レビュー

【タイヤレビュー】トーヨータイヤ「プロクセスLuKII」 軽ハイトワゴンの快適性とウェット路面での安心感が向上

2025年3月 発売
オープンプライス
全4サイズ
トーヨータイヤの新製品「プロクセス LuKII」を試乗する機会を得た

 およそ11年ぶりのモデルチェンジとなったトーヨータイヤの軽ハイトワゴン専用のプレミアムタイヤ「PROXES(プロクセス)LuKII」。その名に違和感を覚えるかもしれないが、実は従来品の名前はミニバン・軽自動車用ブランドの「TRANPATH(トランパス)LuK」である。

 しかし、背が高く、トレッドと高さの比率がそもそも物理的に難しい軽ハイトワゴン。近年は装備の充実なども加速して重量が増す傾向があり、そこに対応するためには新たなるタイヤが必要ではないかとなり、モデルチェンジに踏み切ったという。

軽ハイトワゴンは横からの応力の影響を受けやすいのが弱点

 今回モータースポーツなどで活躍を続けている「プロクセス」ブランドに変更したことで、走りがどう生まれ変わっているのかが気になるところだ。ちなみに現在のサイズラインアップは、155/65R14、165/60R14、165/55R15、165/50R16の4種類のみ。

新製品「プロクセス LuKII」

 そんな新作の「プロクセス LuKII」をチェックしてみると、トレッドパターンは非対称となり、アウト側のブロックを大きめにしているところはこれまでと変わらずといった印象で、重心が高いハイト系ワゴンにも対応できそうな雰囲気がある。

 また、ワイドなセンターリブを採用することで、ステアリングの応答性も期待できそうだ。イン側は3Dマルチサイプという溝の中に剛性調整用の溝を主溝から90度異なる方向に入れることで、表面ブロックの接地圧集中を抑制。ブロックの端に接地圧がかかりきっていた状況をなくし、結果的に接地圧を全体に分散させることに成功したという。

 さらに、斜めに走るフレキブルテーパーも横力負荷時に局所的な接地圧を与えないための処理。少ない横幅をいかに活かしていくかを考え、効率よく受け止めることで、グリップだけでなく摩耗にも寄与してくれそうなトレッドパターンがそこにある。

中央にワイドセンターリブを搭載。また、フレキシブルテーパーによって操縦安定性としっかり感を向上させている。イン側は静粛性を重視、アウト側は操縦安定性を重視と左右非対称パターンを採用した
偏摩耗抑制により摩耗後のノイズに寄与する3Dマルチサイプを搭載
アウト側のサイド面は凹凸のある立体的なデザインを採用し、見る角度によって異なる表情を演出している
3Dマルチサイプを採用し、ブロック端の接地圧の集中を抑え、接地圧の均一化を向上させた

 このトレッドパターンとともにコンパウンドの見直しも行なっている。サステナ素材を使ったシリカ分散剤を使用。それを均一に分散させたことで、ウェットグリップと転がり抵抗を両立したところがポイントだ。結果的に従来品よりもウェット制動距離は12%、ウェット旋回ラップタイムは3%向上。転がり抵抗も9%高めることに成功している。

新たな低燃費コンパウンドを採用

 今回はそんな「プロクセス LuKII」を、従来品と比較しながら試乗した。まず走ったのはウェットハンドリングコースだ。自慢のウェット性能はいかなるものか? 従来品を試したのちに走ってみると、ステアリングの初期応答が明らかによく、操舵角は明らかに減っていたところが印象的。

 従来品はタイヤが倒れ込んでからグリップするようなところがあり、それが最近のハイト系ワゴンには合わないということなのだろう。クルマが少し軽くなったかのようなキビキビとしたフィーリングは好感触。

 グリップ感も高く、結果としてペースが上がってしまうところがあるが、スタビリティコントロールの介入は少なく、安定した走りが可能になっていた。

キビキビとしたフィーリングだ
グリップ感も高く、ウェット路面でも安定して走れた

 続いてドライ路面の外周路を走ってみると、まず感じるのは剛性感の高さだった。かなりしっかりとした確かなフィールがある。荒れた路面で入力があると、低速ではやや硬質な感覚だが、速度が上がれば上がるほど安定。

 スラロームやフル制動を行なっても不安感が少ない。また、バンク下でハイスピードコーナリングを行なってみても、操舵角が少なく駆け抜けていたことが印象的だった。

バンクの上から下まで試してみたが、速度が上がるほど安定する方向性だった
100km/h以上で走るバンクの最上段コースでも安定していた

 この仕上がりがあれば、これからの時代もおそらく乗り切っていけそうな気がしてくる。ハイブリッド化だけでなくBEV(バッテリ電気自動車)化した軽自動車も増えてくることを考えると、タイヤもまたしっかりしなければならないという流れなのが肌で伝わってくる仕上がりだった。

電動化を見据えたタイヤ作りが感じられた
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。