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5速MT×ターボ仕様「ミライース」でダイハツ井上雅宏社長がK4GP初参戦「楽しい!この文化をもっと広めたい」と大絶賛
東京オートサロン2026に出展された市販予定のコンプリートカーが実走
2026年2月23日 10:58
- 2026年2月21日~22日 開催
D-SPORT Racingは2月21日~22日、富士スピードウェイで開催された軽自動車の耐久レース「K4GP」に参戦。東京オートサロン2026に出展して大注目を集めた「ミライース tuned by D-SPORT Racing」を2台投入していた。
ミライース tuned by D-SPORT Racingは、ダイハツと一緒に「D-SPORT Racing Team」を共同で運営しているSPKが市販を予定しているコンプリートカーで、「5速MT&ターボエンジン」仕様にしつつ、安心安全にモータースポーツを楽しめるベース車両にするため、「6点式ロールケージ」や「専用ECU(コンピュータ)」「フロントスーパーLSD」などを標準装備している車両。
富士スピードウェイに持ち込まれている車両は、オートサロンに展示していた車両そのもので、D-SPORTカラーに仕上げられた915号車と無地の916号車の2台は、“モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり”のため、21日の4時間耐久レース、さらに22日の7時間耐久に参戦したという。
カラーリングのない無地の916号車は、クルマの挙動を感じやすくするのと安全に楽しく走るためバケットシートと4点シートベルトのみ装備しているが、そのほかは市販予定の仕様そのままで、ホイールは鉄チン、タイヤもダンロップのエコタイヤ「エナセーブ EC300+(サイズ155/65R14)」のまま。
開発に携わるD-SPORT Racing Teamのドライバーで、WRCラリージャパンでも2年連続クラス優勝を達成した実績を持つ相原氏によると、「ミライース tuned by D-SPORT Racingは、モータースポーツ参戦のベース車両という位置づけで開発しているので、ユーザーが参戦するカテゴリーや種目によって使用するタイヤは変わりますので、交換前提としてスチールホイールとエコタイヤを履かせています。もちろん初期コストも押さえられます。ただ、もしかしたらこのままサーキットを走る人もいるかもしれないので、この仕様でどんな挙動が出るかを確認する目的で走りました」とのこと。スピードを争うモータースポーツ競技に、わざわざエコタイヤで挑むユーザーもなかなかいないと思われるが、「メーカーとしてしっかり確認しておく必要がありますから」と相原氏。
一方の東京オートサロン2026に「ミライース tuned by D-SPORT Racing 10時間耐久レース参戦車」として出展されていた915号車は、ベース車両をさらにモータースポーツを楽しめる仕様へと高めるためのチューニングパーツ開発車両として参戦。サスペンションは減衰力を若干高めた純正形状のショックアブソーバーとスプリングに交換され、タイヤは横浜ゴムの「アドバンネオバAD09」でサイズも165/55R15と大きくワイドになっている。パワーも全日本ラリー選手権に参戦している「ミライース モータースポーツ参戦車」と同様にブーストを高めていて、約80PSを発生する仕様。もちろん安心安全のために運転席と助手席はバケットシート&4点シートベルトを装備している。
915号車のステアリングを握った井上雅宏社長にお話をうかがった
今回のK4GPでは、ダイハツ工業の井上雅宏社長も915号車に搭乗することが当日明かされ、その経緯を井上社長に直接うかがうことができた。
──今回なぜK4GPに参戦したのでしょうか?
井上社長:ダイハツにはDGR(DAIHATSU GAZOO Racing)があって、コペンやミライースで走っているのは知っていましたが、なかなか参加する機会がなかったんです。また、2025年のジャパンモビリティショーで「K-OPENランニングプロト」を、東京オートサロン2026で「ミライース tuned by D-SPORT Racing」を出展したところ、本当に多くの方から反響をいただきました。
いつ発売するんですか? どんなクルマになるんですか? と聞かれた際、まだ乗ったことがないのでコメントできなかった。こんな状態ではいけないと思い、ミライース tuned by D-SPORT Racingはすでにナンバーを取得していたので一般道を走ってみたところ、すごく乗りやすくて「せっかくならもうちょっとスピードを上げて走ってみたい!」と思い、K4GPに参戦することにしました。
──ミライース tuned by D-SPORT Racingに乗ってみた印象は?
井上社長:コースでは最高速135km/hとリミッターを超えるスピードを出せましたし、減速してシフトチェンジしてコーナーをキュッと曲がる。コーナーを抜けたらアクセルを踏んだらギューンと走り抜けていく感覚はもう普通にスポーツカーだなと思いましたね。
今日は序盤にセーフティカーや赤旗が多発したため燃料に余裕がありましたので、本来なら後半セクションの登りは燃費を考慮してあまりアクセルを踏まない予定でしたが、3速にシフトダウンしてガーッと登りました。ストレートもアクセルを抜く滑空はせずにストレートエンドまでしっかりアクセルを踏んで、そこからフルブレーキして曲がると、「あ~、楽しい!」って感じながら走っていました。軽のターボでこれだけ走れるんだったら十分楽しめると実感できました。
──K4GPに参戦してみていかがでしたか?
井上社長:実は過去にアルゼンチンで仕事をしていた時にサーキットでスポーツ走行を何度かした経験はあるのですが、今回のように主催者がいるきちんとしたレースに参加するのは初めてです。
富士スピードウェイを走るのは初めてなので、事前にシミュレータを使って練習したり、プロドライバーにポイントを教えてもらいましたが、21日の4時間耐久レースではまったく生かせませんでした。でも、一緒に走っていた人たちも初心者講座を受けた人が多かったので、安心して走れました。
今日(22日)は昨日よりコース上の台数が3倍になると聞いていたので、どうなることかと思いましたが、事前にD-SPORTレーシングチームの殿村監督から、車両の左右を空けておけば上級者は勝手に抜いていくので大丈夫です。後ろを気にし過ぎて変な動きをすると逆に危ない。コーナーでは無理をしないなどとアドバイスをもらい、その通りに走ったらスムーズに走れました。
──またK4GPに参戦しますか?
井上社長:そうですね。モータースポーツに初めて参加した人の感想って、「怖くて嫌だ」と思うか、「気持ちよかった」と思うかのどちらかだと思うんですが、今日は本当に気持ちよかったので、また走りたいですね。8月にも10時間耐久レースがあるそうだし、それまでに弊社主催のダイチャレ(D-SPORT&DAIHATSU Challenge Cup)もあるようなので、基礎知識とか技術を磨いてちゃんと走りたいと思っています。
あとミライースのあとにコペンでも走ったのですが、低重心の後輪駆動もすごい楽しかった。スポーツカーの乗り比べなんて、大きなクルマでは難しいですが、コペンとミライースなら改造費用を入れても、排気量の大きなスポーツカー1台より安く済むかもしれませんからね。
トヨタの豊田章男会長も昔から「自動車をコモディティ(一般化・同質化された商品)にしてはいけない」とおっしゃっているので、本当にファンtoドライブの買ってから楽しめるクルマは必要だと体感しました。中高年になってからでも楽しいし、改造するのも楽しい、タイヤとか仕様を変えながら試行錯誤するのも楽しい。コモディティなクルマと両輪でやっていかないといけませんね。
──今後の展望についてはいかがでしょうか?
井上社長:モータースポーツのすそ野を広げる活動は、自動車メーカーももっと積極的に参画していく必要があると思いました。もちろん、うち(ダイハツ)だけでなく、スズキさん、ホンダさん、日産さん、三菱さんと、現在スーパー耐久でやっている“共挑”のように、みんなで一緒に盛り上げる活動が実現できたらいいですね。また、今は富士スピードウェイのみの開催とのことなので、全国のサーキットで小規模な耐久レースを開催して、その頂点となる大会を富士スピードウェイで実施するような枠組みがあっても盛り上がるかもしれません。もっともっとこの楽しい文化を広めていきたいです。
実走で見えてきたミライース tuned by D-SPORT Racingの課題は?
今回915号車は相原選手と井上社長のほかに、2025年はスーパー耐久シリーズやニュルブルクリンク24時間耐久レース、TGR GR86/BRZ Cup、ラリーチャレンジなど幅広いカテゴリーに参戦している佐々木雅弘選手、ダイハツ社員の小池氏、向井氏の5人が搭乗。916号車はSPKの岩淵氏、岩崎氏と、ダイハツ社員の松田氏、岩村氏と殿村監督の5人がステアリングを握った。
相原氏によると、「運転が上手な人はヨー(慣性モーメント)でクルマを曲げていきますが、初心者はステアリングで曲げようとしがちです。でも、実際にクルマを買って走る場合ドライビングスキルは十人十色ですから、いろんな技量の人に走ってもらい、ヒアリングすることが重要だと考えています。今回はダイハツ社員ドライバーとラリードライバーの自分だけでなく、サーキットを中心に走っている佐々木選手にも加わってもらいましたが、915号車のサスペンションについては、今の減衰設定とバネでは柔らかすぎるためロール量が大きくドライバーに不安を与える可能性があると同じ感想を持ちました」と課題が見えたと説明。
続けて、「ブーストアップで約80PSを出していますが、ラリーに参戦しているミライース モータースポーツ参戦車はダクトを設けて冷却効率を高めているので問題ないのですが、ミライース tuned by D-SPORT Racingをパワーアップするなら、何か対策が必要だと分かりました。ただ、市販するのであれば安全規定などもクリアする必要があるし、コスト面もありますから、ラリー車のようにワンオフでパーツを作る訳にはいきませんからね」と、市販前提の開発はモータースポーツの開発現場とは異なる壁があると教えてくれた。































