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ブリヂストン、岐阜 関工場で実証プラント起工式 使用済みタイヤのリサイクル技術確立を目指す
2025年10月22日 10:45
- 2025年10月21日 開催
ブリヂストンは10月21日、関工場(岐阜県関市)敷地内で使用済みタイヤの精密熱分解パイロット実証プラントの起工式を開いた。起工式には関市長の山下清司氏など関係者32名が参加し、工事の安全と成功を祈願した。
ブリヂストンではサーキュラーエコノミーの実現に向け、2022年からケミカルリサイクルに挑戦しており、2023年には東京都小平市のBridgestone Innovation Parkに実証機を導入し、精密熱分解試験を開始している。使用済タイヤから分解油や再生カーボンブラックを回収するための技術開発を進めており、これらの基盤技術をもとに今後は関工場のパイロット実証プラントで分解油や再生カーボンブラックなどの量産を見据えた技術の確立を目指す。
熱分解とは化合物を無酸素で加熱し、化合物の構成物質を発生させる方法。今回のプラントで用いられる精密熱分解では、温度や時間などの詳細な条件を制御し、使用済タイヤから高品質なオイル(分解油)やカーボンブラックを高収率に生成することで、資源循環性の向上やCO2排出量の削減につなげていく。
なお、今回のパイロット実証プラント建設はENEOSと進めている共同プロジェクトの一環であり、2022年2月にNEDOの「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発」に採択された実証事業「使用済タイヤからの化学品製造技術の開発」の研究開発テーマの1つ。
ENEOSで使用済タイヤから回収した分解油をリサイクルオイル化し、合成ゴムの素原料であるブタジエンなどの化学品を製造することで、再生カーボンブラックとともにタイヤ原材料として再利用される資源の循環を目指している。また、精密熱分解により得られる再生カーボンブラックは、2024年12月にNEDOに採択された東海カーボンによる実証事業「使用済みタイヤを含む高分子製品からのカーボン再利用技術の開発」において、新品並みのゴム補強性を持つカーボンブラックの生成を目指した技術開発にも活用されるという。
ちなみに日本では使用済みタイヤの99%が中間処理業者に集まる仕組みになっているそうで、そこで使用済みタイヤは粉砕され、通常は燃料として使用される。ブリヂストンではこのタイヤチップを入手し、ケミカルリサイクルを行なっているという。使用済みタイヤの扱いは国によって異なり、日本ではタイヤチップの価値が時期によって変動する。数年前はタイヤチップが余っていたが、現在は需要が高まっている状態にあるとのこと。
世界的にはタイヤチップを熱分解して再生カーボンブラックを取り出す業者は多数存在するが、日本ではほとんど存在しないそう。また、国内でタイヤメーカー自ら熱分解を行なっているのはブリヂストンだけという一方で、欧州では熱分解業者とタイヤメーカーが協力している事例がいくつかあり、環境への取り組みが進んでいるという。
起工式ではブリヂストン 代表執行役 副社長 BRIDGESTONE EAST CEO 田村亘之氏、経済産業省 製造産業局 素材産業課長 土屋博史氏、関市市長 山下清司氏があいさつ。
ブリヂストン 田村氏は、ブリヂストンの使命である「最高の品質で社会貢献」のもと、サステナビリティを経営の中核に据え、持続可能な社会の実現を支えながら成長していくことを目指しているとコメント。また、岐阜県関市に建設される今回のパイロット実証プラントはブリヂストンにとって世界初の挑戦であり、使用済みタイヤを資源として再びタイヤ原材料に戻す「水平リサイクル」の実現を目指すと述べるとともに、世界的な人口増加に伴い、自動車用タイヤとその原材料の需要も高まる見込みであることから、タイヤ業界のリーダーとして持続可能な社会の実現と安定的な原材料調達・タイヤ供給の社会的責務を果たすためにこのプロジェクトが重要であると説明した。
経済産業省の土屋氏は、ブリヂストンがタイヤをはじめとするさまざまなゴム製品の安定供給を通じて国民生活と経済を支えていることへの感謝の意を述べるとともに、NEDOが行なうグリーンイノベーション基金事業にブリヂストンがいち早く参画し、持続可能性と競争力強化の両立という難しい課題に挑戦していることを高く評価。「この関工場においてはリトレッドであり樹脂の水平リサイクルという先進的な取り組みを実績を持って進められているところでございまして、まさにこの地においてこのプラントがさらに加わっていく。ブリヂストンさんにとっても、そして日本国全体においても重要な一歩」とも述べた。
また、関市市長の山下氏は「この度、パイロット実証プラントの建設に際し、本市をご選定いただき心から感謝申し上げます。このパイロット実証プラントで行なわれるタイヤ水平リサイクルの取り組みは、関市が第二期環境基本計画で掲げる『自然と産業と伝統文化の調和した心豊かなまち せき』という環境の将来像と合致するものであり、地域の持続可能な発展および循環型社会の実現に大きく貢献されますことを心より願いますとともに、貴社のさらなるご発展および工事の安全と成功を祈念いたします」とコメントしている。





