レビュー
【タイヤレビュー】ブリヂストン「レグノGR-XIII」、新基盤技術エンライトンを採用した次世代プレミアムコンフォートタイヤの乗り味とは?
2024年4月8日 12:26
- 2024年2月 発売
- 2万6730円~11万3960円/本
新技術により電動車に求められる性能を搭載した「GR-XIII」
ブリヂストン(以下、BS)のプレミアムタイヤの基幹商品「レグノGR-XII」が刷新され「レグノGR-XIII」へと進化した。BSの新しい基盤技術である“ENLITEN(エンライトン)”を駆使して完成した国内初の量産市販タイヤとなる。ENLITENは生産技術の考え方、BCMA(Bridgestone Commonality Modularity Architecture)と組み合わせて軽く、真円なタイヤがアジャイルに作りあげることができるのが特徴だ。
新しいレグノGR-XIIIは、従来のソフトで静かという定着したイメージから一歩踏み出し、静粛性と乗り心地の性能アップと共に、さらに運動性能を向上させるというレグノの枠を越えたコンセプトを打ち出している。
GR-XIIIのトレッドパターンは、従来品「GR-XII」の消音効果の高いパターンを進化させ、一見近似性があるものの縦溝の幅が異なり、溝の中で空気がぶつかり合う気柱管共鳴を低減する構造をさらに進化させてたものとなっている。
また、これまで要求性能に対して部材を当てていたものを簡略化して、ENLITEN×BCMAにより無駄を省いた構造を実現したことにより、剛性確保と各性能のアップが図られ、同じサイズでは約10%もの軽量化を達成したという。試乗会会場には、GR-XIIとGR-XIIIのカットモデルがあったが、確かに余分な構造材を必要とせず、無駄のない美しい構造だった。
一般道、高速道路、テストコースとさまざまな条件で試乗
郊外試乗はBMW「i4」で、装着サイズはフロント245/40R19、リア255/40R19と、内燃機のBMW「840d」も用意され、こちらはフロント245/35R20、リア275/30R20の2台の車両に試乗した。短時間ではあったが一般道と高速道路を試乗して突出して感じたのは静粛性。バッテリEVの音は主としてロードノイズと風切り音になるが、もともとi4は風切の風切り音が目立たないので主たる音源はロードノイズになる。しかしGR-XIIIが発す“ゴー音”はかなり抑えられており静粛性の高いキャビンが際立っていた。
音は凹凸のある一般道からフラットな高速道路まで速度域、路面の種類に関わらず突出した音がないのが特徴だ。
安定性の面では高速ではバッテリEVならではの低重心で直進性が高い。タイヤ剛性も高く安心感があったが、ニュートラル附近の反応はそれほどシャープには作られていない。この後BMWの840dにも試乗した。ハンドリングも軽快でフットワークに優れているが、タイヤとの相性はi4がベターのように感じられた。
一方テストコースでは高速でのライントレース性や、スラロームの応答性、そして特殊路面でのロードノイズを従来のGR-XIIと比較しながら行なった。使用車両はレクサス「ES300h VersionL」とメルセデス「EQE 350+」、タイヤサイズはレクサスが前後235/45R18、メルセデスが前後255/45R19となる。
車両は2台ずつ用意されており、GR-XIIとGR-XIIIを同条件で比較試験できるメニューが用意されていた。
最初にレクサスESでさまざまな路面を模した特殊路で路面からの衝撃やロードノイズをチェックする。GR-XIIもBSのプレミアムレンジの基幹商品だけにソツのない乗り心地だが、路面によってはパターンノイズが高かった。GR-XIIIでは路面による音の変化が少ないのは郊外路試乗でも実感したが、テストコース内にある数種類の特殊路面、特に荒れたアスファルト舗装での音圧の変化の少なさが印象的だった。
乗り心地ではタイヤかタッチから路面形状が分かりやすい。では突き上げ感があるのかと思いきやバネ上の動きはフラットでちょっと不思議な感覚だった。上下収束が早いことでそのように感じられているようだ。
細い縄を連続的に渡した小さい突起路面は顕著には分からなかったが、GR-XIIに比較するとタイヤから感じられる衝撃が小さい。ゴムとシンプルなタイヤ構造で上下動を吸収しやすくなっている感触だった。
メルセデスEQEでは中高速でのハンドリングを確認した。GR-XIIIのステアリング応答性は転舵速度が遅い時はジワリとした反応を見せる。一方のGR-XIIではもう少し重みのあるよい意味での鈍い応答性を持つ。
GR-XIIIで少し違和感があったのは、早いステアリング操作で左右に振った時に収束遅れがあったこと。ただし発散するのではなくクルマの姿勢は落ち着いているところが興味深い。ヨー収束は早く納まりがいいことがうかがえる。
一方、高速で一定舵角で旋回した時はGR-XIIIはGR-XIIに比較すると舵角が少ないのが特徴。応答性はしなやかでスッキリとした操舵感になる。同じく低速のスラロームでは低重心のEQEでは前後タイヤがバランスよく踏ん張って曲がっていく感覚だ。BMWのi4同様、低重心、重量級のバッテリEVとの相性はよい印象だ。
さて、タイヤの10%におよぶ軽量化は転がり抵抗などのメリットも大きいが、コーナリング時の腰砕けや突き上げでの乗り心地の悪化を招くケースもあり、剛性バランスを巧みに取らなければならない。その点GR-XIIIは非常にうまくまとめられている印象だ。
レグノは乗り心地がよく、静粛性が高い国内専用のGR-XIIからGR-XIIIにモデルチェンジする過程で、新しいプレミアムタイヤ像を目指したことが分かる。バッテリEVに代表される重量級の車両に対応したブレーキの大型化、それに伴うタイヤの大径化、走りの安定性、静粛性の向上など、これからのタイヤに求められる性能を新しい開発の基盤技術と生産技術で開発されたのがGR-XIIIだ。
目指したタイヤのレーダーチャートを見ると静粛性の向上代が大きいが軽量化を達成しながらハンドリングの向上部分も見過ごせない。ここまで触れていないがコンパウンドも分子レベルでの性能向上で、ソフトで剛性の高いゴムを開発できたことで、サイレント構造と合わせて静音性能、低燃費に貢献をしている。
また今回ウェット路での試乗はできなかったが、ウェットラベリングは全53サイズで「a」を取得しており、ウェット性能も向上したことがうかがえる。
GR-XIIIはブリヂストンの新しい基盤技術ENLITENと生産技術BCMAによって短時間での開発が可能となった今後登場する商品群の第一号となる。