試乗記
ドライバーの負担を軽減した新型「スーパーグレート」の12.8リッター新エンジンや安全装備を体感してみた
2024年7月29日 17:16
- 2024年7月24日 実施
2023年のジャパンモビリティショーで発表された三菱ふそうトラック・バスの新型「スーパーグレート」。新型モデルの主なポイントは、新エンジンによる走りやすさ、そして安全装備の追加による安全性の向上となる。今回、新型スーパーグレートをテストコースで試乗する機会を得たので、その印象を紹介したい。
新型エンジンなどで2025年度重量車燃費基準(JH25モード)適合
新型スーパーグレートの特徴はいくつもあるが、まず目に入るのが新しくなったブラックベルトデザインを持つキャブのスタイリングだ。
ヘッドライトやバンパーまわりのデザインにより空力性能を向上させているほか、特に新登場のスーパーハイルーフのキャブは、室内が広々として立って着替えができる高さだけでなく、バンやウイングの場合に荷箱前面での大幅な空力性能改善を実現、燃費に貢献している。
そして、中身も大きく変わっている。まずは搭載エンジンのラインアップに、新登場の12.8リッターの「6R30」エンジンを搭載したことが挙げられる。
スーパーグレートは、2017年のモデルチェンジでエンジンのダウンサイジングを行ない、12.8リッターエンジンの搭載をやめ、主力エンジンは10.7リッターの「6R20」エンジンとしていた。ところが今回のモデルチェンジでは、新型エンジン6R30で12.8リッターの排気量を復活させた。
この新型6R30エンジンは、2025年度重量車燃費基準(JH25モード)に適合させるためのエンジンであり、排気量が大きくなったものの燃費は改善されている。また、2つのターボチャージャーで低速トルクを増し、トランスミッションの変速タイミングも最適化し、さらに乗りやすいクルマになっているという。
坂道などで差がつく新エンジン
今回試乗した新型スーパーグレートの6R30エンジンは、最高出力290kW(394PS)仕様。実際に試乗してみると、同じ最高出力290kW仕様の6R20エンジンを搭載する従来型よりも、新型エンジンのほうが坂道などトルクを要求される場面ではトルクのゆとりが感じられた。スーパーグレートは従来型も新型も12速の自動変速機「ShiftPilot」を搭載しているが、エンジンのトルクアップとそれに合わせたチューニングの違いもあり、よりスムースに走れるようになった。
試乗した三菱ふそうの喜連川事業所のテストコースには坂道が設定されているが、途中で8%から10%へと勾配が変わるところがある。従来型と乗り比べると、従来型は坂の角度が変わったところでエンジン負荷が増すためにギアが1段落ちるようなこともあり、加速の息継ぎもあってスムーズとは言い難かった。しかし、新型は坂の角度が変わっても6速を保ったままスイスイと坂を登っていた。
スーパーグレートの「ShiftPilot」はAMT方式のため、変速のたびにトルクがなくなる時間がはっきり分かるタイプ。トルクアップのおかげで変速回数が減れば、それだけスムースに運転できることになる。
今回はテストコース内の坂道ではあるが、実際の道路となれば坂道の角度はさまざま。坂道は道路以外にも倉庫内のスロープもある。交通状況によっては坂の途中で停止し再発進が求められる。状況に応じて変速することももちろん必要だが、ある程度変速なしで走り切ってくれたほうがドライバーはアクセルワークを気にかける負担も少なくなるし、変速回数も減れば、長期的なトランスミッションの整備費用ということにも影響が出てくるかもしれない。
ADASも進化、歩行者対策がさらに充実
今回のモデルチェンジでは、経済性にかかわる燃費のほか、ADAS(先進運転支援システム)にも変更が加えられている。
衝突被害軽減ブレーキのアクティブ・ブレーキ・アシスト(ABA)は、これまでの「ABA5」から「ABA6」まで進化。複数の歩行者や自転車の検出だけでなく、カーブに沿って渋滞で停車している先行車など、見通しのよいカーブでの障害物をより正確に検知するようにし、誤作動を減らし、広範囲での危険に対応したという。
今回のテストコースでは、歩行者を模した人形を検知、ぶつからずに停車するデモを実施。40km/hからの停車で試し、人形に当たらずに停車できたが、設計上は60km/h程度までは対応するという。
そして、直近の障害物に対しての警告も装備した。FBSIS(フロント・ブラインドスポット・インフォーメーション・システム)は、停車時から低速時に歩行者や自転車などの接近をメーターパネル内の表示で知らせるもの。
発進時にも有効で、考えられるシーンとしては、サービスエリアなどで大型車が密集して停車している状況で、発進しようとしたときに直前を人が横切ることもある。このようなときにも注意がうながされるので、安全確認がより確実になる。
側方の警告は左だけでなく右も装備
また、トラックに多い右左折時の巻き込み事故対策のための「アクティブ・サイドガード・アシスト2.0」は全車標準装備で、今回は2.0へと進化した。これまでの左側の警告だけでなく右側も警告が出るため、右折時の事故を予防できるようになった。検知するクルマは、並走するクルマ、自転車、歩行者についても検出する。
右側は運転席からも目視しやすいところではあるが、右折先の横断歩道に速い速度で侵入する自転車や、右折レーンで待機中にさらに右から無理な追い越しをかけられるといったこと、右左折に備えて徐行中にすき間から自転車が追い越しをかけてくるような、ドライバーが確認しにくい状況にも対応できそうだ。
従来からある左側の警告も、特にトラックの場合はキャブの構造上、左側は真横より斜め後ろ、バンボディの場合は後方が直接目視ができない。自分の左側車線から追い抜こうとしているクルマをはじめ、左側後方から斜めに合流するクルマ、さらに自車が通り過ぎたあとに道路の左側から突然出てくる自転車などは確認しづらい。こんなシチュエーションでも活用できそうだ。
なお、これについては、高速周回路で左右から小型車が追い越しをかける状態を再現した。左右のどちらでも接近を検知すれば、Aピラーにある警告等が黄色に点灯、その状況でウインカーを出そうとすると赤になって強く警告してくれた。
高速周回路であらためて運転支援装備を試す
一方、ドライバーの負担軽減の機能といえば、先行車に合わせて速度を調整するアダプティブクルーズコントロールとレーンキープアシストなどの「アクティブ・ドライブ・アシスト2」がある。レベル2の高度運転支援として2019年から搭載開始している装備だ。
テストコースの高速周回路で改めて試してみると、車両停止まで先行車についていく。ハンドルを軽く握っていれば、先行車に自動的に速度を合わせてついていく。ステアリングも車線どおりに走るようにアシストし、逸脱しそうな場合は音や振動による警告だけでなく元に戻るようにステアリングが自動的にアシストされ、元の位置に戻ろうとする。高速道路のカーブならばアシストだけでそのまま車線どおりに走ってくれる。
テストコースなので、ステアリングから手を離してみることも試してみたが、それでも車線に合わせて自動的にステアリング操作を行ない加減速も自動的に行なわれる。手を離せばすぐに黄色い警告が出るが、ステアリングのアシストは続き、手を離したままになると赤い表示に変わり警告音も鳴る。さらにそのままステアリングから手を離したままだとドライバー異常とクルマが判断し、同一車線内に停止させる機能もある。
また、運転の注意力低下を警告する「アクティブ・アテンション・アシスト」は全車標準装備。ハンドル操作などに加えてドライバーの顔を確認する機能があり、眠気などを検知するが、わき見運転をしても警告される。
大型トラックだが、サイズ以外は負担を感じずに運転できる
新型スーパーグレートの試乗を通して感じたことは、乗用車と変わらない先進安全装備が山盛りで装備され、ATであり、新型ではパーキングブレーキも電動で自動。そして、アダプティブクルーズコントロールとレーンキープアシストまで装備していれば、かなりの運転の負担軽減になっていること。そして、負担が軽減された分は、車体が大きいために必要な安全確認などに注力して運転することができる。
もちろん、大型トラックの運転は軽自動車や一般的な乗用車と同じにはいかないが、Aピラーが寝すぎていたり、三角窓の装備で斜め前方に死角が大きめの乗用車に比べるとトラックは大小問わず前方視界は良好で、サイドミラーも上下方向に長く、巻き込み確認に重要な後輪部分から後方まで確認できる範囲は広く、スーパーグレートから乗用車に乗り換えるとトラックのよさも感じることができた。