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ブリヂストン、グリーンスローモビリティ向け第3世代「エアフリー」試乗会を自治体向けに開催

スチールホイールとエアフリーの組み合わせがJMS2025で登場

2025年10月17日 開催
次世代タイヤ「エアフリー」の社会実装に向けた自治体向けグリーンスローモビリティを開催(写真はエアフリー担当者)

カートとバス向けのエアフリーが登場

 ブリヂストンは10月17日、ブリヂストン技術センター(東京都小平市小川東町)においてパンクしない次世代タイヤ「AirFree(エアフリー)」の社会実装に向けた自治体向けグリーンスローモビリティ(以下グリスロ)試乗会を開催した。

 エアフリーは専用形状のアルミホイールに熱可塑性樹脂の基本骨格、ゴムによるトレッドで構成され、通常のタイヤと異なり空気を必要としないことから“パンクしない次世代タイヤ”と呼ばれる。現段階で第3世代まで進化しており、2008年に登場した第1世代、2013年に登場した第2世代とは異なり、2024年に公道実証実験を開始するなど社会実装を見据えるまでに進化してきている。

 基本骨格で使われる熱可塑性樹脂は熱で溶かして再原料化ができ、トレッドは摩耗した場合にゴムを交換するリトレッドに対応するサステナブルデザイン。基本骨格で使われるブルーカラーは「エンパワーリングブルー」と呼ばれ、明るい場所でも視認性が下がる夕暮れどきでも目立つことから選んだ色になるという。

左がカート、右がバス向けのエアフリー

 自治体向けのエアフリー試乗会としては2024年にも開催しており、その際はスバル「プレオプラス」に装着して試乗が行なわれた。今回はカートタイプとバスタイプのグリスロが試乗車として用意され、それに合わせ込んだエアフリーを用意した。

 ブリヂストンとしては、今後のサステナブルな成長へ向けた新たな種まきとしてエアフリーを推進している。地域が抱える交通に関する課題の解決策として注目されているグリスロをターゲットの1つとしており、今後複数の地域で実証実験を進めたのち、2026年の社会実装を目指す。すでに2025年1月に滋賀県東近江市、2月に富山県富山市とグリーンスローモビリティの共創に向けた連携協定を締結しており、社会実装に向けて一歩ずつ取り組みを進めている段階にあるという。

試乗車の2台
筆者も2台のエアフリー装着車に乗らせていただいたが、通常のタイヤと何の遜色もない乗り心地だっただけに通常履かせているタイヤと比べてみたかったと担当者に伝えたところ、「開発初期段階ではとても硬い乗り心地だったので、通常タイヤと比べてみないと分からないとおっしゃっていただけて感慨深い」との返答

スチールホイールとエアフリーの組み合わせがJMS2025で登場

 この試乗会に先駆け、ブリヂストン 新モビリティ事業部門長の太田正樹氏と探索事業AirFree開発推進部長 岩淵芳典氏がエアフリーの紹介などを行なうとともに、東京大学公共政策大学院 特任准教授の三重野真代氏がグリスロの紹介、富山県富山市活力都市創造部の相川紗南氏がグリスロの現状とエアフリーへの期待などについて語った。

 太田氏は「自治体の皆さまとの共創において、2025~2026年の間にエアフリーの社会実装を目指していくことがわれわれの直近の目標」とし、地域社会における移動に関する課題解決にエアフリーで貢献したいとコメント。

株式会社ブリヂストン 新モビリティ事業部門長の太田正樹氏
エアフリーのターゲット
2025年1月に滋賀県東近江市、2月に富山県富山市とグリーンスローモビリティの共創に向けた連携協定を締結

 また、岩淵氏は第3世代のエアフリーについて「昨年、日本で初めてエアレスタイヤが公道に出た記念すべき日を迎え、その後順調に公道での実証実験を進めております」と報告するとともに、今回のグリスロ向けのエアフリーについては「従来と比べ、グリスロの速度は20km/h未満ということで3分の1程度の速度設計になるので、ここで得られた余剰の性能を重たいものを支える性能であったり、乗り心地の性能であったりに分散させました」と紹介。

 加えてバスタイプとカートタイプのエアフリーをジャパンモビリティショー2025で展示し、カートタイプのエアフリーについては現状はアルミホイールのところ、スチールホイールを組み合わせて展示することを予告。ホイールに関してもサステナブルな循環型の材料を用いて開発を進めているとした。

株式会社ブリヂストン 探索事業AirFree開発推進部長 岩淵芳典氏
エアフリーのこれまでの歩みと進化
エアフリーの提供価値とそれを実現する技術
エアフリーのサステナブルデザイン
サステナブルデザインを実現する技術
第3世代エアフリーの公道実証実験の進捗について
エアフリーのロードマップ

 東京大学公共政策大学院特任准教授の三重野真代氏は、グリスロの価値と可能性について講演した。三重野氏は元国土交通省職員で、2018年にグリーンスローモビリティの制度を立ち上げた人物で、グリスロは20km/h未満で公道を走行できる電動車両で、窓やドアがなかったり対面座席になっていたりと、通常の車両では認められない形態が許可されているといった特徴について説明。日本の道路の約8割が幅員5.5m未満の狭い道路であり、そうした場所での移動手段として適していると述べるとともに、「低速であることでさまざまなモビリティが共存できる『出会いの空間』を創出し、まちづくりにも貢献する」とアピールした。

東京大学公共政策大学院特任准教授の三重野真代氏

 また、富山県富山市活力都市創造部の相川氏は、富山市におけるグリスロの取り組みについて紹介。富山市は面積が広く人口密度が低いため、公共交通を軸とした「コンパクトなまちづくり」を推進している。グリスロは2020年10月から富山駅北地区で社会実験が始まり、2023年8月から運賃を収受する本格運行が開始された。「Boule BaaS(ブールバース)」と名付けられたグリスロは市内を走るLRTと同じパールホワイトのカラーリングで親しみやすいデザインになっていると述べる一方で、課題として運賃収入が少ないこと、冬季の運行が難しいこと、運転手の確保が難点とした。

富山県富山市活力都市創造部の相川紗南氏