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三菱ふそう、左折時の自転車巻き込み死亡事故を防ぐ先進安全技術など新型「スーパーグレート」でデモ公開

2021年7月26日 公開

大型トラックの新型「スーパーグレート」

 三菱ふそうトラック・バスは7月26日、大型トラックの新型「スーパーグレート」に搭載された商用車国内初となる先進安全技術「エマージェンシー・ストップ・アシスト」と「アクティブ・サイドガード・アシスト1.0」のデモンストレーションイベントを開催した。

 同社喜連川研究所でデモンストレーションが実施されたそれぞれのシステムは、大型車両による事故被害軽減を目指して開発されたもので、「エマージェンシー・ストップ・アシスト」は、商用車国内初の車線内停止方式のドライバー異常時対応システム。また、「アクティブ・サイドガード・アシスト1.0」は大型車両による左折時の巻き込み事故の被害を軽減する商用車国内初の運転支援システムとなる。

車線内停止方式のドライバー異常時対応システム「エマージェンシー・ストップ・アシスト」

新型スーパーグレート

 今回デモが行なわれた「エマージェンシー・ストップ・アシスト」は、新型スーパーグレートに搭載されたドライバーが体調急変などで運転操作ができなくなった場合、同一車線内で車両を減速して緊急停止する機能。

 具体的には、車線維持アシストを加えた追従型クルーズコントロール機能「アクティブ・ドライブ・アシスト2」の作動中に、ハンドル操作を感知するハンズオン検知システムを通じてドライバーの異常を検知し、約60秒間ハンドル操作が検知されない場合にモニター表示と音で警告を行ない、同一車線内で車両を減速して緊急停止する。

三菱ふそう、新型「スーパーグレート」に商用車国内初採用の「エマージェンシー・ストップ・アシスト」デモを公開

 実際のデモ走行では、ドライバーがステアリング操作をしない場合、15秒ほどで黄色い警告灯が点灯して、ドライバーへの注意喚起を開始。そして60秒がすぎてもドライバーの反応がないと、異常を周囲の車両に示すためハザードランプが点滅し、ホーンを鳴らしながら緩やかに減速を開始、車線は維持されたまま停止することを確認することができた。

エマージェンシー・ストップ・アシストの作動条件など

 このエマージェンシー・ストップ・アシストが組み込まれた「アクティブ・ドライブ・アシスト2」では、全車速域で同一車線内の走行を維持できるよう、ステアリング機能をサポートする「レーンキープ機能」、車両がドライバーの意図に反して車線から逸脱した場合に、車線内に戻すようにステアリングを制御する「車線逸脱防止機能」、ドライバーがレーンキープ機能に過度に頼っていないかを監視する「ハンズオン検知システム」を搭載されており、これらの機能を組み合わせながら、車両を同一車線内で停止する「エマージェンシー・ストップ・アシスト」を実現させている。

並走する歩行者や自転車の巻き込みなどを想定してブレーキ操作をサポートする「アクティブ・サイドガード・アシスト1.0」

トラックと並走してくる自転車に見立てた模擬装置を使ってデモンストレーションが行なわれた
自転車に見立てた模擬装置をミラーで確認することはできるが、注意深く確認しないといけない
並走する自転車の存在をドライバーに警告するためのランプがピラーに仕込まれている

 続けてデモが行なわれた「アクティブ・サイドガード・アシスト1.0」は、左折時の巻き込み防止を目指して開発された、並走する歩行者や自転車の巻き込みなどを想定してブレーキ操作をサポートするシステムで、商用車国内初搭載という。

 アクティブ・サイドガード・アシスト1.0では、ドライバーの死角になりやすい車両左側の対象物をレーダーで検出すると運転手にランプで警告し、さらに左方向にハンドル操作やウインカーを出すと警報音で警告。

 従来モデルでもランプと警報音での注意喚起を行なっていたが、今回の新型モデルでは、レーダーが車両左側で並走して動く対象物を検知し、走行を続けると衝突の危険があるとシステムが判断した場合に、車両の走行速度が時速20km以下の領域で被害軽減ブレーキを作動して車両を緊急停止することで衝突時の被害軽減を図る。

三菱ふそう、新型「スーパーグレート」に商用車国内初搭載の「アクティブ・サイドガード・アシスト1.0 」のデモ公開

 左折時の巻き込み事故は、トラックのドライバーは自転車などとの接触に気づかずに、転倒した自転車や人を後輪で巻き込んでしまい、死亡事故につながりやすいパターンという。

 実際に同乗試乗して車内からミラーを見てみると、並走する自転車はミラーに映っているものの、しっかりと安全確認をしないとその存在に気が付かないなという印象。アクティブ・サイドガード・アシスト1.0では、ドライバーによるしっかりとした安全確認を基本にして、死亡事故という最悪の事態をさけるためのシステムという。

左折時の自転車巻き込み死亡事故の90%は大型トラックであることに注目

三菱ふそうトラック・バス株式会社 大型トラック・バス商品プロジェクト部 伊原忠人氏

 アクティブ・サイドガード・アシスト1.0について技術プレゼンテーションを行なった三菱ふそうトラック・バス 大型トラック・バス商品プロジェクト部 伊原忠人氏は、事業用大型トラックが第一当事者となった死亡事故原因のうち左折時の衝突は25%で、このうち大型トラックと自転車との衝突が非常に高い比率を占めていること、また左折時の自転車巻き込み人身事故全体に対する大型トラックの割合は10%であるが、死亡事故に関する部分では90%を占めていることに注目した技術であることを紹介。

 大型トラックは法規要件で直接視界と間接視界の3つのミラーで左の対象物はすべて見えているとしながらも、一方で交差点を左折する自動車にとって、後方から来る自転車は視界に入りにくく、特に車高の高い大型トラックでは巻き込み事故が起きやすいことを説明した。

 この左折時の巻き込みを防止するため、従来モデルのスーパーグレートでも警報音でドライバに注意喚起を行なうシステムを採用していたが、新型モデルでは、さらに被害軽減ブレーキを作動させる安全装置に進化させている。

 伊原氏は「正直に言えば、必ずしもこのシステムで事故を防げるところまで行けていないと思います。少なくともクルマが止まることによって、自転車は接触するだけであれば転倒やけがですみます。なんとか巻き込みによる死亡事故になる前の所へ行きたい、そういったようなところを狙って今回のシステムは開発したものになります」との狙いを話した。

 また、同じくデモが行なわれた「エマージェンシー・ストップ・アシスト」の採用でさらに進化させたレベル2運転支援機能「アクティブ・ドライブ・アシスト2」について、伊原氏は「ドライバーさんの体調不良とかで運転操作ができなくなっても車両を逸脱せずに停止させることで、それ以上の交通事故のリスクを下げたいと考えております」との狙いを話した。

 そして、将来的にダイムラートラックグループが目指すレベル4自動運転トラックの開発に向けて、世界共通の制御系コンポーネント、制御システムの組み合わせで開発に取り組んでいることを説明。三菱ふそうはグループの中で右ハンドル仕様の評価をリードしていくとの意気込みが語られた。

ダイムラートラックグループとしてレベル4自動運転トラックの開発への取り組みを紹介するスライド