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三菱ふそう、クレイモデル作成工程などデザイン作業も紹介する「デザイン・エッセンシャルズ」開催
2021年4月16日 16:16
- 2021年4月14日 開催
三菱ふそうトラック・バスは4月14日、川崎市の本社にあるデザインセンターにおいて、“ふそうデザイン”についてのイベント「デザイン・エッセンシャルズ」を開催した。ふそうデザインの3つの原則を紹介しながらブランドのデザインの今と未来を紹介。さらに、クレイモデル作成工程などデザインの作業の一部を公開した。
3つの原則に沿ってデザインを進めている
イベントでは、ダイムラートラック・アジア デザイン部 部長のベノワ・タレック氏がふそうデザインについて説明した。タレック氏は三菱ふそうはダイムラー・グループのいち部門であるが、各ブランドが独自性を持ち、尊重されているとして「これまでの伝統もあり、その機能性も強化していかねばならない」と述べた。
また、タレック氏は商用車について「プロに使われる専門道具、使いやすく安全でなければならず、清潔で効率的、修理しやすい」とし、「トラックとバスは至るところにあり、トラックとバスで社会に貢献したい」と述べた。
デザインについて「美しくするだけのデザインではなく、デザインのアイデンティティを備えている」とし、デザイン部門ではクルマの内外装のほか、スマートフォンアプリのデザインや、社員の制服、社内スペースのレイアウトもデザインし、ふそう全体をデザインしているとした。
そして、ふそうのデザインの3つの原則は、シンプルさの追求、明確なアイデンティティ、確かな品質。シンプルさの追求では時代に左右されないシンプルな造形とし、明確なアイデンティティではふそうブラックベルトの採用、確かな品質という点では、見る角度を変えるとデザインが変わる、意図的に細部にこだわってデザインを採用していると説明した。
ブラックベルトについては「エアロクイーンのエレガントなかたちから、キャンターのようにパワフルなイメージも必要」とし、同じブラックベルトをフロントに持ちながら、車種やサイズに合わせて割合を変化させていることを紹介した。
デザインによる効果を示した「Power of Design」
イベントではブースに分けて紹介。「Power of Design」では、デザインの工程とデザインによって生み出される効果を紹介した。デザインは格好よさの追求だけでなく、快適性、効率、経済性などをバランスさせる効果があるとして、インテリアでは、デザインのちからによって導かれるような操作性を実現することや、カラーや素材、仕上げによってドライバーの感情に与える影響を検討、安全にもつなげているとした。
また、ふそうブラックベルトを採用した上で、大型バスの「エアロクイーン」、マイクロバスの「ローザ」、小型トラックの「キャンター」ではブラックベルトデザインと同じヘッドライトのパーツを採用するが、ラインアップの統一感をとりながら、固有のキャラクターを表現しているとした。
標準キャブとワイドキャブのモデルが展示され、一見、幅が違うだけのデザインのように見えるが、ブラックベルト部分の細かな形状などは、それぞれのキャラクターに合わせて設計したもの。比較することで、幅が違うだけではない、細部に渡ってデザインされていることが理解できた。
技術進化や社会動向から予測した「Future of Mobility」
「Future of Mobility」では予想される技術的進歩と予測される社会動向やニーズ、デザインの融合を図っているアドバンスデザインを紹介した。2040年を思い描いた「Vision I.RQ」は山岳での遭難救助を想定したもの。燃料電池で走行する下まわりと、その上に載せるキャビンを組み合わせ可能にしたモビリティとなる。
さらに、三菱ふそうがドローン分野に進出する予定はないものの、「Vision I.RQ」に搭載するドローン「Heri.Droid」を使ってファースト・エイド・キットを運ぶ場面も展示。未来のレスキューを提案した。
また、ドローンについては「Heri.Droid」とは別に、新しい浮力を得るプロペラのユニットの形状も提案し、安全面と機能面を両立したドローンを提案した。
VRを使って世界中のデザイナーとコラボする「Remote Collaboration」
「Remote Collaboration」ではVRを使って海外など離れた場所にいるデザイナー同士でデザインを検討する用意が公開された。VR空間ではデザインされたクルマをさまざまな風景に置いて状態を確認することが容易だが、これを離れた場所のコラボレーションにも応用した。
VR空間上に相手の様子も映しだされる。VR上で自分の手を写し、ものに触れたり動かしたりすることができ、慣れればコラボ相手とVR空間上でハイタッチも可能。
なお、現在VRによるコラボレーションは、VR設備の整ったデザイン部門のオフィスから行なっている。自宅からのリモートワークでの対応も将来の検討はしているが、VRのための機器の用意や、スムーズにVR空間を動かすためのインターネット回線も必要で、すぐに実現は難しいという。
クレイ職人の重要性は変わらない「Sprit of Craftsmanship」
「Sprit of Craftsmanship」のコーナーではクレイを削る専門のモデラーの仕事を紹介した。デザインの工程は今では最初のイラストからPC上で行なうことが可能だが、工業用粘土を使ったクレイモデルによって実際の3Dに表現、細部を確認する工程の重要性には変化はないという。
大型のクレイモデルを作成するときは、数値制御切削(NC切削)で荒削りまで行ない、表面はモデラーが仕上げていく。おおよその形まで機械化できたことでモデラーの仕事は減ることはなく、むしろ、省力化したぶんは、より細部までデザインを突き詰めることに費やしている。その結果、デザインの完成度は以前よりも高められている。
また、工程もクレイモデルを一度削って終わりではなく、できあがった形を見ながらさらに細部を修正、形を表したあとに3Dスキャナで再びデジタル化。数値制御切削(NC切削)で再びクレイモデルの荒削りが行なわれるということを何度も繰り返す。機械化が進んだところは省力化するが、浮いた時間はさらに細部まで作り込むことに費やされるという。