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青山学院大学の体育会自動車部はなぜS耐へ挑むのか? 活動を支えるゼロワン河野初樹氏に聞いた
活動をサポートしているSPKの「シミュレーターラボ」でトレーニング実施
2026年1月23日 08:01
一般大学の自動車部がS耐に挑むのは史上初
1931年に創部し、2026年で創部95年を迎えた「青山学院大学 体育会自動車部(Team AOYAMA GAKUIN AUTOMOBILE CLUB、以下AGAC)」は、本田技研工業「インテグラ TYPE R(DC2)」やスズキ「スイフトスポーツ(ZC33)」などの市販車を使い、主に全日本学生自動車連盟が主催する「全日本学生ダートトライアル選手権大会」「全日本学生ジムカーナ選手権大会」、JAF主催の「全日本ジムカーナ選手権」などに参加している団体。
学生のモータースポーツ活動といえば、設計図からフォーミュラマシンを作り上げ、開発内容から走行タイムまでを総合的に評価する「学生フォーミュラ大会」が有名だが、青山学院大学には別途2009年に創部した「青山学院大学学生フォーミュラチーム(AOYAMA GAKUIN RACING TEAM:AGRC)」があり、その活動の舞台は異なる。
AGACは先述したとおり青山学院大学の“体育会”に属する部で、年初に史上初となる2度目の箱根駅伝3連覇を成し遂げた「青山学院大学 体育会陸上競技部(長距離ブロック)」と同じ青山学院大学“体育会”系の部活動の1つ。
ちなみに体育会の部はほかに、アーチェリー、合気道、アイススケート(フィギュア、ホッケー)、アメリカンフットボール、居合道、空手道、弓道、競技ダンス、剣道、拳法、航空、硬式野球、ゴルフ、サッカー、山岳、射撃、柔道、準硬式野球、少林寺拳法、水泳、スキー、ソフトテニス(男子、女子)、卓球(男子、女子)、チアリーディング、軟式野球、ハイキング、馬術、バスケットボール(男子、女子)、バドミントン(男子、女子)、バレーボール(男子、女子)、パワーリフティング、ハンドボール、フェンシング、ボクシング、ボート、ヨット、ラグビー、ラクロス(男子、女子)、陸上競技、レスリングと、多種多様なスポーツを擁している。
そのAGACは2024年5月に、スーパー耐久シリーズ(以下、S耐)への参戦を目指す新たな活動「スーパー耐久シリーズ参戦プロジェクト」を発表。S耐にはこれまでにも、整備士を養成するNATS(日本自動車大学校)や、日産自動車大学校、新潟国際自動車大学校など、自動車業界の関連学校が参戦しているが、一般の大学が参戦するのは初となる。
この活動の背景には、「モータースポーツは人を育てる」をコンセプトに掲げ、2022年に設立されたZEROONE(ゼロワン)の代表取締役副社長である河野初樹氏が、青山学院大学のOBであったことも大きな要因だという。
学生時代にマツダスピードとともにル・マン24時間レースに参加し、最高峰のモータースポーツを目の当たりにした河野氏は、青学卒業後に日産自動車のモータースポーツを担うNISMOに就職。ワークスチームの中心を担うマネジメント部門、モータースポーツ活動の中心であるNISMOに配属され、「当時のエースドライバー星野一義選手や長谷見昌弘選手、上司にかなり厳しく指導を受けました」と振り返る。
その後、KONDO RACING在籍中にもモータースポーツを活用した人財育成プログラムを立ち上げ(日産メカニックチャレンジの前身)、2022年からは自身が独立して立ち上げたZEROONEとして日産メカニックチャレンジを全面的にサポート。2025年シーズンも「TEAM ZEROONE 日産Z NISMO GT4」としてS耐へ参戦している。
河野氏は20代のころから長年モータースポーツ活動に関わってきたことから、「耐久レースの、みんなでチームを整えて、マシンを整備して、スタートのときには全部ドライバーに託して、安全に帰ってきてもらって、タイヤを交換して、また送り出すといった流れは、誰か1人でも適当なスタッフがいたら成り立たないんですよね。ついついドライバーが花形で目立ちがちですが、モータースポーツはすごいチーム活動なんですよ」。
「若いころからチームスポーツに携わること、仲間と一緒に目標を達成することはとてもいい経験になるし、特に命に関わるモータースポーツでの真剣勝負は、一般的な会社員ではなかなか経験できません。こういった経験は今の自分の人生のベースにもなっているし、誰にとっても貴重で今後の人生に役立つ経験になると思います。そこで普段から頑張って活動しているAGACにも、この経験を得られる場所を用意して、少しでも役に立てればと考えたのがスタートです」。
「今回のAGACの活動が注目され、さらには箱根駅伝で活躍する体育会陸上競技部と同様にしっかりと結果を残せれば、モータースポーツ界全体の発展にも微力ながら貢献できるのではないかと考え、今回プロジェクトを立ち上げました」とプロジェクト発足の経緯を教えてくれた。
もちろん、いきなりS耐には参戦するのではなく、まずは日産「フェアレディZ(Z34)」で「もてぎEnjoy耐久レース」(通称:Joy耐)へ参戦。2024年7月の7時間耐久レースでは、ZEROONE所属レーシングドライバーの荒聖治選手と川端伸太朗選手がステアリングを握り、メカニックとチーム運営を勉強。2025年9月の7時間耐久レースでは、横堀太一さん(4年生)、清水啓伸さん(2年生)、吉岡興太さん(2年生)と、ドライバーもすべて自動車部の学生が務め、予選3位、決勝34位(クラス2位)でフィニッシュした。
河野氏は「S耐のタイヤ交換は速さと正確さが求められますので、まずはJoy耐で感覚などを練習し、メカニックだけでなくドライバーもアスリートとして参加する意識を持ってもらいます。広報などサポートもいますので、全員でチームプレイを学んでほしいです。今やS耐はアマチュアチームだけでなく、トップチームも参戦するカテゴリーになっているので、特に安全面に関してはZEROONEが全面的にバックアップします」と語る。
S耐初参戦となる2026年の目標は、「まずは怪我なく安全に7大会を毎回しっかり終えること。それとこのS耐チャレンジを応援してくれている母校や企業さんに恩返しできるような形になればいいなと思っています。以前、箱根駅伝のゴールシーンを大手町で見たときに鳥肌が立つような感覚を味わったのですが、同じような感動をサーキットでも実現できるのではないかなと考えています。OBOGの方々が気軽に応援できるような環境を慌てずに作っていきたいです」と語った。
活動をサポートしているSPKの「シミュレーターラボ」でトレーニング実施
この日は活動をサポートしているSPKが、大阪の旧本社ビルに開設している「シミュレーターラボ」をチームに開放し、ドライビングスキルを磨く講習会が開かれた。講習会は2日行なわれ、初日は松田次生選手、2日目は荒聖治選手とZEROONE所属レーシングドライバーが講師を務めた。
講習会の時点では、まだドライバーやメカニックなどの配置は確定していないものの、ドライバー勢の中心となるのは、幼いころからカートに乗り、すでにレーシングドライバーとしてS耐やSUPER GTに参戦している2年生の清水啓伸さん。Joy耐でもエースドライバーを務めている。2023年~2024年とFIA-F4選手権に参戦していたこともあり、最初は市販車ベースのS耐マシンがフォーミュラカーよりも動きが鈍く感じたが、何度か乗るうちにアジャストできたとのこと。
講習会は初級と中級に分かれ、初級者は開幕戦のモビリティリゾートもてぎに少しでも慣れるため、レーシングドライバーによる指導を受け、中級者は富士スピードウェイや鈴鹿サーキットなどを走り込んでいた。
また、長年NISMOで日産のレース車両のトップエンジニアを務めていた吉田昌信氏もオンラインで参加し、レースに関する質疑応答を実施。レースに参加する心構えや複数人で乗る耐久レースのマシンセットアップ方法など、内容の濃い質問が飛び交った。
講習会の最後には、シミュレーターラボに隣接する「モータースポーツショールーム」で、SPKの菅原氏によるレーシングギアの説明会を実施。四輪用ヘルメットと二輪用ヘルメットの違いや、四輪用とカート用のレーシングギアの違い、アンダーウェアを着る意味、脊椎を守るハンスの必要性や最新の着用型ハンスなど、モータースポーツギア全般の解説が行なわれた。
なお、2026年のS耐シリーズは、3月1日にモビリティリゾートもてぎで公式テストが行なわれ、開幕戦は同じくモビリティリゾートもてぎで3月21日~22日に開催され、決勝は土曜日と日曜日にそれぞれ4時間の耐久レースが行なわれる。
青山学院大学体育会自動車部主将の河野雅也さんは、「まだ誰がどの役割につくかも定まっておらず、ちょっと焦りもありますが、練習会を何度か重ねてドライバーを決めて、メカニックやサポート役なども割り振っていきます。初めてのことだらけで大変ですが、安全に進めていきたいです」と意気込みを話した。
スーパー耐久シリーズ2026 開催スケジュール
| Round | 開催サーキット | 日程 | レースフォーマット |
|---|---|---|---|
| TEST.1 | モビリティリゾートもてぎ | 3月1日 | 公式テスト |
| Rd.1 | モビリティリゾートもてぎ | 3月21日~22日 | 4時間×2レース(土・日決勝) |
| Rd.2 | 鈴鹿サーキット | 4月18日~19日 | 5時間×1レース(日曜決勝) |
| TEST.2 | 富士スピードウェイ | 5月14日 | 公式テスト |
| Rd.3 | 富士スピードウェイ | 6月5日~7日 | 24時間×1レース(土~日決勝) |
| Rd.4 | スポーツランドSUGO | 7月4日~5日 | 4時間×2レース(土・日決勝) |
| Rd.5 | オートポリス | 7月25日~26日 | 5時間×1レース(日曜決勝) |
| Rd.6 | 岡山国際サーキット | 10月24日~25日 | 3時間×2レース(日曜決勝) |
| Rd.7 | 富士スピードウェイ | 11月14日~15日 | 4時間×1レース(日曜決勝) |
















