のパターン、氷雪上でトラクション性能を発揮するブロック基調のパターン、こうした非対称パターンの採用などにより、耐摩耗性能と氷雪上性能の両立を実現しているとのこと。

非対称パターンだが、通常のようなタイヤローテーションが可能

 非対称パターンといっても車両の外側と内側を決めるのではなく、ホイールの裏と表に合わせて組み付けるため、ホイールを裏表組み合わせて装着する後輪がダブルタイヤのトラックでも問題なく装着でき、従来のようなフロントタイヤやスペアタイヤを含めたタイヤローテーションもできる。

ダブルタイヤでも使用できる非対称パターンを採用
タイヤの装着面を示す「ホイールディスクサイド」のマーク

走り出しから動きの軽さと剛性を感じる「NANOENERGY M951 EV」

クローズドの特設コースで試乗した

 実際に圧雪路で試乗してみると、NANOENERGY M951 EVは走り出しの軽さを感じ、スっと前に出ていく感じがする。

タイヤサイドにはEVの先進感を協調するデザインを採用する「NANOENERGY M951 EV」

 試乗した特設コースはeキャンターが円旋回やフルブレーキを試すコースで、どちらのタイヤを履いたeキャンターもほぼ同仕様。ワイドキャブでホイールベース3400mm、Mバッテリを搭載する。正確に言えば架装がNANOENERGY M951 EVがドライバンで、M919がウイングという違いもあるが、架装を含めた重量は4320kgと4420kgと近く、同じ1500kgの積載をしているところも同等だ。

「M919」装着車両と比較試乗した

 NANOENERGY M951 EVとM919の比較は、前述の走り出しの軽さのほか、走行フィールも大きく違う。NANOENERGY M951 EVはタイヤの剛性を感じ、丸いタイヤが丸いままで転がっていく感じ。そのうえで表面のグリップがしっかりしており、軽く転がるがグリップはしっかりあるという印象だ。

 反対にM919はやわらかいタイヤで圧雪路のデコボコにタイヤを変形させながら追従して密着、タイヤのやわらかさと変形で路面をつかんでいくように感じる。

NANOENERGY M951 EVは前輪の横方向のグリップもよいように感じた

 こうしたタイヤ特性の違いにより、コーナー時の挙動も変わってくる。オーバースピードでフロントタイヤが滑って外側に滑り出した場合、NANOENERGY M951 EVはグリップで路面をつかんで粘る印象だが、M919はつかんだ雪ごと外に滑り出してしまうような印象を受ける。実際に滑りの差は大きくないが、NANOENERGY M951 EVのほうがわずかにコーナーでは強い印象を受ける。

 フルブレーキでの挙動も、NANOENERGY M951 EVは雪の表面をグリップして止まることに対して、M919はタイヤロックと緩めを繰り返しながら雪の表面を堀って食い込みながら止まっていく印象だ。

摩耗や航続距離でプラスになるNANOENERGY M951 EV

NANOENERGY M951 EVのトレッドパターン

 今回、凍結路面で試乗することはできなかったが、実際、雪道においては、NANOENERGY M951 EV、M919どちらも性能はよく、安全面においても同等ということは感じられた。どちらがよいかは好みの問題と言え、M919も根強い人気があるということもうなずける。

 それでも、安全については同等ならば、耐摩耗性能や転がり性能がよいNANOENERGY M951 EVを選んでおいたほうがよいだろう。

 なお、NANOENERGY M951 EVのサイズはeキャンターに適用できる215/70R17.5のワンサイズのみ。EV専用としているが、耐摩耗性能や転がり性能などを重視してBEV以外のトラックに使ってもコスト以外の問題はないとのことだ。

公道では「M919」を試乗して、冬の北海道でトーヨータイヤのスタッドレスタイヤの性能を体験することができた
正田拓也