横浜ゴム、“亀裂が進みにくい”ゴム材料開発 劣化なくリサイクル可能な高分子微粒子を活用

本研究で作製した微粒子フィルムの切れ目からの引裂試験の様子

　横浜ゴムは6月23日、信州大学学術研究院（繊維学系）の鈴木大介准教授らの研究グループと共同で、高分子微粒子を活用し有機溶剤や補強剤などの添加剤を使わずに、亀裂（クラック）に対して高い耐久性を有するゴム材料を開発したと発表した。同研究で得た知見をもとにさらに研究を進めることで、人や環境にやさしく、より安全で耐久性の高いタイヤやゴム製品の開発につなげることができ、また開発したゴム材料は簡単に劣化なくリサイクルすることが可能であり、サーキュラーエコノミーへの貢献も期待できるという。

　同研究は、重合方法の1つとして知られるミニエマルジョン重合法（エマルジョン重合法の1つで、超音波を照射することによってモノマーと開始剤を水中内で微粒子化した後に重合する方法）によって合成した高分子微粒子（以下、微粒子）およびその微粒子分散水溶液（以下、分散水溶液）を用い、分散水溶液から水を蒸発させて作製した微粒子フィルム（ゴム材料）を活用して実施。

　この微粒子フィルムは超分子化合物として知られるロタキサン分子を微粒子の内部に架橋剤として導入することで、補強剤などその他の添加剤を一切使用せずに、切れ目から亀裂が広がりにくい性質を持たせることに成功。この微粒子フィルムはゴム材料としての高い伸縮性も維持しているという。

　さらに、微粒子のみから作製した微粒子フィルムは、環境負荷の小さい水とエタノールの混合溶媒に浸すだけで微粒子個々に分解することができ、その後、揮発性の高いエタノールのみを蒸発させて元の微粒子と水から成る分散水溶液に戻せるため、同じ微粒子フィルムを簡単に劣化なく再生することが可能としている。

微粒子フィルムの形成プロセス