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ホンダ、スマホアプリ「My Honda」の「AIカーライフアドバイザー」導入などセールスフォースのAI活用による「新しい顧客体験」を紹介

2026年6月9日 開催
ホンダによるAI活用の実例が紹介

 米国のクラウド型CRM(顧客関係管理)ソリューション企業であるSalesforceの日本法人セールスフォース・ジャパンは6月9日、10日の2日間、Salesforceの製品や業種別の最新ソリューションについて基調講演や採用企業の担当者によるプレゼンテーションなどで紹介する総合ビジネスイベント「Agentforce World Tour Tokyo 2026」を東京都品川区のザ・プリンス パークタワー東京で開催。

 初日の6月9日には、ホンダ車のオンライン販売や中古車販売、デジタルイノベーション事業などを手がけるHSJ(ホンダセールスオペレーションジャパン)とセールスフォース・ジャパンの担当者によるブレイクアウトセッション「ホンダが挑む、AIエージェントと描く『新しい顧客体験』」を実施した。

ブレイクアウトセッションが行なわれた会場の様子

「ホンダが挑む、AIエージェントと描く『新しい顧客体験』」

株式会社ホンダセールスオペレーションジャパン テクノロジー&イノベーションカンパニー LCB企画課 課長 武藤潤氏

 HSJによる活用事例について紹介するこのセッションでは、HSJのテクノロジー&イノベーションカンパニー LCB企画課 課長 武藤潤氏とテクノロジー&イノベーションカンパニー デジタルマーケティング課 課長 森本圭一氏、セールスフォース・ジャパンの製品統括事業本部 プロダクトマネジメント&プロダクトマーケティング本部 シニアプロダクトマーケティングマネージャー 王小芬氏の3人が登壇。主にHSJが推進している本田技研工業の「デジタル個客体験改革」プロジェクトについてのトークを展開した。

 司会としての役割も務めた王氏に紹介され、HSJの2人が登場し、まずは武藤氏がHSJの概要について説明したあと、HSJがSalesforceのAIエージェント「Agentforce」を導入することになった経緯について解説した。

株式会社セールスフォース・ジャパン 製品統括事業本部 プロダクトマネジメント&プロダクトマーケティング本部 シニアプロダクトマーケティングマネージャー 王小芬氏

 外部環境の点では「お客さまの価値観の変化と人口動態」をキーワードとして挙げ、主要な4つのポイントを紹介。1つめは「情報取得行動の変化」で、ユーザーがクルマの情報を集める時間帯が夜間帯に顕著にシフトしていること。2つめは「デジタル利用を前提とした購買行動への変化」で、販売店に足を運ぶ前になんらかの形でオンラインでの情報収集、製品比較を経てから来店するユーザーが非常に増えているという。

 3つめは「検討プロセスの変化」で、誰でも多彩な情報を手に入れられるようになった現代では、自分に合うものを「いかに効率よく知るか」という点も重要になっていると指摘。4つめは「生産年齢人口の減少」で、来客対応の高度化が進む一方、販売店で対応する人材が今後は減少していくことに対応が必要になるとの見方を示した。

 こういった外微環境の変化に対応が求められるホンダの内部環境では、主に3点の課題を抱えてきたと説明。1つめは「接触機会の損失」で、ユーザーとのタッチポイントをしっかりと確保して、検討初期段階にいる顧客の流出を防ぐことは大きな課題だとコメント。2つめは「情報の非対称性」で、ユーザーが何を考え、どこに興味や関心があるかという点を販売店として把握できる環境を作りたいと述べた。

 最後は「営業リソースの制約」となり、中長期的に見て営業スタッフの減少が避けられない環境下において、顧客1人ひとりに合わせた細やかな対応をいかに担保するかという部分もポイントになると考えていると語り、ユーザーの価値観や行動が変わっている現状で、リソース面に構造的な課題が存在していることは明確であり、この課題をいち早くとらえて理解を進め、いかに対策を打っていくかという部分が今回の取り組みの背景になっていると解説した。

HSJがSalesforceのAIエージェント「Agentforce」を導入することになった外部環境(左)と内部環境(右)について

 このような問題に対し、ホンダがこれまで蓄積してきたデータとSalesforceの最新AI技術を掛け合わせることが課題解決のキーになると武藤氏は強調。ホンダが持つ数多くの顧客データと幅広い車両データ、Salesforceが生み出したAIエージェントであるAgentforceを連動させることで顧客1人ひとりを深く、正しく理解して、これを踏まえて顧客に24時間365日対応のシームレスな検討、購入体験を提供したいと狙いについて語った。

 これは単純に販売現場や営業活動の効率化につながるメリットだけでなく、顧客をしっかりと理解して、1人ひとりに対して素晴らしい顧客体験、購買体験を提供していくことが、販売店のスタッフ自身にとっても「売る喜び」という価値を1段上のレベルに引き上げ、これも重要なファクターになっていくとの考えを示した。

ホンダが持つ数多くの顧客データと幅広い車両データ、Salesforceが生み出したAIエージェントであるAgentforceを連動させ、顧客に24時間365日対応のシームレスな検討、購入体験を提供する

スマホアプリ「My Honda」に「AIカーライフアドバイザー」追加

株式会社ホンダセールスオペレーションジャパン テクノロジー&イノベーションカンパニー デジタルマーケティング課 課長 森本圭一氏

 具体的な施策の内容については森本氏が解説を担当。ホンダが日本市場で提供している顧客体験では、現在はスマートフォンアプリ「My Honda」が中心となっており、アプリ上で趣味のコンテンツから購入検討や購入サポート、保有車両の状態確認まで、カーライフに関連するあらゆるサービスを提供している。

 CRMアプリであるMy Hondaでは、セルフ見積もりやセルフ査定といったサービスのほか、ユーザーが保有している愛車の走行距離やメンテナンス履歴、デジタル契約書の確認、中古車の車両紹介を確認できる動画の視聴などのコンテンツを提供してきた。ここにAIエージェントのAgentforceを導入することで、新たに「AIカーライフアドバイザー」が追加されるという。

 AIカーライフアドバイザーでは、クルマについての疑問や知りたい情報といった問い合わせにAIエージェントが24時間365日対応。また、最適なクルマの乗り替えタイミングの提案や故障診断といったトラブル対応などもAIエージェントがサポートしていく。さらにMy Hondaに登録している趣味や興味のあるコンテンツについてもプッシュ型で情報提供を行ない、ユーザーに寄り添ったサービス提供でカーライフをさらに充実させることに力を入れていきたいと言及した。

ホンダが提供しているスマートフォンアプリ「My Honda」に「AIカーライフアドバイザー」が追加

 また、ホンダではMy Honda以外にもSalesforceのAI技術が導入されており、AgentforceはMy HondaでのAIカーライフアドバイザーに加え、販売店のスタッフが車両販売に集中できる環境を提供することにも役立てられているという。

 新型車の認知から購入、クルマの保有から乗り替えといった一連の流れでは、最初のタッチポイントとなるMy Honda上のAIカーライフアドバイザーが新型車の紹介や顧客の質問に対する回答、販売店に足を運ぶ際のスケジュール調整などを行ない、AIカーライフアドバイザーが提案した内容は販売店スタッフも共有。商談がスタートした段階から顧客のニーズに合わせた提案が可能になり、限られた時間で密度の濃い商談を実現。シームレスな情報伝達が今回のポイントになっていると解説した。

SalesforceのAI技術が導入することで、販売店のスタッフも顧客に対する新型車の提案などをAIカーライフアドバイザーに委ね、来店者のニーズに合わせた提案などに集中できるようになる

 運用開始後に高い効果を挙げると期待されていることに加え、Agentforceの導入はプロジェクトの立ち上げからわずか3か月ほどでPoC(概念実証)がスタートして、短期間で全国展開に至っていることも大きなポイントだと森本氏はアピール。

 短い期間でPOC立ち上げを実現したポイントは2つあると説明し、1つにはAgentforceを活用したことを挙げた。一般的にAIエージェントを自社開発する場合、モデルの管理や更新といった運用負荷が非常に高く、インフラ設計や構築の段階で数か月ほどかかってしまうが、今回はすでに確立されているAgentforceを採用したことで、インフラ設計・構築の時間が不要となり、HSJは提供する顧客価値を設計する部分に全力を注ぐことができた。また、立ち上げ後の非常に早い進化に対しても、Agentforceはクラウド上で管理されるSaaS製品なので追従していけると述べ、アーキテクチャー選定や設計の時間も短縮できたとしている。

 2つめは、スピーディな実装に向けてHSJとSalesforceで役割分担を行なったことも重要だったと解説。HSJでは顧客ニーズの調査やビジネス企画という部分に集中して、Salesforceはそれに伴走するような形で技術開発や実装などを進めていった。このように役割分担を明確化することで、最初の1か月でHSJが課題定義や企画をしっかりとまとめ、それに伴走する形で設計やデータ連携といった開発が進められて、3か月という短期間でPOC開始に至るスピード感が実現できたという。

すでに確立されているAgentforceを採用し、HSJとSalesforceで役割分担を行なったことで3か月という短期間でPOC開始に至るスピード感が実現できた

 AIエージェントを運用するシステムアーキテクチャーでは、スマホアプリMy Hondaのトップページに置かれている「メッセージ詳細」「試乗予約」「セルフ見積もり」「セルフ査定」といった項目と並んで「AIカーライフアドバイザー」を新設したが、このバックグラウンドでAgentforceが活動して各項目の利用者をサポートしている。

 データベースとしてはWebでの会話ログや顧客情報、ディーラー情報、キャンペーン、口コミ情報などを集約した上でデータとして加工や分析を行なったCDP(カスタマーデータプラットフォーム)が中心に存在。そのデータをAgentforceと連携させ、さらにそのなかで車両のマスターや各種ナレッジの情報と組み合わせることで、AIカーライフアドバイザーとして機能する構成になっている。

 さらにAIカーライフアドバイザーは販売店の基幹システム、営業支援システムとも連携。AIカーライフアドバイザーとの会話から販売店での作業予約を行なったり、AIカーライフアドバイザーが把握した顧客の興味や関心について販売店スタッフを即時共有して、効率的な商談を実現するといった営業活動にもつなげていくという。

システムアーキテクチャーの構成イメージ

 また、今後の展開については3段階のステップに分けたロードマップを紹介。全国展開をスタートした現状は「ステップ1」となり、AIカーライフアドバイザーによる「24時間365日対応」「試乗予約誘引」をMy Hondaで行なうほか、販売店向けにも「会話内容連携」「商談サポート」などでAI技術を提供している。

「ステップ2」では新型車が登場したときの「新旧世代比較」、チャット内容を参照したスムーズな「試乗、入庫予約」を実現し、販売店のスタッフ向けにはAIチャットによる商談サポートをより強化していく計画。

 最終的な「ステップ3」ではMy Hondaの音声対応を行ない、クルマの故障時に、遠隔地でもAIカーライフアドバイザーのサポートを受けられるようにする。また、プライベートな予定に合わせたプロアクティブな提案の強化という点も見据え、矢継ぎ早に機能強化を図っていくと紹介した。

今後は3段階のステップに分けて機能強化を進めていく
My Hondaの将来的な進化については、株式会社セールスフォース・ジャパン ソリューション統括本部 自動車ソリューション部 アカウントソリューションエンジニアの真鍋大道氏から、ユーザー目線、販売店スタッフ目線それぞれで実現される将来像をデモンストレーションで紹介した

 すでに運用がスタートしているAIカーライフアドバイザーと営業支援AIの2種類については、どちらもポジティブな反響を得ていると紹介。AIカーライフアドバイザーに寄せられているユーザーの声では、「カーライフの相談や質問を気軽にできるようになった」という反響がとくに狙いどおりだとアピールした。

 また、営業支援AIに対する販売店スタッフのリアクションも同様で、「お客さまの興味、関心を事前にしっかりキャッチできてありがたい」という反応が出ているほか、一部ではAIエージェントの活用で成約に至ったというケースも報告されているという。販売店のスタッフからは「より多彩なデータを掛け合わせることで、もっと可能性が広がるのではないか」という非常に前向きな声もあり、HSJとしてもいち早く対応していかなければならないと意欲を示した。

AIエージェントを利用したユーザーと販売店スタッフの声

 最後に王氏からプレゼンテーションのまとめとして、会場に足を運んだAIエージェント導入に興味を持つ参加者に向けたコメントを両氏に問い、武藤氏は「前段で申し上げたとおり、外部環境、内部環境を踏まえて課題解決に向けたソリューションとして、AIエージェントは非常に有望であるという仮説を持って今まで進めてまいりました。初期反応というところを踏まえると、その仮説は確信に変わりつつあるというところです。ただ、われわれもまだ完璧ではないと思っておりますので、今から取り組み、そして継続的に取り組み、さらにスピード感を持って機能改善を果たしていくことで、リアルとデジタルの融合による購買体験の価値レベルアップというところを目指していきたいと思っています」とコメント。

 森本氏は「今後の技術トレンドを踏まえると、やはりAIエージェントというものは、今は『あると便利』みたいなところですが、今後は『ないと困る』という必須のインフラになるんじゃないかと考えています。われわれもAIエージェントの取り組みを進めており、ここをさらに強く、より強く推進していきたいと思っています。それによってお客さまへの価値提供のスピードを落とさず、さらに加速させていくというところで、お客さまに喜んでいただけるようどんどんスピードを上げて、価値を提供していきたいと思っています」と意気込みを語っていた。

会場の入口ではSalesforceの公式マスコット「アストロ(Astro)」が来場者を出迎えた