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トーヨータイヤ、2024年も好調で決算予想を上方修正 「2025年は原点回帰。不断の改革と柔軟性で強靭化を図る年」と清水隆史社長
2024年12月11日 11:43
- 2024年12月10日 開催
2023年に引き続き2024年の業績も好調と清水社長
TOYO TIRES(トーヨータイヤ)は12月10日、2024年のふり返りと2025年の展望を清水隆史社長が説明する記者会見を実施した。
2024年の世界情勢について清水社長は、「大半の経済指標はすでにコロナ前の水準を上まわり、実体経済が着実に平時へと戻っていますが、気候変動や地政学的リスク、エネルギー需給など、世界的に対処が必要な課題は深刻な状態のまま。これからはグローバルにつながる経済ネットワークをはじめ、社会的な生活基盤や消費者心理にまで影響をおよぼす世界各地の政局も従来のものからリセットが即され、企業経営を進めていくうえでの環境は安定性を欠き、さまざまな側面での不確実性が大前提にあると感じています」とコメント。
また、エリアごとの状況については、「米国は景気の底堅さが示されつつあるものの、個人消費の勢いは弱含み。労働市場の難化やインフレの長期化が継続していることから、全体として景気の拡大ペースは鈍化が続いている。欧州ではロシアウクライナ戦争をきっかけに、エネルギー価格の高騰、インフレの急伸、金融引き締めなどを受け、マーケットの停滞感が強まっている。一部の地域で個人消費が持ち直しているものの、内需外需ともに経済活動の復調という面では勢いが乏しい状態。日本では雇用や所得の環境が改善傾向にあり、各種政策の効果もあって緩やかな回復が続くことを期待している。しかしながら、急激な為替の変動、さまざまなコストの上昇をはじめ、常に先行きを注視していく必要があると考えている」と清水社長は説明した。
続けて2021年2月に発表した新中期経営計画「中計'21(2021年~2025年)」の進捗については、「迅速かつ柔軟な適用力の強化を方針に掲げ、スタートから4年間、さまざまな外部環境変化の中にあっても、常にこれを意識して取り組んできたことで、来年度の着手として掲げた目標もすでに多くの項目で達成が見えている」と堅調さをアピールした。
2024年度の1月~9月(第3四半期)の業績については、「最重要市場である北米をはじめ、日本や欧州などグローバルに取り組んだ重点商品の販売強化が業績を下支えして、 1~9月の売上高は累計で過去最高を更新しました。利益面でも海上運賃や販管費などのコスト抑制をしたうえ、為替の円安メリットも追い風となり、営業利益、経常利益も第3四半期として過去最高を更新しました」と報告。
また、2024年度の通期の業績予想は、営業利益860億円(+50億円)、経営利益820億円(+60億円)、当期純利益を600億円(+100億円)、1株あたりの株主配当金も110円(+5円)に上方修正したという。
これらの結果を踏まえても清水社長は「80点ぐらいかな……」と厳しい採点。減点となる20点については、2022年に開所したセルビア工場の一部稼働が遅れていること、米国で人員不足により大型タイヤの生産が追い付いておらず機会ロスが生まれたこと、2024年の年初はアセアンの格安タイヤ(主にトラック用)が米国に大量に輸入されたことで販売店の棚を一時的に奪われたことなどを要因として挙げた。
ただし、格安タイヤに流れた顧客も徐々に性能を求めて回帰してきていることや、トランプ政権になって輸入関税が上がることになれば、さらに状況は好転するのではと予測しているという。加えて、米国の大型タイヤの生産が追い付かない理由は、従業員の離職率の高さが要因とのことで、インセンティブ(成功報酬)などを組み込み、定職するような仕組み作りを模索しているという。
さらに清水社長は、米国タイヤ販売会社TOYO TIRE U.S.A. CORP.が、2月にMLB(メジャーリーグベースボール)の「ロサンゼルス・ドジャース」とのスポンサー契約を締結したことに触れ、「大谷翔平選手が球史に残る大きな活躍を見せてくれました。スタジアム内の看板やインタビューボードなどで、『TOYO TIRES』のロゴが度々映し出され、ブランド人気の向上に大きな手応えを感じられました」と感想を述べた。
そのほかにも、11月にセルビア共和国内に、欧州での販売統括を行なう新会社「TSE(Toyo Tire Sales and Marketing Europe d.o.o. Indija)」を設立した件に触れ、「ドイツ、オランダ、イタリア、イギリスにあった販売機能を、新会社へ集約するとともに、セルビア工場敷地内にR&Dセンターも新設し、現ドイツR&Dセンターの機能の一部を移管し、生産拠点のあるセルビアで欧州全域に対する生・販・技の事業体制を一元的に集積し、欧州における事業経営基盤をさらに強固なものにする」と清水社長は言及。新会社は2025年1月から稼働するという。
日本ではSUVやオフロード仕様の車両の人気が継続していることから、新たにSUV用タイヤブランド「OPEN COUNTRY」シリーズの、サステナブル素材を採用したラギットテレーンタイヤ「OPEN COUNTRY R/T TRAIL」の導入を発表。記者発表会場内にも現物を展示した。また、「オープンカントリーというブランド名称がユーザーから“オプカン”との愛称で呼ばれていることも、極めて珍しいのではないかな」と清水社長はコメント。
構造改革の進捗については、「今年は国内でも拠点を150から半分にしたり、従業員を1200人から900人に削減したり改革を実行中です。ただし、構造改革に終わりはなく、日々議論していますし、常に必要があれば変えていきます。弊社はそれを実現できる企業規模であるのも取り柄の1つであると考えています」と説明した。
また、EV向け大口径タイヤ「OPEN COUNTRY A/T III EV」の開発にも活用した、独自の高効率・高精度タイヤ設計プラットフォーム「T-MODE」については、第7世代HPC(High-Performance Computing)システムを新たに採用し、より高性能なタイヤをよりスピーディに開発する商品開発基盤が整ってきたと紹介。それらは近々に説明する機会を設ける予定という。
最後に、2025年は60年周期の干支だと42番目の「乙巳(きのとみ)」であり、「努力を重ねてきたことが、屈曲して軋むほどとなり、上蓋を跳ねるがごとく芽吹くと一気に極限まで伸びる」という意味を持つと言い伝えに触れつつ、同時に創業80周年を迎えることもあり、「2025年は原点回帰。不断の改革と柔軟性で強靭化を図る年というスローガンを掲げて取り組んでまいります」と締めくくった。
タイヤの開発やサステナブル素材などの進捗について、TOYO TIRE 取締役 執行役員 技術統括部門管掌の守屋学氏は、「AIを使いながら材料の開発期間を短くしたり、金型の設計にもシミュレーションを活用してもっとコンパクトにしていく。これは昨年導入したスーパーコンピュータでかなり計算が速くなったので、このあたりも開発期間の短縮につながってくると思います」と説明。
またサステナブル素材については、この日サステナブル素材を採用したラギットテレーンタイヤ「OPEN COUNTRY R/T TRAIL」に触れつつ、「基本的にレース活動を踏まえながら、サステナブル比率を高めていき、レースで使える素材を市販の商品に採用してきます。ただし、まだコストの課題もあるため、そこは市況を見ながら、どこまで採用していくかを判断していく必要がある。とはいえ2030年にサステナブル原材料比率40%を約束しているので、到達できるように取り組んでいきます」と言及した。