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NASCARデモを前に、豊田章男会長が日米モータースポーツ文化交流や関税問題について語る 米国建国250周年となる2026年はNASCARクラス開催も

イベント広場のアメリカパークを視察する豊田章男会長(右)。イベントを企画した日本自動車会議所会長であり、トヨタ自動車会長でもある

 11月16日、スーパー耐久最終戦を開催中の富士スピードウェイに設けられたのがグランドスタンド裏にあたるイベント広場のアメリカパーク。今回のスーパー耐久最終戦では日米のモータースポーツ交流がテーマになっており、このアメリカパークにはトヨタ カムリやタンドラなど、日本で売られていないトヨタ車が展示されていた。

 このNASCARイベントを企画した日本自動車会議所会長であり、トヨタ自動車 代表取締役会長でもある豊田章男氏は、このアメリカパークを視察。視察時に報道陣からの囲み取材を受け、NASCARクラスについてや関税についての考え方を語った。

ジョージ・グラス駐日米国大使(中央)とともにNASCARデモランに参加

──今回、緊急でNASCARとそろってやることになったが長期的な展望は? 日本とアメリカの自動車文化がテーマにあると思うがそのあたりのビジョンは?

豊田章男会長:来年、アメリカは建国250周年。先日大使館に行ったときに、日本とアメリカの産業界のみならず、いろんな文化やスポーツなどの交流を考えている。

 そのときに「モータースポーツもありますよね?」という提案をさせていただいた。それでやっぱり、NASCAR、NASCARがあるよと。来年の24時間レースでNASCARクラスを走らせることについて盛り上がっている。

 でも、急に24時間レースでNASCARクラスと言われても大変。そのトライアルとして今回2か月の準備期間でこれができた。するといろんなことが分かってきた。

 富士スピードウェイを最初に作ったときは、NASCARのために作った。それで30度バンクがあった。本来はオーバルコースを作っていた。NASCARの一番下のクラスであれば日本のモータースポーツ好きのレーシングチームは活動できるかもしれないし、大谷翔平などいろんな選手があちらで活躍しているように、モータースポーツがやれるような兆し、期待がもてるようなものになっていけばいいなと思う。

 この広場、あちらのピットのところのガレージ(NASCARガレージ)も、私の想像以上に人気があった。今日は、音を聞いていただいて感じるものがあると思います。

──NASCARの魅力について、ご覧になってどう感じましたか?

豊田章男会長:モータースポーツのエンタテイメント、モータースポーツのプロレスのようなものではないか? 必ず、いい役とわるい役がいる。一番ダメなのは存在感のないドライバー。

 いいかわるいかで、エンタテイメントになる。だから毎週毎週ああやって(NASCARレースを)実施できる。僕はずいぶん前に、NASCARのクルマに乗ったことがあるが、あのときと比べて、シートの安全性能が格段に上がっている。その分乗りづらいが、とんでもなく安全に対しては進化している気がする。

──日米間では関税は引き下げられたが高い水準になっている。こういった形で自動車文化を交流させる意味合い、高関税下においてやられる意味合い、狙いは?

豊田章男会長:関税がいいとかわるいとかいう話をするのではなく、自国の自動車産業を守りたいというのはどこの国の長も同じ考えだと思います。その中でどうやって守るかという手段の一つが関税であって、関税をかけたことによってみんながウィナーになる手段を我々は模索している。

 一番ウィナーになってほしいのはお客さま。アメリカの政治家も日本の政治家も、それぞれのスポンサーもそれぞれのステークホルダーも、やっぱり自動車産業があってよかったな、と全員が思えるような動きを我々は始めたという風にご理解いただきたい。

 (メディアは)関税のことばかり言うから、関税が話題になっているような感じだが、やはり現場では基幹産業である自動車産業をちゃんと育てていこうとしている。

 これこそが定期的な雇用と持続的な投資を生み出す、国にとっては大変なビークルだと思う。そう思う国のリーダーは当たり前。今はそういう手段をとっているが、誰かだけをウィナーにするのではなく、お客さまをはじめすべての人をウィナーにしたい。そういう動きの一つだとご理解いただきたい。

──イベント広場のアメリカのクルマやガレージ、NASCARのクルマを見て、日本の子供たちが目を輝かせていたり、モータースポーツファンがぐっと集まっていたりする姿を見てどのようにご覧になったか?

豊田章男会長:自分も楽しかった。トヨタイムズで表現してください。そして子供たちを共感させてください。やはりこういうのは頭で理解するものではなく、感じて動くもの。感じて動くから、感動し、共感する。レースは2台だけ(ST-USAクラス)だがパフォーマンスはもうすぐ始まる、ぜひ、走っている姿にご注目いただきたい。

──日米の交流は、単発というより長期的なものを見据えて、続けていくのか?

豊田章男会長:そういう質問をしてくれて本当にありがたい。すぐに回答を求める、何かやったらすぐに正解ということじゃない。

 自動車産業に期待されるのは、過去も現在も未来も、国の支えになる産業である。それを雇用に長期的な投資。そのためには、ある程度の利潤も必要だし、利潤を何に使うかですよね。

 利潤のない世界は持続的じゃないですから。利潤の使い方をしっかりとメディアは監視すればいいのであって、利潤を持っていることをけなしたらこの国は終わりますから。それを何に使うかというのを(メディアは)やってください。