ニュース
フォーミュラE、ブリヂストンタイヤを履く次世代マシン「GEN4」がポール・リカールで実走行開始
2026年4月21日 23:00
- 2026年4月21日 発表
GEN4マシンは最高速320km/h以上、0-100km/h加速はF1より30%速く、世界で2番目に速いシングルシーター
電動フォーミュラのレースシリーズである「FIA Formula E 世界選手権」(以下、フォーミュラE)は、2025年に「GEN4(ジェネレーション4)」と呼ばれる第4世代の電動化フォーミュラマシンの技術概要を発表し、来シーズン(2026/2027年シーズン)からレース車両として導入する計画だ。
4月21日からフランスのポール・リカール・サーキットで、チームが導入した実車によるテストが行なわれるが、それに先だってフォーミュラEは記者向けの説明会を開催。プロモーターのフォーミュラE CEOであるジェフ・ドッズ氏、FIAからフォーミュラE担当のパブロ・マルティノ氏が参加し、GEN4車両の開発状況などに関しての説明を行なった。
ジェフ・ドッズ氏:フォーミュラEの歴史にとって、今回GEN4の車両を発表できることは非常にワクワクする瞬間だ。このことは、電動化時代のレースカテゴリーであるフォーミュラEにとって1つの成熟期を迎えたような節目だと感じている。
こうした節目を迎えられたことに、フォーミュラEに参戦している自動車メーカー、チームなどにお礼を言いたい。今回紹介するGEN4のマシンを発表できたのは、過去4年間にわたって彼らが取り組んできたことの成果だ。本当に「みんなで作り上げた」プロジェクトであり、今週にポール・リカール・サーキットでこのマシンを世界に向けて「解き放つ」ことを皆で誇りに思っている。
GEN4のマシンの話をする前に、少しだけ選手権の歴史を振り返りたい。フォーミュラEはまだ非常に若い選手権で、今年が12年目に過ぎない。創設時に掲げた原則はいずれもF1に匹敵するような存在になりたいという野心を持ち「素晴らしいレースシリーズを作ること」「市販車の電動化へのエネルギー転換を加速させること」「スポーツイベントをよりサステナブルな形で開催できることを示すこと」の3つをポリシーとして設定して発展させてきた。
GEN4時代に入るにあたり、世界初かつ唯一の「Bコープ」認証を受けたスポーツシリーズにでき、これは選手権にとって非常に大きなできごとだ。マシンは100%リサイクル可能であり、材料の20%にリサイクル素材を利用している。持続可能な社会の実現という観点では、世界全体はまだそこまで進んでいないかもしれないが、この12年間でフォーミュラEは驚くほど大きく前進してきた。
電動化の観点では、12年前を振り返ると当時世界で販売されたEVは年間30万台ほどだったと記憶している。それが2026年は2000万台規模に達すると見込まれている。そして2030年には、ほぼ倍増して4000万台に達すると予測されている状況だ。そうした世界的な電動化シフトの「急激に伸びるカーブ」の真っただ中で、私たちは今GEN4のローンチを迎えようとしている。
今週行なわれる発表会では、その主役は「マシン」だ。12年前に初代マシンを発表したとき、レースペースが時速約140マイル(約225km/h)、0–100km/h加速は約3秒、出力は200kW(272PS)程度。かつ、当時は1レースを走り切るだけのバッテリ容量がなかったため、レース中にマシンを乗り換える必要があった。
今回紹介するGEN4は、レースペースが時速200マイル(約320km/h)を超え、0–100km/h加速は約1.8〜1.85秒 と、現在のF1マシンより約30%速い数値だ。また、現在われわれがレースを行なっているサーキットで比較すると、現行マシンより1周あたり10〜12秒も速く走れる。今回の性能向上は、現行の「GEN3 EVO」から見ても、信じられないほど大きな「ジャンプ」だ。もちろんこれは偶然起きたことではなく、クルマそのものを根本から作り替えた結果となる。
GEN4では、レース時の定格出力がGEN3 EVOの300kW(407PS)から450kW(612PS)へと引き上げられ、定格出力だけで現行車比50%増だ。一方で、現行のGEN3 EVOは、予選やアタックモード時の最大出力が350kW(475PS)だが、GEN4マシンは最大出力が600kW(816PS)に達する。これはアタック時や予選時の出力が約70%以上増加するという非常に大きな進化になる。当然そのパワーをレース中に有効に使うためには、エネルギー量も増やす必要がある。そこでレース中に使用可能な総エネルギー量も、GEN3 EVO時代と比べて43%増加している。同時にブレーキの回生に関しても、最大700kWの回生が可能になった。
さらに、常時四輪駆動(パーマネントAWD)の仕組みを採用している。現行では予選やスタートなど限られた状況でのみ四輪駆動を使えるが、GEN4ではレースを通じて常に四駆が使えるようになっており、同時に初めてパワーステアリングを導入した。これにより、ドライバーの裾野を大きく広げられる。ご存じの通り、われわれはより多くの女性ドライバーにこのカテゴリーに参戦してほしいと考えている。また、今回初めてエアロの構成として「ロー・ダウンフォース」と「ハイ・ダウンフォース」の2種類を用意した。
今回発表するGEN4の車両は、表面だけでなく中身まで見ていただくと、フォーミュラEというシリーズが目標としているところを体現するために「再発明」したような存在だと分かっていただけると思う。今週フランスのポール・リカールで、初めてGEN4マシンの「本物」が全開走行する姿をお見せする予定だ。このマシンは、これまでよりもはるかに力強くて大きく、そして、言ってみれば 「より威圧感のある」見た目になっている。つまり、新しく美しいデザインを持ちながら、まったく新しいレベルのパフォーマンスを発揮でき、その裏には、電動化時代の最新技術が詰め込まれている。私はこの新しい時代に非常に大きな期待を抱いている。
ブリヂストンなどのパートナーと協力して6000km以上のテスト走行を実施
パブロ・マルティノ氏:ジェフが説明したように、今フォーミュラEはエキサイティングで、ターニングポイントとなるときを迎えている。私たちは今、選手権の歴史の中でも大きな節目となるマシンの進化に、全面的に取り組んでいる。FIAとしても、メーカー各社、フォーミュラEとともに、この新しいマシンの開発という旅路を歩んできており、本当に嬉しく、そしてワクワクしている。
ジェフが言及したように、このマシンの開発には2年以上という長い時間がかかっており、その中にはアジア太平洋地域のパートナーも含まれている。例えば、日本のブリヂストンが新たなタイヤサプライヤーとして選手権に参入する。彼らはGEN4が当初フォーミュラEと一緒に設定した性能目標を達成するうえで、重要なパフォーマンスパートナーとなる。これまでFIAが主体となって行なってきたテストと開発走行で、すでに6000km以上を走行している。メーカーにこのプラットフォームを引きわたす前に、それだけの距離を走り込んでいるのだ。
ここから年末までの期間は、メーカー側の出番になる。FIAと単一サプライヤーが作り上げたこの共通プラットフォームに対し、メーカー各社が独自のパワートレーンを組み合わせ、自社開発を続け、さらにパフォーマンスを引き出していく段階に入る。ジェフが紹介したマシンのスペックは、プロジェクト開始当初は「紙の上の数字」に過ぎなかったが、それを開発の中で現実に落とし込んできており、われわれはそれに自信を持っている。ここからは各メーカーがさらに開発を進めて、われわれの期待を上まわる性能を引き出してくれるだろうと確信している。
今回の進化は、何か1つの要素だけが変わったという話ではなく、複数の要素がパッケージとして総合的に変わったのがポイント。ブリヂストンのようなパートナー企業の支えにより、レーシングタイヤとしてのコンパウンドや構造を一新し、従来のタイヤに比べてグリップが約10%向上している。また、ロー・ダウンフォース・ハイ・ダウンフォース のエアロパッケージにより、特にコーナリングスピードのパフォーマンスは大きく向上している。
全てを合わせた結果としてフォーミュラEは 「世界で2番目に速いシングルシーター」になると考えている。これはフォーミュラEの次のチャプターに対して、私たちが非常に興奮している理由なのだ。なぜなら、私たちは「電動レーシング」を単なる電気モータースポーツの頂点にとどまらず、モータースポーツ全体の頂点レベルにまで引き上げることになるからだ。
同時にフォーミュラEが持つ独自の資産を忘れてはいけない。フォーミュラEのレースではエネルギー効率、限られたエネルギーをどう使い切ってチェッカーフラッグを受けられるかといった要素は、今後もフォーミュラEの非常に重要なポイントであり続ける。私たちはこれまで導入してきた仕組み、例えば、アタックモードや、レース中に600kWで急速充電を行なうピットブースト(エクストラチャージ)などを、これからもフォーミュラEのDNAとして活かしていく。
ジェフ・ドッズ氏:パブロの話に1つ付け加えるとすると、フォーミュラEはレースの組み立て方も重視している。マシンがどれだけ優れていても、どんな環境で走らせるのかによってもレースのよしあしは決まってくる。つまり、どこでレースを行なうのか、世界のどの都市やサーキットでレースを行なうかは、今後もこだわっていく必要がある。
また、フォーミュラEはこれまでもそうだったように、1レースあたり200回以上のオーバテイクが起きるようなエキサイティングな展開を維持していく。これもわれわれのDNAの1つだ。
パブロ・マルティノ氏:もう1つ重要なことは、フォーミュラEとFIAが重要視している「市販車との関連性」を維持すること。四輪駆動は電動モビリティにおいて非常に一般的で、かつ重要な要素。そのためGEN4では、レース中ずっと有効な常時四輪駆動を導入した。これはレース全体を通じて常時4WDを用いる世界初かつ唯一のシングルシーターになる。
前輪用モーターと後輪用モーターを併用できる電動技術のおかげで、これはフォーミュラEが業界とのつながりを強化するうえで、ぜひ活かすべきチャンスだと考えたため、こうした仕組みを採用した。
また、私たちはメーカー向けに制御システムの一部をオープンにしており、各社は自社ソフトウェアを開発して、バッテリからどうエネルギーを取り出し、どのようにホイールへ、トラクションへと伝達するかを自由に追求できる。これはメーカーが自社パワートレーンの効率をどこまで高められるかという点で非常に重要になる。この「オープン性」は今後も維持され、それこそがフォーミュラEをバッテリEVメーカーにとって魅力的なプラットフォームにしている要因の1つになっている。これによりレース活動を通じて多くの知見が得られ、それを市販EVの開発にフィードバックできるだろう。
ピットブースト機能をレース中にどのように使っていくかは今後発表予定。設計的には可変も可能
──ピットブーストの詳細について確認したい。出力など多くの要素が上がるがエネルギーマネジメントの観点では、より多くの電力が必要になるのか? また、これによりピットレーンにとどまる時間も長くなるのか?
ジェフ・ドッズ氏:新しいマシンはピットブーストに完全対応する形で設計されている。つまり急速充電の機能をフルに備えた状態で開発している。その能力自体は現行マシンとほぼ同等で、約30秒でバッテリ容量の約10%を充電できる想定だ。
ピットブースト自体は、今シーズンか昨シーズンあたりから本格的に導入されたばかりで、われわれとしてもまだ「技術的に生まれたて」の段階。ダブルヘッダー中心のカレンダーということもあり、どういう使い方が最も有効なのか、今まさに学んでいるところ。ただ、ピットブーストによって、レース距離やレース全体のエネルギーの使い方に柔軟性が生まれるのは間違いない。ファンへのアンケートでも、ピットブーストがあることでレースがよりエキサイティングになるという声を多くいただいている。今日お伝えできるのは、GEN4のレースフォーマットの中でもピットブーストを採用する方針だということ。
ただ、全レースで使うのか、ダブルヘッダーのみか、もっと限定的な使い方をするのかなどの具体的なスポーティングレギュレーションに関してはまだ公表していない。
技術的に見るとGEN4では、「可変ピットブースト」にも対応できる設計になっている。つまり、必ずしも「30秒で10%」に固定する必要はなく、技術的にはかなり自由度があるのだ。この技術に関しては、まだ真っ白なキャンバスのような状態で、これからさまざまな可能性がある。
──チームはすでにピットブーストのテストをしているのか?
ジェフ・ドッズ氏:FIAとサプライヤーによるGEN4プロトタイプのテストですでに6000km以上を走行している。もちろんチームの側でも自分たちのマシンのテストをかなり行なっている。GEN4に向けては、ポルシェ、ジャガー、ステランティス、日産、マヒンドラ、そしてヤマハがサポートしているローラが参戦を決めており、独自のマシンをテストしている。その中でレースシミュレーションも行なっており、ピットブーストに関しても試していると思う。
──先週ジャガー・レーシングがプロトタイプの新しいリバリー(車体のカラーリングのこと)を公開しており、今週にはリアルなマシンがお披露目される。2025年の発表(筆者注:GEN4の技術概要の発表)と比較して、今回新たに共有できる開発内容や変更点はあるか?
ジェフ・ドッズ氏:私もそのリバリーの発表を見た。「テストカー用のクールなリバリー」という感じで格好良いと感じた。本日から実際にそれらがサーキットを走る予定だ。今回はあくまでそうした実車のお披露目というのが主眼で、新しい技術詳細を発表したり、新しいスポーティングレギュレーションを発表したりする予定はない。あくまで、新しいマシンがどれだけのパフォーマンスを発揮できるのか、そうしたことを見ていただく場としたいと考えている。その意味で今回新しい発表は特に予定していない。
GEN4に参戦するメーカーはすでに発表、登録済みだし、各チームがどのメーカーと組むかは(まだ公表されていないが)もう決まっている。今後現シーズンが終わるまでの間に、各チームがGEN4が走る次シーズンのドライバーラインアップを発表することになるだろう。







