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トヨタ中嶋裕樹副社長、富士24時間で語ったル・マン24時間勝利への思い
2026年6月13日 14:46
6月13日16時(現地時間、日本時間13日23時)から第94回ル・マン24時間の決勝レースが始まる。トヨタ自動車は、このル・マン24時間レースを2018年から5連覇。しかしながら、2023年からはフェラーリ勢に3連覇されており、2026年のル・マン24時間はトヨタレーシングと組織を変更。トヨタ中嶋裕樹副社長をリーダーに必勝を期してのぞむ。
その組織変更は、東京オートサロン2026でトヨタ自動車 代表取締役会長 豊田章男氏と対決という形で発表され、中嶋裕樹副社長は「モリゾウの力を借りずにトヨタのエンジニアだけで必ずル・マン24時間で優勝し、トロフィーをここに叩き付ける」と語っていた。
ル・マン24時間レースの1週間前には富士24時間レースが行なわれており、中嶋裕樹副社長はそこで報道陣からの質問を受け付けたので、ル・マン24時間レースにかける思いについて聞いてみた。
──東京オートサロン2026において、「喧嘩三番勝負」の2番目として紹介された「社内抗争勃発」の際に、ル・マン24時間での勝利を語っていた。ル・マン24時間勝利へ向けての思いを教えてほしい。
中嶋裕樹副社長:ル・マンですけど、自信があるかないかと言われたら、レースですので万全を期してやっているつもりでも、そうはいかないことはありますし、昨年はちょっと残念ながらタイヤが外れたりとか、悔しい思いもしました。
ですけど、今回「トヨタレーシング」という名前に変えさせていただいて、それこそ、ちょっとこれどこまで言っていいのか、どうせ言っちゃうんですけど。
正直ですね、モリゾウさんっていう人に対して、こう……、何て言うかな。GRって当時言ってましたけど、「俺たちは元々F1をやっていたんだと」いうもの凄く思いがある連中なのに、なんとなくGRという中で自分を少し押し殺したり、なかなか本音で語れない、っていうのがあったんですね。
で、トヨタレーシングという名前に変えさせていただいて、GRはしっかりといいクルマを、「モータースポーツを起点としたいいクルマ」を作って、それを市販してますよね、彼ら。だからB to Cだと思うんです。
トヨタレーシング、かつウェック(WEC)、世界耐久選手権はハイパーカーでやらしてもらっていますので。これ、直接お客さまに売るクルマではなくて技術を磨いて、それでレースに勝って技術を高めると。どちらかというと、B to ──あえて言えばB。
そういう違いがあるのに、何かゴールが一緒で「もっといいクルマづくり」という前に、「もっといいエンジン」「もっといいシャシーをつくる」んだっていうその思いでやればいいのに。なんとなくそこを迎合してしまった。という部分を、多分モリゾウのセンサーが気づいたと思うんですね。
僕としても、先ほど申し上げたように、技術屋がもっともっといいもんを開発すると、そこに集中できる環境を作りたいということで。たまたまそういう相談を(豊田章男会長に)したときに、「じゃあモリゾウの力を借りずにやってみたらどうだ」と。「ル・マンだってモリゾウの力なしで勝ってみろ」と。で、本当にケンカを売られた。「だったらやってやるよ!」と、そんな言い方してませんよ(笑)。ちょっと、若干、誇張はありましたが、そういうやり取りは正直ありました。
ル・マンに対して、当然これは分かりません(勝負の結果がということ)。確か1月のオートサロンのときに、「もし勝ったらどう言われるんですか?」ってモリゾウさんに質問があって、モリゾウが答えたのは「おめでとう」のひと言です。これは正直、ちょっと僕、目頭が熱くなりましたね。
やっぱり、応援してくれているんだ。モータースポーツの裾野を広げて、いろんな方々にいろんなレースを見ていただいて。我々としては技術を鍛えて、もっといいクルマができれば、結果としてお客さまに恩返しできるので。裾野を広げたいんだという理解ですので、勝つか負けるかというよりも、いい勝負をしていい技術が鍛えられて、その結果、いい製品をクルマに入れることができれば、それが勝ちかな、という。本当に株主総会な答えが(笑)。
ル・マン24時間レースは賞金の出ない自動車メーカーの名誉をかけた争い
世界三大レースの1つと言われるル・マン24時間レースだが、優勝したチームに賞金が出ないレースであることでも知られている。ほかの三大レース、つまりF1モナコグランプリ、インディ500マイルレースはもちろん賞金が出る。特にインディ500マイルの賞金は、1ラップトップを走るといくらなど細かく決まっており、優勝者には自分が選択したミルクと数億の賞金が用意されているなど、資本主義国のアメリカを象徴するレースとなっている。
しかしながら、ル・マン24時間レースは賞金が出ず、各自動車メーカーは「ル・マン24時間勝利」という名誉をかけて争っている。このル・マン24時間レースに最も勝利しているのがポルシェの19勝。ポルシェはこのル・マン24時間レースで勝利することによって耐久王のイメージが定着。ポルシェは優れたクルマを作るメーカーというブランドイメージを築き上げた。
2番目がアウディの13勝。アウディが活躍したのはポルシェよりも後になるが、ラリーで活躍したアウディがル・マン24時間に参戦し、圧倒的な強さで勝つことで近年のアウディのプレミアムさを確定させた。
そして、3番目が12勝のフェラーリ。フェラーリの特別感はF1とともにあることでもあり、このル・マン24時間を2桁以上勝っていることでも築き上げられている。もちろん、映画「フォード vs. フェラーリ」に描かれるほどの激しい戦いやバックストーリーがブランド醸成の一助になっている。
ここまでが2桁以上ル・マン24時間を勝利している自動車メーカーであり、連勝記録もポルシェの7連勝、フェラーリの6連勝、アウディの5連勝×2(トヨタは5連勝×1)の順となる。
日本メーカーでは、1991年のマツダ 787Bが初勝利。トヨタや日産が挑む中、マツダがロータリーエンジン車で成し遂げた勝利はル・マンの歴史の中の宝石のような1ページとなっており、ル・マン側もマツダをとても大切にしている。
トヨタは、そんなル・マン24時間において前述のように5連勝。6連勝目に挑んだ2023年に、6連勝の記録を持つフェラーリが50年ぶりにル・マンに復帰。復帰1年目で総合優勝し、以降3年間はフェラーリの勝利が続いてる。
素人目線で見ると、まるでトヨタが自分たちの持つ連勝記録に並ぶのを防ぐために復帰したように見え、そして高信頼性の499Pで連勝記録を伸ばしている。2026年は、このフェラーリに対してトヨタが挑む形であり、速さを見せるLMDh車両が24時間レース戦い抜けるのかを見届けるレースでもある。

