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横浜ゴム、2023年は「泥試合」としてジオランダーを全面プッシュ 「Yokohama Transformation 2023」進捗解説

2023年4月26日 実施

中期経営計画「Yokohama Transformation 2023」の進捗を解説

 横浜ゴムは4月26日、取締役常務執行役員 技術・生産統括 兼 IT企画本部担当の清宮眞二氏より、2021年にスタートし、2023年度が最終年となる中期経営計画「Yokohama Transformation 2023(YX2023)」の進捗説明を行なった。

 清宮氏によると、世界市場におけるタイヤは「消費財(乗用車用タイヤ)」と「生産財(トラックやバスなどのタイヤ)」がほぼ半々だが、横浜ゴムはやや消費財寄りの配分だという。しかし、今後はカーシェアや自動運転など個人の自動車保有状況が大きく変わっていくことが予想されるため、中期経営計画YX2023では消費財の商品価値向上(深化)と同時に、生産財であるOHT(オフハイウェイタイヤ)事業の拡大方法を探索していた。

横浜ゴムのタイヤ事業戦略

乗用車用タイヤ=消費財の進化

 一般ユーザー向けの消費財では、グローバルフラグシップタイヤブランド「ADVAN(アドバン)」、SUV・ピックアップトラック用タイヤブランド「GEOLANDAR(ジオランダー)」、さらに冬用(スタッドレス)タイヤブランド「アイスガード」の高付加価値品比率の最大化を図ってきた。

 中期経営計画初年度の2021年は「冬の陣」と題して新スタッドレス「アイスガード7」を市場に投入。深田恭子さんやウルトラセブンを起用して認知度を高めてきた。そして2022年度は「ADVAN 夏の陣」と題して、レクサスの「RX」「LX」やトヨタ自動車の「bZ4X」、日産自動車の「フェアレディZ」、スバル「ソルテラ」、ホンダ「ZR-V」など多くのプレミアムカーやEV(電気自動車)の新車装着タイヤとして採用されてきた。

中期経営計画「YX2023」の進捗を解説する横浜ゴム株式会社 取締役常務執行役員 技術・生産統括 兼 IT企画本部担当の清宮眞二氏

 また、モータースポーツシーンでも、国内最高峰の自動車レース「SUPER GT」のGT300クラスでシリーズチャンピオンを獲得したほか、アメリカのコロラド州で開催される「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」でも総合優勝と果たすなど、目覚ましい活躍を遂げた。市販タイヤでもグローバルフラグシップタイヤの「アドバン スポーツ V107」やストリートスポーツタイヤ「アドバン ネオバ AD09」を発売するなど、アドバンブランド飛躍の年とした。

グローバルフラグシップタイヤの「アドバン スポーツ V107」
内側にサイレントフォーム(スポンジ)を搭載した製品
北米・豪州向けのジオランダーA/T XD

 2023年は「泥試合」をテーマに掲げ、SUV・ピックアップトラック用タイヤブランドである「ジオランダー」を全面的にプッシュ。3月に北米・豪州向けに発売した新製品「ジオランダーA/T XD」は、北米でトヨタのピックアップトラック「タンドラ」「セコイア」の新車装着タイヤとして採用されているほか、製品サイズラインアップの大幅拡張も予定。下期には新製品を投入すると明かされた。

 また、アドバンブランドも誕生45周年を迎えることを機に、100%再生エネルギーで生産するEV向け商品の開発をスタート。スーパーフォーミュラやニュル24時間耐久レースで、すでに開発が始まっているサスティナブル素材を活用した新世代のレーシングタイヤの実走テストを継続。

 2023年も合計370サイズ以上をラインアップすることで、AGW(ADVAN・GEOLANDAR・WINTERの頭文字)の販売比率5%アップ(42%→47%)を目論んでいる。

各ブランドでシェア拡大を図っている
2022年度は「ADVAN夏の陣」と題してプッシュした年だった
タイヤ消費財の2022年度の販売実績
「泥試合」と題してGEOLANDARブランドの訴求を図る2023年度
2023年のGEOLANDARブランドの取り組み
2023年のADVANブランドの取り組み
タイヤ消費財の2023年度の販売計画

トラックやバスなどのタイヤ=生産財の探索

 トラックやバス用タイヤなどの生産財では、2022年はインドの新工場の生産がスタートしたことで、OHT生産能力が約40%増強されたほか、スウェーデンに本社がある農業機械用や産業車両用タイヤなどの生産販売事業を手掛けるトレルボルグを買収したことで、消費財と生産財の割合を、世界市場と同じほぼ1:1に近づけられるとしている。

 2023度については、インドでは第3工場をフル生産させ、三重工場も年間約4万本の増産を可能にすべくMIX投資を実施。2024年下期には年間約6万本の生産体制を築くとしている。また、タイヤ管理サービスも強化を図り、2023年は2022年の販売実績を上まわる計画だという。

生産財の2022年の実績
2023年度の生産財の取り組み
トレルボルグを買収

カーボンニュートラル実現への取り組み

 横浜ゴムは2030年までに、自社活動によるCO2排出量を2013年比38%削減するという目標を掲げていて、それに対してLED照明への交換や、機械の最適運用、設備の効率改善などを行なうことで、毎年1%ずつエネルギー使用量を減らす取り組みを開始している。

 また、愛知県新城市にある新城南工場では、太陽光発電やボイラー燃料のLNG(液化天然ガス)への転換、調達電力の再生エネルギー化の実現など、100%再生可能エネルギー由来の電力のみで「カーボンニュートラルタイヤ」の生産を開始する予定。なお、レース用タイヤを生産している三島工場については、すでに調達電力の再生可能エネルギー化を実現しているという。

カーボンニュートラルへの取り組み
サスティナブル素材を活用した取り組み

 最後に清宮氏は、2023年はトレルボルグを買収したこともあり、なんとしても売上収益1兆円を達成したいと意気込みを語り、中期経営計画の解説を締めくくった。

中期経営計画の最終目標