レビュー

【タイヤレビュー】トーヨータイヤ「オープンカントリーH/T II」 オンロード志向のSUVや軽自動車にジャストフィット!

2025年4月より順次発売
オープンプライス
全20サイズ
トーヨータイヤの新製品「オープンカントリーH/T II」を試乗する機会を得た

 トーヨータイヤの「OPEN COUNRY(オープンカントリー)」シリーズは“オプカン”という愛称がユーザーの間に生まれるほどスマッシュヒットしている。その理由の1つがきめ細やかなラインアップであり、実は本格オフロード向けからオールシーズンといえるものまで7つものラインアップを展開している。

 今回はその中の1つで最新作となる、主にオンロード向けに開発された「オープンカントリー H/T II」を試してみる。このタイヤはファッショナブルなデザインは他のシリーズと同様としながらも、トレッド部はオンロード向けにすることで、静粛性、摩耗、転がり抵抗の低減などを手にしていることが特徴となる。

オープンカントリーH/T II。写真はサイドの文字が黒い「ブラックレター」
オープンカントリーシリーズのラインアップとそれぞれの製品ポジショニング。なお、M/T=マッドテレーン、R/T=ラギッドテレーン、A/T=オールテレーン、H/T=ハイウェイテレーン、U/T=アーバンテレーンと呼び、走行シーンによってポジショニングされている

 今回は軽自動車向けの「オープンカントリーH/T II」を試した。その実物はブランド名や銘柄を白字とする好評のホワイトレターではなく、なんと可愛らしいホワイトリボンを採用していた。レトロな仕上がりは人気が出そうだ。

 話はやや脱線するが、このホワイトレターやホワイトリボン、一体どうやって作っているかご存知だろうか? てっきり塗装しているのかと思いきや、白いゴムが中にあり、表面だけを削って作っているとのこと。よって、縁石に擦ったりしたとしても、白い部分が剥げてしまうなんてことはない。

軽自動車やコンパクトSUV向けに設定しているホワイトリボン
ホワイトリボンは軽自動車向けに設定している
コンパクトSUV向けはロゴ文字が白いホワイトレターを用意するほか、本格SUV向けにはブラックレターも設定

 トレッドパターンを見てみると、他の「オープンカントリー」に比べてかなりフラットな見た目であることが伺える。ただ、ブロックの1つひとつが大きく設計されており、力強い感覚が伝わってくる。ショルダー部はSUV向け(断面幅215以上)はスクエアだが、軽自動車やコンパクトSUV向け(断面幅205以下)はラウンドしている。

断面幅215以上は角ばったスクエアショルダーを採用(リムプロテクター付き)
断面幅205以下は丸まったラウンドショルダーとなる(リムプロテクターなし)

 これなら確かにオンロードで乗ったとしてもゴツゴツはしないだろう。特徴の1つとしては摩耗時に溝幅の一部が広がるように設計されたディンプル付きワイドグルーブが備えられていることだ。溝が浅くなったとしても横方向に広げることで、水を吸収する面積を確保しようとしている。

試乗車(三菱デリカミニ)が履いていたのは断面幅205以下なのでラウンドショルダータイプだ
中心部は排水性を高めたワイドグルーブを採用しつつ、偏摩耗や耐摩耗性に寄与するマルチウェーブサイプも搭載。またショルダーグルーブをストレート化することで静粛性も向上させている
ワイドグルーブは摩耗後も排水性を維持できるようにディンプルを設けている

 今回の試乗ではオフロード向けの「オープンカントリー R/T」(以下R/T)と比較しながら、「オープンカントリー H/T II」(以下H/T II)の特徴を見てみることにする。

 まずはR/Tで舗装路の外周コースを走ってみると、動き出しからゴツゴツとしたフィールと“ゴーッ”というロードノイズが車室内に入ってくる。いかにもオフロードタイヤといった感覚だ。後席に座ると音はさらに拡大し、やや耳障りであることは否めない。リアのタイヤハウス横に座らされているのだから当然といえば当然だが、これではちょっと同乗者が可哀想かもしれない。

オープンカントリーH/T IIは、リアタイヤの接地もしっかりしていて安心感が高い

 走りの面では主にコーナーリング時のグリップの頼りなさが気になる。特に高速からの緩めの旋回ブレーキでは、リアの接地が瞬間的に抜けるようなこともあった。テストコースだからと特別な乗り方ではなく、高速道路のジャンクションにちょっと速く入ってしまった時に、若干ブレークしてしまうような動きは気になる。

オープンカントリー A/T EXと比較して転がり抵抗は17%ほど低減しているとのこと

 もちろん、その後はスタビリティコントロールに助けられるから、本当にヤバイ状況になるわけではないが、瞬間的にグリップが抜ける動きは気になるところ。おそらくイン側リアの接地が抜けてしまっているのだろう。スタビリティコントロール付きのクルマで、速度を抑えて乗るならR/Tでもいいかもしれないが、雰囲気がいいからと何の安全装備もない旧車の四駆に装着するのは、あまりオススメできないと感じた。まあ、オフロード向けのタイヤだから当然といえば当然の話ではあるが……。

オープンカントリーH/T IIの車室内は後席を含め、オープンカントリーR/Tよりもかなり静か

 対するH/T IIは同じような状況でリアの接地が抜けるようなことはない。安定した走りを展開しており、さらに抵抗感もなく静粛性にも優れていることは明らか。リアに座ったとしても嫌な音に悩まされるようなこともない。「おしゃれは我慢から」なんていう世界だったものが1つ解決したように感じたH/T IIの仕上がりだった。オンロードしか走らないユーザーには、断然コチラをおすすめしたいと思った。

オープンカントリーH/T IIは、まさにオンロードに適したタイヤに仕上がっている
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。