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NEC、自動運転向けモビリティサービスプラットフォームや沖縄県豊見城市での自動運転EVバスの実証実験について報告
2025年10月10日 17:38
- 2025年10月10日 発表
NEC(日本電気)は10月10日、自動運転向けモビリティサービスプラットフォームの取り組みや、沖縄県豊見城市にて2024年3月から開始した路線バスの自動運転実装に向けた実証実験の成果などについて説明した。
NECは、乗車予約や乗客認証をはじめとした運行管理機能のほか、車両管理、遠隔監視、履歴データ、共通テンプレートなど、自動運転車両を活用するために必要な機能を、プラットフォームサービスとして提供。NEC モビリティソリューション統括部プロフェッショナルの紀平知慧氏は、「NECはモビリティサービスプラットフォームを通じて、地域の発展に貢献する。これが目指す姿になる」と語った。
モビリティサービスプラットフォームで提供する特徴的な技術の1つが、遠隔監視機能で活用しているアプリケーションアウェアICT制御技術である。通信負荷を予測するとともに、車両や道路の白線など、AIの分析に必要な映像を最適化して配信。通信負荷による映像の乱れや、コマ落ちが多く遠隔での状況把握と安全な運行が困難な場合でも、遠隔車両の交通状況を高精度に把握できるといい、「NECの強みは通信にある。AIを活用したリアルタイム遠隔監視により、映像の効率化やリアルタイム性を向上させられる。1人で複数の自動運転車両を管理でき、自動運転車両を安全に運行できる」という。
一方、沖縄県豊見城市での実証実験の取り組みについては、2024年3月に第一交通産業および電脳交通と、地域の交通課題解決に向けて業務提携を発表。2024年5月には沖縄県豊見城市と包括連携協定を結び、これをベースに自動運転バスの実証実験を実施した。
2024年10月8日~11月1日まで、第一交通産業の子会社である琉球バス交通が、豊見城市で運行する105番線を対象に、自動運転の実証実験を行なった。全長12kmのルートで、停留所数は25か所。ティアフォーの自動運転用ミニバスを使用した。
105番線は地元の生活路線であり、豊見城市の市内を1周している。自動運転バスは無料で運行し、運転手がハンドルを補助する形で乗車。運行日数は23日間で87便を運航し、豊見城市民を中心に1787人が利用したという。
自動走行率は93%であり、手動運転の介入理由として、路上駐車回避が全体の37%と最も多く、そのほかに工事による車線規制、混雑環境での車線変更、直進時対向車両接近回避などが挙がっている。「今回の自動運転バスの実証実験では、全国的に見ても距離が長い事例だといえる。交通量が多い我那覇交差点の左折や、停留所への進入や停車もスムーズに行なえた。また、翁長北交差点での右折も、対向車などの走行環境を確認して行なっている。最初の実証実験としては高い自動運転率を達成したと判断している。今後も自動運転率を高めていくための努力をしていく」と説明した。
この実証実験において、NECでは事業の企画や推進、全体の取りまとめを担当するとともに、モビリティサービスプラットフォームを提供。運行管理や遠隔監視を担当した。
運行管理では、バスの位置情報や車両からのデータを収集。レベル4での運行を想定し、遠隔から車内の安全を確認した上で発車指示をするといったことも行なった。「どこを走行しているのか、運行ダイヤどおりに走行しているのかを管理できた」とのこと。
また、遠隔監視ではバスに搭載した車内外の8台のカメラ映像をリアルタイムで監視。アプリケーションアウェアICT制御技術により、ネットワーク帯域を予測して画質をコントロールするともに、重要部分の映像は高解像度化する一方で、重要ではない部分は低解像度化することで、映像が致命的に乱れてしまうことを防止できたという。
今後の自動運転の実証実験の計画についても明らかにした。
沖縄県豊見城市では、2回目の実証実験を2025年11月末~2026年2月中旬まで実施する予定。今回は、レベル4の認可取得に向けたデータ蓄積や、自動運行率の向上、利用者の満足度などを検証するという。
また、自動運転タクシーの事業検証も実施する。2026年1月上旬~3月末の期間に、徳島空港~鳴門市内一帯を対象に実証実験を行ない、既存タクシーとの共存を視野に入れ、事業化に向けた検証を進める。ここでは、実証実験に参加する電脳交通の配車サービスとの連携も図ることになるという。詳細については年内にも発表する予定だ。
NECの紀平氏は、「NECはソリューションを提供する会社であるが、自動運転の活用方法や、あるべき姿を自ら描き、それを積極的に提案していこうと考えている。豊見城市での実証実験を通じて、自動運転サービスに必要な機能はなにかといったことを検証できた。自治体や交通事業者と一体となり、現場で想定される課題を吸い上げられた。制度設計や運用ルールの議論における情報収集にも役立っている。利用者視点と運用者視点の両面から、サービスの方向性をリードできる」などと語った。
NECでは、自動運転向けモビリティサービスプラットフォームを通じて「安全安心な暮らし」「活気ある地域経済」「人が集う地域」の実現を目指すという。





