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スバル、矢島工場で現在と未来のものづくりを紹介 変化の激しい時代を生き抜く術とは?
2026年6月17日 06:00
- 2026年6月10日 実施
「混流生産」で柔軟な工場を目指す
スバルは6月10日、群馬県太田市にある矢島工場の見学会を開催し、スバルのものづくりの現在と未来について説明を行なった。
今回の見学会で公開された矢島工場の第5トリム工場では、2026年2月から「トレイルシーカー」「bZ4x ツーリング」という異なるメーカーの車種を1つのラインで生産する「混流生産」が行なわれている。さらに2026年夏ごろからはフォレスターの生産も開始され、トヨタ車とスバル車、ICE(ガソリン)車とBEV(バッテリ電気自動車)という、構造も成り立ちも異なる車種やパワートレーンのモデルが同じラインで生産される。
この混流生産は「ICE車とEVの両方を備え、顧客の選択肢を増やすこと」「トヨタ自動車との協業によって、開発と生産に効率的な投資を行なうこと」「来るべき時代に備えてものづくりの知見を蓄積すること」の3つの価値を同時に実現し、これまでスバルが培ってきた柔軟な生産と製造技術をさらに進化させる取り組みとなる。
合わせて、同じ車種を複数の工場で生産する「ブリッジ生産」もスバルの生産の特徴となっており、ブリッジ生産を行なうことで需要に応じて工場間で車種の配分を柔軟に変更できることから、需要に対して生産を最適化でき、設備も人もしっかりと稼働できるとしている。
スバルは、この混流生産とブリッジ生産が、大変革期にある自動車業界でスバルが生き残っていくためのキーワードになるという。
スバルのものづくりについて説明を行なったSUBARU 常務執行役員 CMZO モノづくり革新センター長 兼 技術本部副本部長の渡邊郁夫氏は「今、自動車業界は100年に一度とも言われる大きな変化のまっただ中にあります。電動化の進展、需要の不確実性、そして産業構造そのものの転換。先行きを見通すことがかつてなく難しい、そんな時代を迎えていると思います。こうした時代にあって、私たちスバルが競争力の源泉と位置付けているのが『柔軟性』です。規模の大きくない私たちだからこそ変化を恐れるのではなく、むしろ変化に柔軟に対応してそれを強みに変えていく。その挑戦の最前線がまさにこの矢島工場です」と、矢島工場がスバルにとっていかに重要かを語った。
なお、スバル車とトヨタ車を混流生産するにあたって、それぞれで車体を固定する位置や部品を組み付ける順序が異なるという課題があったという。これらを解決するため、車体を固定する設備を可動式にしたり、取り付け順序を変更したりするなど、柔軟に対応することで課題を解決。また、部品を輸送する際の効率やコストといった課題に対しては、西濃ホールディングスと協業し、拠点ごとに集約倉庫を設けたり、中京圏での集荷と長距離の混載輸送をうまく組み合わせたりすることで解決していき、工場のラインだけでなく物流やサプライチェーンまで含めて、混流生産を成立させていったという苦労も語られた。
さらに、現在建設中の大泉新工場でもICE車とBEVの混流生産を行なう予定としており、新しい工場という利点を活かし、エンジンやモーターなどのパワーユニットから完成車両まで一気通貫で生産される体制を構築していく。大泉新工場は、「進化し続ける工場」をコンセプトに掲げ、新しい設備を導入して完成とするのではなく、工場の機能をソフトウェアとデータで定義し、ソフトウェアの書き換えによって柔軟に対応していく。これにより、新規車種の立ち上げなどの際に物理的な設備の作り替えを最小限に抑え、「市場のニーズに合わせて、つくるクルマが変われば、つくる環境(工場)も変わる」という考えに基づき、変化への対応スピードの向上と、コストの削減を見込むとした。
加えて、自ら現実世界の環境を認識・判断して動く「フィジカルAI」の導入も検討されていると渡邊氏は説明。AIが状況を理解し、多種多様な車種や作業の変化にその場で適応しながら人と協調して働くことで、技術の進歩を取り込みながら、工場そのものが学び、賢くなりつづけることを目指していくそうだ。
車両を生産する第5トリム工場などを見学
先にお伝えしたとおり、現在はBEVのみの生産となっている矢島工場だが、スバル車とトヨタ車ではさまざまな基準が異なっている。そのため、基準位置を柔軟に変更できる複数の可動式設備が用いられているほか、ICE車との混流が始まった際はホイールベースが異なるため、車体を運搬するハンガーには伸縮機構が設けられるなどの工夫がされている。
また、排気管の搭載やガソリンの注入といったICE車特有の作業は、今後メインになるであろうBEV生産のラインの端に設備を配置することで、作業スペースの無駄を減らし、どの車種を生産しても効率的にラインを活用できるようにしているという。
そのほか、ICE車専用の燃料タンク搭載設備では、ICE車が流れてきた際はタンクを取り付け、BEVが流れてきた際は床下の確認といった別の作業ができるため、車種を問わず作業量が平準化される設計となっている。
完成検査ラインでは、BEV専用の工程となる充電機能の検査項目が設定されているが、ICE車の場合はエンジンルーム内の部品取り付け確認などが行なえるようになっており、混流であっても無駄のない工程になるよう、きちんと組まれていることに感心した。
なお、ラインに流れてくる車両がどの車種になるのかは生産予定としてきっちり管理されており、システムが車種を判断し作業者が対応できるようにしているとのこと。しっかりした土台が築かれているからこそ、適切に混流生産ができるということを改めて実感した。
今回、最新のシステムを取り入れた矢島工場を見学してみて、柔軟なシステムの構築は、これからスバルがいかようにも進化していけるということを示しているのではないかと感じた。5月の決算発表時に、自社開発BEVの導入時期を延期し、ハイブリッド車などのICE車に開発リソースを集中すると明らかにしたスバルは、今後どのような「楽しいクルマ」をわれわれに見せてくれるのだろうか。






































